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94話 『予言の本』

 マフィーが本を手に戻ってくる。間違いない、少し色は違うがあの本だ……。



「リリア、警戒しておいてくれ」


「えっ、どういうこと?」


「あれが例の本だよ――内容によっちゃ相当やばいことになる」



 いつになくミントが真剣な表情をしているためリリアも持っていた杖を握りしめる。



「はい、これだよ」


「ありがとう、それじゃちょっと読ませてもらうね」



 表紙には[勇敢な仲間との絆]と書いてある……俺は意を決して本を開いた。



 僕たちは仲良し五人組! 力自慢の熊人に鋭い爪と牙が特徴の虎人、遠くの音も逃さない耳を持った兎人と頭がキレる狐人、そして嗅覚の鋭い僕――五人が揃えば無敵のパーティだ! 村にモンスターがきても僕たちが退治してやる!


 ある日、村外れでとても狂暴なモンスターを見つけた。とても敵いそうにない……。みんなが囮になって僕を逃がしてくれたから急いで助けを呼ばなきゃ!


 村に戻って大人に伝えたらすぐに助けに行ってくれた。僕はみんなの帰りを待ってよう、そしてもう一度やり直すんだ。

 それまで僕はみんなを待つ。帰ってくるって約束したから――。




「……なぁ、マフィー。ここには君のほかに誰かいないのか?」


「僕の友達もいるよ。今はいないけどもうすぐ帰ってくるはずだから」


「そっか、じゃあ一人だけじゃないんだね」



 リリアがほかにも仲間がいるということを知り安堵していたがもう一つの疑問が残る……。



「ほかに大人の人とかはいないのか? まさか子供だけでここに住んでるわけじゃないよな」


「みんなモンスターを倒しにいったよ。それが終わったら帰ってくるんだ」


「それってどこにいったかわかる?」


「魔境辺だよ、あそこでモンスターが暴れてて僕の友達も戦ってるの」


「なんだって……」



 マフィーの言ってることは信憑性が高い……ここに来る前、魔境辺はモンスターが溢れていると聞いていたからな。だが俺たちが向かったら辿り着けなかった、もしかしてそのモンスターが原因なのか。



「そこに行くにはどうしたらいいんだ?」


「あれ、看板なかった? こっちとは逆のほうに行くと魔境辺につくよ」


「いや、先にそっちに向かったんだが……なんていうか、進むことができなかったんだ」


「そうなの? よくわかんないけど、今は危ないから行かなくてよかったかもね」



 そういってマフィーはにこにこしている。俺は本を返すとマフィーは俺たちに提案してきた。



「ねぇ、もうすぐ暗くなるし泊まっていかない? たぶん明日にはみんな戻ってくると思うから、そしたら君たちにも紹介するよ!」



 気づかなかったがどんよりした暗さは更に増し、少し離れれば先のほうは明かりがなくては見えなくなっていた。



「さすがにこの暗闇で野宿は危険か……ありがたく泊まらせてもらおう」


「部屋もいくつかあるし自由に使っていいからね!」



 こうして俺たちはマフィーの家で一晩過ごすことにした。今のところおかしな点はないが念のためマフィーが寝たあと、俺たちは部屋に集まり本の内容を確認することにした。



「まず書いてあった五人組というのはマフィーと友達で間違いないだろう。そして狂暴なモンスターが現れたというのは魔境辺のことだと思う」


「待って、ちょっと思ったんだけど……僕たちとあの子(マフィー)を入れるとちょうど五人になるんじゃない?」


「本当だ……っていうことはこれからモンスターが現れるってこと!?」



 リリアがハッとして小さく声をあげる。確かに、ルークを入れると四人でそこにマフィーを入れるとちょうど五人だ。偶然にしては出来過ぎているような気もする……。



「それは気づかなかった……だが、マフィーはさっき友達はここにいないと言っていた。大人たちも魔境辺にいってるみたいだし、友達がいないとわかってて俺たちが五人に含まれるなら、どこかのタイミングで俺たちのことを友達と間違えたりすることも想定できる」


「もしかして、明日起きたら急にその友達と間違われたりして……?」


「それはわからない。だけどあの王子みたいに前から本を持っていたと考えれば、すでに影響はでているはずだ」


「もし君が明日立って歩いていたら僕はすぐ逃げるからね」


「クゥー?」



 ミントがルークの背に乗り冗談を言うがその可能性もないわけではない。リザードマンのようなルークはちょっと嫌だがすべては一夜あけてどうなっているか……。



「あまり不安になりすぎるのもよくないが注意はしておこう。いいか、再度確認するがあの本に唯一対抗できる手段は、本の力じゃ修正が効かないほどのイレギュラーを起こすことだ。だが本の力はかなり強い、そう簡単にはいかないだろう」


あのとき(砂漠の国)みたいに君が壊したらいいんじゃないの?」


「最悪それも考えてみるが、たぶんあのときは俺自体がモンスターに変わったと認識され、それがあまりにも本の内容とかけ離れすぎていたんだろう。実際あのときはリリアも倒れ、俺というモンスターが残っていたわけだったからな」



 こうして冷静に分析してみると、あのときなぜ俺だけが動けずスキルを発動したら動けたのか、なんとなくだが合点がいく。

 思うに、あくまで本の力も内容に沿わなければならないという一定のルールが存在しており、そのルール(本の内容)自体を変えるということはできないのかもしれない。


 あのとき、もし本当に俺という存在が邪魔になったのであれば、途中から内容を変えしまえば抑えることができたはずだからな。



「それじゃあとりあえず今はあの内容に対して、どんなことがイレギュラーになるのかを考えなきゃいけないね」


「そういうことになるな。いいか、くれぐれも誰かに異常を感じたらそいつが何と言おうと、とにかくこの場から離れるんだ。それだけは全員守ってくれ」



 非情に聞こえるがこれは全滅する可能性を少しでも減らすためだ。誰かが範囲外にでれば助けを呼べる可能性もでるし何かいい方法を思いつくことだってあるかもしれない。


 いくら旅は道連れといってもあやふやに行動し全滅してしまってはたまったものではない。そんな俺の意図を理解してくれたのか全員が頷く。



「よし、それじゃあ今日はこの辺で寝るとしよう。あんな話のあとに難しいと思うが急に死ぬとかじゃないんだ。ゆっくり休んでくれ」


「うん。絶対みんなで乗り越えようね」


「これが終わったらまた美味しいご飯を頼んだよ?」


「ククゥ」



 話が終わると俺はルークと、リリアはミントと同じ部屋で休むことにした。

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