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95話 『影響力』

「マフィー、こっちの野菜もとっちゃっていいか?」


「うん! その籠にまとめていれちゃっていいから~」


「ルーちゃん重くない?」


「クゥー!」


「ねぇみんな見てよ! こんなにでかいのがとれた!!」



 ミントが大きな野菜を持ちふらふら飛ぶと、ルークの背につけた籠に急いで持っていく。



「よいしょっと! このくらいあれば大丈夫じゃないかな」


「そうだな。マフィー、野菜を洗ってくるぞ」


「ありがとー!」



 俺たちは河原の近くまでくると急にリリアが立ち止まり呟いた。



「あれ……私たちってなんでここにいるんだっけ?」


「急に何を言ってるんだ?」


「マフィーの友達が帰ってくるから待ってるんでしょ。もうしっかりしてよ」


「クゥ~」


「あ、そうだった……!」


「大丈夫か? 洗い物は俺たちでやるから休んでてもいいんだぞ」


「大丈夫、ちょっとぼーっとしちゃっただけで全然平気だから!」



 リリアは笑って誤魔化すがたぶん疲れが出てきたんだろう。あとでゆっくり休ませよう。俺たちは野菜を洗い終えると立ち上がった。



「よし、それじゃ戻ろう」


「あれ……誰か、呼んでる……?」


「リリア?」


「えっ、あっ大丈夫! 私、ちょっと気になることがあるからみんなは先に行ってて!」


「そうか? それじゃあ先に戻ってるからな。気を付けてこいよ」



 明日になればマフィーの友達も戻ってくるだろうし、それまでは先に帰ってゆっくり過ごすとしよう。




 * * * * * * * * * * * *




 ――――こっちよ――――



 まただ、どこからか声がする…………以前どこかで聞いたような…………だけど辺りを見渡しても人影はどこにも見当たらない。レニ君たちは先に戻っているし、それに声が聞こえ始めてから何か違和感が拭えない。


 ふとここから外に繋がる橋が目に留まる。なんだろう……あの先に何かあった気がする……私は橋を渡り歩き続けた。



「なんだろ、これ」



 しばらく進むと別れ道に辿り着く。横には古ぼけた木の板が立ててあり、薄く汚れた文字で[魔境辺、魔界]と書かれていた。私が通ってきた道の板には、ほとんど消えかかっていたが[トキノヤシロ]と書いてある。


 どこかで聞いたような、そして何か(・・)大事なことを忘れてるような……その何かが気になった私は魔境辺へと歩を進めた。


 どれくらい歩いただろうか――突如茂みからトカゲのようなモンスターが複数現れ、続いてとても大きな蜘蛛のモンスターが現れた。まるで縄張り争いをしているように激しい攻防が繰り広げられている。



「ど、どこかに隠れなきゃ……!」



 モンスターたちのおぞましい奇声が響く中大きな木の幹へと身を隠す。そっと覗いてみると、蜘蛛のようなモンスターに勝てないとわかったのか、怪我を負った一匹のトカゲを置き去りにしほかのトカゲは逃げていった。


 そして蜘蛛はその場で捕食を始めた。まずい……なんとかしてここを離れないと……後ずさりしその場から逃げようとしたとき、後ろから何かに掴まれ口を抑えられた。



「きゃッ!?」


「静かに…………暴れないで、私は敵じゃない」



 ふさふさした何かが口を塞ぐ――パニックになった私は暴れたが強固な力で抑えられ動くこともできない。少し経つと私は諦めてジッとした。ゆっくりと体を抑えていた力が緩む。



「あいつは危険だ……動かないでジッとしててくれ」



 ゆっくり後ろを振り返ると獣人がいた。マフィーとは違いとても大きく、尻尾は細いが腕の先には鋭い爪が見える。

 獣人は私が頷くのを確認すると袋から石を取り出し音を立てないよう前に出ていく。そして石を遠くの岩へと投げつけた。破裂音が聞こえた瞬間、モンスターはすぐにそちらを見定めとてつもない速さで走り去っていった。



「よし、今のうちだ。少し先に私たちの村があるんだが、歩けそうか?」


「だ……大丈夫です」



 案内されしばらく進むと木で作られた柵のようなものが見えてくる。出入り口には人が立っており獣人が挨拶をして村に入っていった。



「驚かせてすまなかったね」


「いえ、助けていただいてありがとうございます」


「ところで君は一人かい? どうしてあんなところにいたんだ」


「えっ、それは…………あれ?」



 私はどうしてあそこにいたんだろう……思い出せない。そんな私をみて獣人は顎に手を当てる。



「落ち着けば何か思い出すかもしれん、とりあえずこの村にいるといい」



 そういって獣人が村の人に声をかけると交代するように、耳が長く白い毛並みの優しそうな女性がやってきた。



「あら、可愛いお嬢さんね。お名前は?」


「……リリアといいます」


「リリアちゃんよろしくね。私はティーナ、兎人よ。さっきあなたと一緒にいたのが豹人のガド、ここは獣人も人間も魔族も関係ないから安心して」


「あの、ガドさんはどこにいかれたんですか?」


「見張りよ。この辺りは最近ずっとモンスターがひどく暴れていてね、魔界からも溢れてくるから定期的に倒しているの」


「そうなんですか……」


「ここにいる人たちはみんな強いから安心して。さぁ夕飯の支度でもしようかしら、手伝ってくれる?」


「は、はい!」



 ティーナさんと一緒に夕食の準備を終える頃、次第に外が賑やかになってくる。どうやら男の人たちが帰ってきたみたいだ。



「さぁ、すぐに食事が始まるからリリアちゃんも私と一緒に食べましょう」



 こうして私はティーナさんから村のみんなに紹介をしてもらい、そして食事も食べ終わる頃、ガドさんが小瓶に入った薬を持ってきた。



「これは魔力の乱れを正常にしてくれるものだ。一応と思ってな」


「ありがとうございます」



 飲んでみると何やら不思議な感覚が襲い視界が定まらなくなってくる……。



「リリアちゃん? ……大丈夫ッ!?」


「お、おい! しっかりしろ!」


「……だ、大丈夫……です……っ」



 視界がぐるぐる回り騒ぎ立てる声が徐々に遠くなっていく――そして私はそのままティーナさんに体を預けると気を失った。

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