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56話 『一長一短』

「――っていう訳で、ほんと大変だったんだから!」


「そ、それは本当に間違いないのか!?」


「ほんとだってば。クマクマ言いながら僕の姿分かってたみたいだし……気味が悪いよ……」


「クゥクゥ」


「あぁそうだ。クマはリリアの魔法で魔力を探知する能力がある、きっとそれで察知したんだろう」


「でもなんか変だったよ? 使ってる本人がよくわかっていないというか」



 どういうことだ……? クマのことは意思のように伝わってくると言っていたはずだし、ミントの正体に気づいたのであればクマはリリアに教えているはず。



「ほかに、何か気になるところはなかったか?」


「ん~……そういえば王子とか呼ばれてた偉そうな人間が予言の本がどうとかいってたな。災厄がくるから止めるのは君だとか」



 どうやら順番を考えてみれば予言の本を元に王子は動いてるようだ。つまり災厄に関してもすべてはその本で知った可能性が高い。



「その本はどこにあるかわからなかったのか?」


「そんなの知らないよ。ただでさえ危なかったのに……いちいち探してたらキリがないし僕の身がもたないよ」


「そうか……ありがとう、それだけでも大収穫だ」



 もう夜も遅い、今日はこの辺で寝て、明日もう一度ミントの話を整理するしかないな。

 ミントはルークの背に乗り寝転がると欠伸をした。俺も寝ようと火を消しに立ったとき、ゆっくりと扉が開かれた。



「クッ……クマー」


「うえぇッ!? こいつ追ってきたのか!」


「ミント静かに……お前、なんでここがわかったんだ?」



 クマが部屋に入ってくると俺に向かって走り抱き着いてくる。びっくりしたがこんな夜中に大声出す訳にもいかない、俺はクマを撫で自分の心を落ち着かせた。



「クマックマッ」


「クゥ?」



 クマはルークを指してジェスチャーする。もしかしてミントについたルークの魔力(臭い)をかぎ分けた? そもそも魔力の臭いとやらがうつるのかはわからないが、クマが言うにはそういうことらしい。そういやミントはよくルークといるし舐められてるからな。



「とりあえずわかった。それで、今リリアはどうしている?」


「クマ、クマ、クマ―」



 ……ん~わからん。えーっとまず倒れていたところから、起きる、辺りを見渡す、わからない、ルークを指しわからない、俺を指しわからない――んで自分を指しわから……ない?



「待て、もしかしてリリアは今……記憶がないのか!?」


「クマッ! クマクマーッ」



 クマは泣きながら正解とばかりに頷く。よりによって記憶喪失、そして災厄に王子との婚約……予想よりも状況は悪化していた。ミントは話を聞くとクマの横に飛んできた。



「記憶を戻す魔法なんてないし、こいつが来たところで何もできないんだろ? どうするんだよ」


「クマは元々サポートに特化した魔法だからな、だがこれで一通りの状況はわかった。あとは……俺がなんとかする」


「とかいってまた僕に……」


「察しがいいな、俺はミントのことが好きになりそうだよ」


「うへ~僕は君が嫌いになりそう」


「だが、安心しろ。次は俺も行く」



 その言葉にミントは呆れたように俺をみた。




「普通じゃ入れないのにどうやって……その物騒な剣で強行突破でもするつもりかい」


「ちょっと方法があってな、とりあえずクマはリリアに付き添っててくれ。すぐには無理だが――必ず俺が助けにいく」


「クマ!」



 クマは大きく頷き返事をすると時間がきたのかクルっと回って消えていった。



「よし、とりあえず今日のところは寝るか」


「まったく……なんでもかんでも僕がやると思ったら大間違いだからね」


「クゥクゥ」


「君もなんでこんなやつを主人に選んだのかわからないよ……」



 そういってミントはルークの背中に戻ると寝転んだ。俺も明かり用の火を消しベッドに横になる。落ち着け俺……。

 状況はわかったが詳細を知らなければならない、死ぬ気で作戦を考えろ……ミスは許されない。


 俺は前世の記憶をフル活用し一晩考え翌日の朝、ルークを宿に残しミントと二人で神殿へと向かった。路地裏に入り人目につかないことを確認する。



「で、こんな明るい時間からどうするつもり?」


「ミント、一つ俺の秘密を教えてやる。これは重要なことだ。そして信頼してるからこそ話す」


「な、なんだよ急に改まって……こわいな……」



 俺はミントに話す前に実際にやってみせた。


【ものまねし:状態(妖精、ウィザード)】


〖インビジブル〗



「ちょ、ちょっと君も使えるなら最初からそういってよ!」


「いや、俺は使えない。ミントができることをやってるだけなんだ」


「な、なにそれ……どういうこと?」



 俺はミントに【ものまねし】の特性を説明する。



「――ということだ」


「なんか……ずるくない?」


「それは否定できん。んでもう一つ大きな問題がある。ミント、もし君が俺を裏切って視界から外れたりした場合……こうなる」



 そういって俺はミントから目を放すため横を向いた。


【ものまねし:状態】



「あれ、戻った?」


「そうだ、あくまで俺の職業はそこにあるものを判別する。視界はもちろん、俺の意識が外れれば解除されるんだ」


「うわ~絶妙に不便だね~……」


「そう、だからこそミント、すべてはお前次第なんだ」


「そんな重要なことを僕に喋るなんて君は頭が悪いんじゃないの」


「言っただろ? 俺はミントが好きになれそうだって」


「まったく……ここまで言われたら引くに引けないじゃんか。で、そこまで喋ってあとは僕任せなんていわないよね?」


「あぁ、まずは作戦と、声が出せないときの合図を教える」



 俺はミントに前世で培った知識で合図を教える。ミントはお互いに消えている状態だと相手の姿が薄っすら見えることを教えてくれた。よくライムといたずらしていたらしい。

 なんとなく精神的にライムが大人でミントが子供のままなのも頷ける気がする……。

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