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60話 『守護者』

 ルークは縦横無尽に飛び回り地上より数段も速く動きだすと変則的な攻撃を繰り出す。



「ん~悪くはない、だがやってることはさっきと変わらん」


「グルルルルルル!」



 徐々に先ほどと同じような展開になりルークは攻めあぐね始める。いや、ルークはわざと同じように見せ掛け何かを狙っているようだった。そして同じように攻めたと思うとルークは空中で停止した。


≪竜の咆哮≫


 身構えたリリアは近距離でルークの雄叫びを食らうが手で振り払うと何事もなかったようにしている。



「竜の炎ブレスかと思ったが……こんなものとはつまらんな」



 ため息をつくリリアに手詰まりのルーク、そんな二人に割って入るように声が響く。



「おい、いつまで遊んでるつもりだ。さっさとそいつを倒せ」


「むっ? なんだ貴様は」


「グウウウゥゥゥ……!」



 もはや安全と確信したのか王子とフードを被った男がやってくる――そして王子は予言の本を取り出した。



「まさかこれほどまでにうまくいくとはな、これでこの国は私のものだ!」


「……なるほど、そういうことだったか」



 本をみたリリアは何かを察したように王子とフードの男を見るとルークへと向き直り、そして先ほどよりも強力な魔力を纏う。



「さて、残念ながら時間切れだ。終わりにしよう」



 リリアは空にいるルークに目をやると魔力の弾を放つ。ルークは辛うじてそれを避けたが、すぐ後ろにリリアが跳びルークを蹴り下ろすと悲痛な叫びをあげたルークは落下し、リリアがとどめを刺そうと歩いていく。



「ミント! 頼む、ルークを助けてくれ!!」


「く……くそッ! もうわかったよ!」



 ミントが大慌てでルークの元に向かう。そしてリリアに向け背後から魔法を使った。


 ≪サンドトラップ≫



 ルークの元へ着いたリリアの両足は砂が絡みつき動けなくなっている。ミントはそのままルークの元にいって声をかけるがルークは起き上がらない。



「おい早く起きろって!」


「クウゥ…………」


「ほう、妖精とは珍しい。ほらお返しだ」



 リリアは手を振るとミントの体に徐々に砂が集まっていき、身体を砂で埋め尽くされたミントは地面に落ちる。



「痛ッ! ひゃーーーーやめてえええええ!」


「安心しろ、お前はモンスターではないからな」



 そういってルークの前に着いたリリアは足をあげた。



「さらばだ、幼き竜よ」


「リリアやめろぉぉぉおおおおおおお!!!!」



 体の動かない俺は叫ぶことしかできず、そしてリリアはルークを踏みつぶした…………はずだった。ほんの少しずれたのか、その足は地面を抉っていた。



「おや?」


「おい、何を遊んでいる、さっさとやれ!」



 王子がイライラし声を荒げるがリリアは立ったまま動かず独り言を呟き始める。



「も……もう……やめ…………て…………」


「ほう、こやつ……どうやらここまでのようだな」



 纏っていた魔力が消え、振り返り俺をみたリリアの目からは涙が流れていた。



 …………ごめ……ん……な……さ…………


「ッ……!!」



 な、なんで謝るんだ……悪いのはこんなことをさせたあいつらじゃないか。いや、予言の本のせい? 誰があんなものを……いや、違う、そもそもこうなる前に俺が出ていれば…………何が必ず助ける、だ。

 その場に倒れたリリアを誰も助けようとはしない。動けずにいる俺はただそれを茫然と眺めていた。そして様々な感情が全身を巡っていく。



「君には……彼女を救う力はないのか」


「な、何を急に」


「…………もう残された道はない、終わりだ」



 男の視線の先では王子がルークの元へ歩いていき剣を抜いていた。そしてルークを斬りつけると体に細かい傷ができていく。



「グウゥ……」


「や、やめろ! そいつは従魔だぞ!」


「従魔だろうがモンスターに変わりはない、貴様は突っ立っているだけのあの小僧と一緒にあとで始末してやる。役に立ってくれたこの女は私の妻としてこれからも働いてもらうがな」



 役に立っただと……。リリアはお前らの道具なんかじゃない、そんなこと……絶対に俺がさせない………!!



 まるで催眠が解けたように先ほどまで動こうとしなかった意思が徐々に変化を始めていく。そして何かが吹っ切れた瞬間、意識が途切れ気づけばあのときと同じ暗闇にいた。体の感覚がなく、意識だけがあるという……あのときとまったく同じ……。




『変わりたければ望みなさい、あの頃(・・・)のように』


 …………あぁ……ずっと、見ていてくれてたんですね……。やはり平等で正しくて……愚かだ…………


『さぁ、何を望む?』


 …………変わりません、俺は素質も才能もないから……ただ一つ、彼女を……リリアを守れる力を…………


『わかったわ、あなたに栄光(・・)の祝福を』



 ――――――


 ――――


 ――



 眩い光に照らされると身体の感覚が徐々に戻ってくる。そして閉じていた瞼を開くが目の前の光景は何一つ変わってはいなかった。

 ただ一つ、フードの男が異様な雰囲気に気づいたこと以外は。



「ま、まさかこれは……神の祝福だと!?」



 あのときと同じように俺の脳裏に声が響き文字が浮かびあがる。



『レニ、13歳、職業――ものまね士:可能性を秘めし者、己の道を往け』


【ものまね士:状態()】


≪スキル:ものまね()≫



 スキルを何度か使ったことのある俺はこのスキルがなんなのかすぐにわかり、俺は予言の本の内容を思い出していた。

 モンスターを一掃しました、か……あの本がルークですらモンスター扱いするのならば俺はその予言を上回るモンスターになってやる。



≪スキル:ものまね(ベヒーモス)≫

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