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98話 『すべきこと③』

「や、やった…………そうだみんなは!?」



 モンスターを倒して喜ぶのも束の間、すぐに私はレニ君たちの元へ戻った。何度呼んでみても変化はない……マフィーも手に本を持ったまま上の空のようになっている。



「マフィーお願い! 私の仲間を返して!!」



 何度も叫ぶが私の声に反応を示すことはない。ほかに何か方法は…………ふと、私の脳裏にあの魔法が浮かぶ。もうこれしかない…………お願い、みんなを助けて――そして魔法を使おうとしたそのとき後ろから声が聞こえてきた。



「坊主、もう終わりにしようや」


「君が生きていたというだけでも私たちは救われる」


「息子よ、遅くなってすまない……みんなは……お前の友は、あのとき命をかけてお前を救い、そして死んだんだ」



 マフィーはその言葉を聞いた途端、頭を抑え苦しみだした。



「ううぅぅぅ…………み、みんな帰ってくるんだ……僕は待たなきゃ…………違う、お前たちじゃない!!」



 マフィーが強く叫ぶと、本が光り先ほど倒したモンスターの奇声が響き渡る。

 慌てて先ほど倒したモンスターをみにいくと、黒い影のようなものがへばりつき徐々に全体を覆っていく。そして、それは立ち上がると暴れはじめた。



「あの野郎、完全に倒しただろが!?」


「おかしい……あの姿といい何か変ですね」


「もう一度やるしかないわ!」


「くそ、仕方ねぇ!」


「もはやあれは危険だ……君はここに隠れていてくれ」



 なんで、モンスターは間違いなく私の魔法で倒したはず……! それなのにあの歪な動きといい異常すぎる。まさか本の力!?

 宙に浮いた本は苦しむマフィーの上でずっと光っている。これさえ壊せば!


≪タカノツメ≫


 魔法を放ち何度も攻撃するが一向に壊れる気配はない。そして、外から悲鳴があがり見てみると熊の獣人がみんなより離れた場所で倒れていた。



「おいしっかりしろ!」


「くそ……このバケモノが!!」


「ガド、一人じゃダメ!」



 ガドさんが素早く動き攻撃を仕掛けるが、モンスターはビクともせず更に早いスピードでガドさんを弾き飛ばす。


 このままじゃみんな死んじゃう……! 私がなんとかしなきゃ……壊れて、壊れて、壊れて……!!


 何度も攻撃するが傷がつく気配すらない。焦りが募るなかジッと動かずにいるレニ君の口が動き、何かを喋り始めた。



「リリア、こんなところで修行か。あまり無茶するなよ」



 ッ!! 今の私は魔法の練習をしているようにしか見えていないんだ……早く助けなきゃ手遅れになっちゃう! ますます不安が押し寄せ魔法を使い続けるがレニ君は気にせず喋り続けた。



「なぁ、リリアの魔法って創造力で決まるようなもんだろ? そんなしかめっ面で頑張らないでもっと肩の力を抜いたらどうだ?」



 創造力…………そうだった、私はいくら練習しても新しい魔法は覚えられない。自分で創るしかないんだ。



「それに、そんなに眉間にしわを寄せてるとせっかくの可愛い顔が台無しだぞ。ほら、もっと気楽に」



 ――ッ!? な、何をこんなときに言っててててて、って可愛い!?

 いや、騙されるな私、今のは本の影響、深呼吸だ。人の心に付け込もうとするなんて……なんて醜悪な本……でも可愛いってもらえた。も、もう一回くらい――ってそれどころじゃない!


 そんなことを一人でやっているとふと視界が広がってみえた。そうだ、私にはまだみんながいる……だけどマフィーにはもういないんだ……マフィーの仲間、どんな子たちだったのかな……。


 きっと、みんなとも仲良くできたはず


 そんなことをふと思っていると体が勝手に魔法陣を描き始め、そして完成した魔法陣から光が溢れ出す。



真実の鏡(ファクトミラー)



 等身大の鏡がマフィーの前に現れ、鏡には誰かの視点で平原が映し出される。その先には四人の子供が走っていた。



『はぁはぁはぁ……み、みんな待ってぇ~!』


『また~? もう、早くこいよ~!』



 四人の獣人は脚を止め鏡の主を待つ……その中から兎の女の子がこちらへ走ってくる。



『大丈夫? もう少しだよ、頑張ろう!』


『う、うん! はぁはぁはぁ…………つ、ついたぁ~』



 みんなの元に追いつくと熊と豹の獣人が呆れたようにしていた。横では狐と、先ほどの兎の獣人が支えている。



『お前、もっと速く走れねぇのか?』


『そうだよ、せめてドアンくらいは抜いてほしいね』


『な、なんだと! テッド、お前はすぐにバテて足を引っ張るじゃねぇか!』


『まぁまぁ二人とも。僕らはみんな種が違うんだから仕方ないよ』


『ロックの言う通りよ。あなたたちだってマフィーの嗅覚には敵わないじゃない』


『確かに、かくれんぼじゃマフィーは絶対に全員見つけるもんなぁ。この前なんて泥で匂いをごまかしたはずなのに見つけてくるんだもん』


『えへへ……でもルルは小さな音でも聞き分けるし、ロックは僕より全然頭がいい。ドアンはものすごく力が強いしテッドは風のように速いでしょ。みんなすごいよ』


『そうだ、俺たち五人でパーティを組んだら最強のパーティになるぞ!』


『でたよいつもの……でも、それはそれで面白いかもね』


『そんなことよりあんたたち、家の手伝いくらいやったらどうなの?』


『……マフィー、今日は俺がモンスター役だ!』


『うん! よーし負けないぞー』


『まったくもう……マフィー頑張れ~!』



 次第に映っていた映像が変わっていく。そして次の映像でそれは起きた――。



『ねぇ……血の臭いがする……』


『そう? 何も聞こえないけど』


『モンスターがどっかで争ってるんじゃねぇか?』


『待って、何かこっちにくる!』



 ルルがそういうと森の奥から奇妙な蜘蛛に似たモンスターが現れる。これは……あのモンスターだ……。

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