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90話 『役割③』

「さぁ人払いは済んだ、申してみよ」


「そうですね……まず、この国は隣国に舐められているんですよ。だから一度、国の力というものを示す必要がある……そこでサーニャさんに動いてもらうんです」


「わ、私が?」


「そんなことができると思っておるのか」


「王様は、なぜ砂漠の国がサーニャさんの婚約を破棄したのか知りませんよね?」



 俺たちは知っているが、やはり砂漠の国で何があったかはここまで広がっていないようだ。俺は王様に一部(・・)改変して砂漠の国であったことを伝えた。



「つまり、今起きてることはその本の影響でもあるんです」


「預言の本……にわかには信じがたいが……」


「それもそうでしょう、あれはそうなるようにできている。そして唯一それを察知しサーニャ姫を救おうとしたのが、そこにいる彼らなんです」



 そういって俺はラカムとフィルを指すと二人は固まっていた……が、俺は喋り続ける。



「彼らはこの問題が水の国へ破滅をもたらすと考え、せめてサーニャさんだけでも救おうとしてたんです。だけどそのときすでに、砂漠の国で起きていた問題は俺たちが解決していました」


「子どもであるお主らがか?」


「あいにくですが俺の従魔はドラゴンです。そして彼女には妖精もついている、仲間の力を借りて本はすでに破壊しました」



 さらっと俺がテイマー、リリアが妖精とお友達的な立ち位置にしたがこれなら自然だろう。なにかと職業のおかげと言い訳できるからな。



「そのあとたまたま水の国へ行こうとした船でサーニャさんが攫われたとこに出くわした……というわけなんです」


「王様へご報告させていただいたのもそのすぐあとのことでございます」



 爺さんがうまいこと話を挟んでくれた。俺は爺さんを見ると軽く頷く――なかなかいいじゃないか!



「そこで俺たちはサーニャさんを助けに行ったんですがね……いや~この人が強いのなんのって。俺たち四人がかりでも平然としてたんですよ」



 俺はラカムを示し、リリアたちへ目線で同意を求めた。



「私たち、手も足もでなかったんです」


「あー本当に。人間じゃないかと思ったよ」


「クゥクゥ」


「お主は戦闘職ではなかったはずじゃが……」



 どんどん進む話に、顔だけそのままで意識がついてきていなかったラカムは、王様の一言でなんとか戻ってきた。



「お、おう!? 姫様を守るために努力したんだよ!」


「姫様を救いたいという行動は一緒だったのでどうするか相談したんです。そして彼女(フィル)のアドバイスで砂漠の国へもう一度行き、友好を結んでくれるようお願いすることにしたんです」


「この国を視ている私としてもサーニャは大事な友達だからね、それに愚かなあなたの行動は実現していなかった。ならば手助けする余地はあるわ」



 諦めたのかサーニャさんも話に乗ってきた。王様はずっと聞いている状態だし、もう強引にいってもいい流れだな。



「そこからあとは二人が話をつけてくれました」


「これを読んでもらえば嘘は言ってないと分かるはず」



 ラカムは王様へ書簡を渡すと王様は書状を読み始める。そして読み終えると一つ咳払いし俺を見た。



「これほどの好条件、信じ難いが……この書状は本物のようだな。だがどうやってサーニャが力を示すのだ」


「簡単なことです。海賊たちを全員サーニャさんの兵にでもして、砂漠の国と友好祝いをするんです」



 さすがにこれにはみんなびっくりしたようだ。言ってる俺も、もし同じこと言われたらこいつ頭おかしいのかなと思うもん。



「元々彼が海賊になった理由は姫様を思ってのこと。彼らの部下は統率もとれているし精鋭揃い。ならばいっそまとめて姫様専用の護衛兵にしてしまえばいいんですよ」


「そんなことができると思ってるのか!?」



 さすがの無茶な意見に王様が声を荒げ難色を示す。



「よく考えてみてください。罪人といっても殺しをしたわけじゃない、すべては姫様、ひいては国のためを思って動いた結果。それに力は十分持っています、なんならこの国の兵士全員と戦わせてみては?」


「……おい、さすがにそれは」



 ラカムが静かに言葉を放つ。万が一そうなったら…………頑張ってくれ。



「それに友好の話を取り付けたのは彼らです。その功績は認めるべきではありませんか?」


「う~む…………」



 だいぶいい感じだがあと一歩、何か決定打となるものがほしい。そう思っているとサーニャさんが王様へと歩み寄る。



「私、やります……この国を守るため、どうかやらせてください。責任はすべて私が持ちます!」


「しかし……この者たちを信用していいものか」


「もし国の脅威となることがあれば私共々処罰して構いません。それに……国のためであればこのセイレーンの力、使わせて頂きます」


「サーニャ!?」


「ごめんねフィル、だけど私はいつまでも守られているわけにはいかないの」


「姫様の言う通り、今まで通りじゃダメなんだ。この国は変わったということをアピールしなければ何も変わらないし変えられない」


「…………わかった、検討してみよう」


「検討だって? さっきの紙をもうお忘れですか? 隣国のスパイが混じっている可能性が高い、のんびりしてる暇はないと思いますがね」



 王様は散らばった紙を無言で見下ろしていた。



「お前の部下が面倒を起こしたらどうする?」


「こちとら同じ人間だ。理由次第じゃ小さな不祥事くらいは俺に裁かせてほしい」


「王様、私だってこいつらを視ておいてあげるよ。サーニャの心配もあるしね」


「……わかった、細かいことは後々決めさせてもらうが大枠は認めよう」


「ほ、本当ですか!」


「これからは辛いものになるぞ……覚悟はできておろうな」


「はい、この国のため一身をささげる覚悟です!」



 よし、なんとかまとまったな。あとの細かい話は全部サーニャさんたちに丸投げでいいだろう。



「無事に決まったようでよかった。それじゃ、あとのことはみんなに任せて俺たちはこの辺で失礼するよ」


「もう行ってしまわれるのですか?」


「俺たちは旅の途中、あんまり国に関わるとろくなことがないからね」


「ちょっと、せめて怪しいやつらを見分けるの手伝ってよ!」


「そんなもん魅了でもして答えさせればいい。いつまでもこんな子供に頼ってばかりいられないだろ?」



 フィルはごねていたがすぐにサーニャさんが場をまとめる。



「フィル、レニさんの言う通りよ。数えきれないほど協力をしてもらったうえ、最後まで頼り切ってしまっていては今後を生き抜くことなど不可能……私たちがこの国の未来を創らねばならないのです」


「そんじゃあ、姫様はちゃんと守ってやんなきゃな」


「まったく、あんたと手を組むことになるなんてね」



 うん、どうやらなんとかはなりそうだな。これならフラードも積極的に協力してくれるだろう。



「お主たちには娘共々世話になったな……何か褒美を与えたいと思うのだが」


「王様にもだいぶ譲歩してもらいましたからそれだけで十分ですよ。でも……それなら爺さんに外まで見送りでも頼もうかな。みんなはこれから話し合いで大変だろうからね」


「よかろう、無礼のないよう頼んだぞ」


「かしこまりました」


「褒美に関しては保留にしておく、何かあればいつでも力になろう」


「ありがとうございます。それじゃみんな、あとは頑張ってくれ」


「必ずやこのご恩はお返しさせていただきます……本当にありがとうございました!」



 あまり深く関わるとどこまでも巻き込まれかねないし、この辺りがいい切り上げ時だ。俺たちは爺さんと一緒に城を出た。



「皆さまはこれからどちらへ向かう予定で?」


「この国に俺たちが探してる人が立ち寄ってるかもしれないと聞いてね、少し探してみようかな」


「ふむ、旅人は多く来ますからね。特徴などはご存じですか?」


「いや、リリアの両親なんだがどんな人かはわからない。何か手掛かりがあるはずなんだけど」


「そういえば少し前に、知人が店に妙な客が来たと言ってましたね。よろしければご紹介致しましょうか?」


「爺さんも大変だろうし俺たちだけで行ってみるよ」


「いえいえ、これくらいあなた方に協力せねばお嬢様に合わせる顔がございませんので! それに泊まる宿もお決まりでないのでは?」



 あ……そういえばこっちにきてまっすぐ城に行ったから忘れてたわ……。顔にでていたのか爺さんは微笑みながら手を合わせた。



「それではそちらのほうも私におまかせください。すぐに手配致しますので」



 こうしてなんとなく爺さんに見送ってもらうつもりだった俺たちは結局世話になることになった。

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