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96話 『すべきこと①』

 …………ここは…………。


 目を覚ますといつの間にか布団の中にいる。私は何をして……そうだ、みんなで魔境辺に向かって……。



「そうだ……思い出した」


「リリアちゃん……? 大丈夫!? 目が覚めたのね、よかった……」



 そうだ、ガドさんにもらった薬を飲んで倒れたんだった! 私はすぐに起き上がり頭を下げる。



「ごめんなさい、ご迷惑をお掛けしたようで!」


「いいのよ。それよりどこか痛いとかない?」


「いえ、もう大丈夫です! それよりガドさんは?」


「あの人……自分のせいだって言い張って、罰として今日の外の見張りは俺がやるっていって聞かないの……狩りで疲れてるはずなのに……」


「大変……すぐ謝りにいかなくちゃ!」


「みんなも彼に悪気がないことくらいわかってるわ。もう少し休んでなさい」


「いえ、それより思い出したんです。私がなぜここに一人でいるのか……あの、大事なお話があります。そして、皆さんに協力してほしいんです……私の大切な仲間を助けるためにも」



 私はあれ(・・)からの出来事をティーナさんにすべて話した。ティーナさんは信じられないような雰囲気で聞いていたがマフィーと本の内容を聞いた瞬間、表情は一気に暗くなった。



「まさかあの子がまだ生きてたなんて……」


「マフィーのこと知ってるんですか?」


「……私には娘がいたの、ガドにも子供がいてね。昔からよくみんなで冒険者ごっこをしていたのよ。だけど数年前、モンスターが現れたってあの子が大慌てで村に戻ってきて……私たちは言われた場所に走ったけどすでに子供たちは……」


「そ、そんな……」


「あの子はまだ子供だから辛すぎるだろうって、村の人で言わないことにしていたのよ。でも、その後みんなを探しに行くって抜け出してから行方がわからなくなって」


「で、でも間違いなくマフィーは生きてます!」


「安心して、あなたの言うことは信じるわ……まずはガドに伝えましょう。それから村の人を集めるから……大変でしょうけどもう一度説明してもらえるかしら」


「はい! あっ……でもこんな夜中に大丈夫でしょうか?」


「私たち獣人は危険から身を守るためにすぐ起きれるわ。習性みたいなものだから安心して」


「わかりました。それじゃあまずはガドさんのところへ向かいましょう」



 私たちは村の外で警備をしているガドさんを見つけると、暗い表情で外を眺めていたガドさんは、ときおり目線を落としため息をついていた。



「ガドさん、ご心配をおかけしました!」


「ぶ、無事だったか!? 余計なことをしちまったみたいで本当にすまなかった……!!」



 ガドさんは深々と頭を下げたが私はまったく気にしていない。それよりもあの薬のおかげで思い出せたので感謝したいくらいだ。



「違うんです! あの薬のおかげで私、なぜあそこに一人でいたのか全部思い出したんです!」


「そ、それは本当か!?」



 確認をするように目を向けたガドさんにティーナさんは頷いた。だがティーナさんの喜んでいるというよりもその真面目な表情に何かあると悟ったのか、ガドさんはすぐに冷静を装った。そんなガドさんに対してティーナさんが口を開く。



「今からリリアちゃんの言うことは……きっと信じられないでしょうけど、信じてあげて」


「お、おう?」



 何を言ってるのかわからないという反応のガドさんに対して私はこの島に来てからのことを説明した。やはり最初は信じていないようだったがマフィーの話になった瞬間、本気になって聞き始めていた。



「まさかマフィーが生きてたなんて……」


「だけど今のままじゃリリアちゃんの仲間が危険みたいなの。お願い、あなたの力を貸して」


「も、もちろんだ。しかしいったいどうすればいい? もう何年もこの辺りはモンスターが暴れているし、それにその……信じないわけじゃないが本当にそんな本一つが原因でこんなことになるのか」


「それが予言の本の恐ろしいところなんです」


「そういえば、この前村にきた人も何かを探していたわね」



 そうだった、私たちの前に先駆者がここにきていたはず。やはり先駆者も本を探している?



「あの、その方は今どちらへ?」


「数日前に魔界のほうを見に行くって出ていったわ」


「そうですか……」



 数日前であればまだそれほど遠くには行ってないだろうけど……今はレニ君たちを助けなければ。



「あの本は書いてある内容を実現しようと周囲を巻き込む効果があります。マフィーの状況から察するにずっとみんなの帰りを待っているようでした」


「ずっと……一人で待っていたのね……」


「だが俺たちの子供はもういないんだぞ。どうするんだ」


「本を破壊するにはイレギュラーを起こすしかありません。マフィーはずっと仲間の帰りを待っている……何か、心境を大きく変えられるようなことができれば本の効果も弱まるかもしれません」


「そうは言ってもな……」


「とにかく、まずはみんなに知らせて村を守るために残る人たちと救出に向かう人を分けましょう」



 ティーナさんの言う通りまずは全員に聞いてもらうべきだろう。ガドさんとティーナさんが村の人たちを集めると私はすぐに状況を説明した。

 信じられないという人も何人かいたが、獣人は仲間意識が高いのかマフィーがまだ生きていることを知ると、すぐに村を守るグループと救出に向かうグループが分けられる。


 待っててみんな、必ず助けるから……。


 逸る気持ちを抑え作戦を立てていく。そして夜が明けはじめる頃、私たちのグループは[トキノヤシロ]へと出発した。

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