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50話 『真実への道②』

「よし、これなら大丈夫、外で試そう」



 ローラさんにマントを付けられ外にでる。何が変わったんだろう?



「さぁ跳んでみて」


「は、はい」



 こういうときは思い切りが大事だ。遠慮してちょい跳びした結果、あんまり変わりませんでしたとガッカリするのは目に見えている。

 地面をしっかり蹴って跳ぶと俺の身体は加速するように急激な速度で跳び上がっていった。



「うおわあああああああぁぁぁぁ……」


「お~とんだとんだ……飛びすぎかな? もう少し魔力の配分を変えるか」


「……ぁぁぁああああああ!!」



 天高く跳んだ俺は予想外のことに体をこわばらせバランスを崩したまま地面に落下する。



「いったあああ……くない。あれ」



 俺はまるで重さがなかったかのようにそのまま転がっていた。まるで当たり前といわんばかりに平然とローラさんが近づいてくる。



「それを羽織っていると、マントが自動で身体を軽くしてくれるの。今のは調整ミスだけど」


「す、すごいですが説明は最初にしてください!!」


「まぁまぁ、成功だったんだからいいじゃないか」


「あ、そういえば魔力がない俺でも使えたってことは……何か仕掛けがあるんですよね?」


「うん、君がいった魔力を溜めておけるものってことで思いついた。このマントは勝手に魔力を使用してくれるから魔力を放出する機能はいらないの。だから」



 そういってローラさんは俺のマントの留め具を示した。そこには綺麗な宝石のようなものがつけられている。



「それは使い方次第で色々なものにできるんだけど、錬金術で魔力を溜める入れ物にした。あとは常時使われる分の魔力量を調整すれば完成」


「ローラさんってやっぱりすごい人だったんですね……」


「いいや、君のおかげ。才能や能力がいくらあっても想像力がなければ無いのと一緒」



 単純すぎる発想だと思ったんだが、こんなことでも褒められると嬉しいもんだな。



「さ、すぐに調整するよ。そして早く連れてきて」



 何度か実験台のように跳び、走り、やがて自分の体のバランスと最適な軽さが取れると俺は里へ向かった。

 一蹴りで何メートルも距離が進むとあっという間に里の入り口がみえてくる。俺の気配がわかったのか真っ先にルークが出迎えてくれた。



「ライルの様子はどうだ?」


「クウウゥ」


「そっか、ありがとな」



 ライルに関しては特に問題はなかったらしく、少し遅れてオミーネさんが歩いてくる。



「オミーネさん、その節は本当にありがとうございました」


「気にするな。そちらのほうはどうだった?」


「それが……ちょっと色々ありまして、リビアはどこにいます?」


「リビアちゃんならライル君の看病をしているよ」


「一応オミーネさんにも関することなので……リビアがあいたら一緒に来てもらえませんか」


「それなら今でも大丈夫。ムガルさんに君が戻ったらすぐ教えてくれって言われてたからね」



 そういえばライルを助けに抜け出してからそのままだったな。オミーネさんが無事だと言ってくれてるとは思うけど、ちゃんと顔を出しておかないといけないだろう。


 ムガルさんの家へ行くと開口一番に手を握りしめられ感謝された。普通の人間だったら手の骨がいってる……それくらいライルのことを心配してたんだな。



「本当にあのバカが世話になった……あやつが無事なのもお主たちのおかげじゃ」



 ムガルさんは思いっきり頭を下げ床に頭をつける。もうこれで何度目だろう。



「もう十分ですから、それよりライルの容態はどうです?」


「腕の傷が残っとるくらいで問題はない、いい勉強になっただろう」


「そうでしたか。ちょっとリビアちゃんに話があるんですが、看病してるって聞いて……今から会うことはできませんか?」


「それくらい問題ないぞ、呼んでくる」



 少し待つとリビアが部屋に入ってきた。慌てた様子もなくいつも通りの顔だ。



「あ、レニ。おかえり」


「ライルの看病をしてくれてたんだって? ありがとう」


「あの程度の傷、唾をつけてれば治る。それよりよく解毒薬を持ってたね」


「薬はローラさんが作ってくれたんだ」


「何じゃと!?」



 ローラさんが関わっていることを知りムガルさんは声を荒げたが、今となってはローラさんの事情も知ってるし、ムガルさんが一族の長として掟を重要視してることも理解できる。

 仲直りしてくださいとはいえないけど、ローラさんが助けてくれたことはちゃんと伝えておかなければならないだろう。



「ローラさんがいなければライルは間違いなく死んでました。掟のこともあるでしょうが、助けてくれたということも事実です」


「むぅ……それもそうじゃな」


「そういえば剣はどうだったの、あの人に会えたんでしょ?」


「そのことでなんだがお願いがある。まずオミーネさん、その剣を貸してくれないか?」


「君の頼みであれば別にいいが、何をするつもりだい?」



 俺はローラさんのことをみんなに説明し、オミーネさんは快諾してくれたがリビアはムガルさんから許可をもらえずにいた。



「お爺さまお願いします……鍛冶師としてあの人は目指すべき目標でもあるんです」


「ダメだ。己の欲に負け掟を破るようなやつに、お前を会わせるわけにはいかん!」



 リビアの頼みでも許可しないとは、ムガルさんも族長としての役割を全うしてるんだな。だがムガルさんには悪いがここは折れてもらおう。俺の剣のためにも……!



「ムガルさん、ローラさんは確かに掟を破りましたがライルの命を救った恩人でもあります。それに、何も里に戻ると言ってるわけじゃないんですよ」


「ライルに関しては感謝しとる、だが」


「それにリビアがきてくれることが俺のためにもなるんです。もしライルのことを感謝しているなら、俺のためにも許可をだしてやってください」



 あまり恩着せがましいことはしたくなかったが、片っ端から押し付けていくしかない。それくらいしなければムガルさんの族長としての誇りを挫くことはできないのだ。

 案の定、ムガルさんはローラさんに加え俺にまで恩を持ち出されると悩みに悩んでいる。



「ぬぅ……」


「長よ、掟が何よりも大事なのはわかる。しかし若者の成長を止めることは一族にとっても大きな損失になるのではないか?」


「しかし……」


「ライル君のことは私が看ておこう。それならば何も問題はあるまい」



 まさかのオミーネさんまでがこちらに参戦してくれると、さすがに三対一で言い包められ観念したのか、ため息をつきムガルさんは頷いた。



「…………わかった、お主たちの顔を立てよう。リビアよ、今回に限り許可する」


「ありがとうございます、お爺さま!!」



 リビアが喜ぶとムガルさんはまるで孫にせがまれて、最後は根負けしたお爺ちゃんのようになっていた。長という立場がなければすぐにでも行って来いって言いたかったのかもしれないな。



「よし、そうと決まればすぐに出発だ」


「待って、何か準備は」


「とにかく急いできてほしいってことだったから――外に出る服装だけしてきてくれ」


「それじゃレニ君、少しわがままなヤツだがこの剣を頼んだぞ」



 ルークと一緒に外で待ち、リビアが支度をすませでてくると俺はリビアにマントを渡した。



「これは?」


「着ると魔力に応じて身体が軽くなるんだ。ローラさんから借りてるもので、距離もあるからここで慣れておいてくれ」



 リビアがマントを羽織り走ったり跳んだり試すとある程度わかってきたのかこちらに戻ってくる。

 さすがというかなんというか、慣れるまでの早さが尋常じゃない。いくら身体が軽くなってるとはいえ、異常な高さから落ちる恐怖というのはなかなか消えないのに。



「これすごすぎない? 全身が軽くなるから全然疲れない」


「俺もここまで疲れもせずにくることができたからな。本当にすごいマントだよ」


「あ、私がこれを借りちゃうとあなたの分が無くなるけど大丈夫なの?」


「それなら心配ない、俺にはルークがいるからな」


「ククゥ!」


「どういうこと?」


「まぁ気にするな。それじゃあ出発だ」



 ルークが嬉しそうに先頭を走り出す。


【ものまねし:状態ドラゴン


 よっぽど待ちかねていたのかルークが徐々に速度を上げていく。俺もスピードをあげると後ろから叫ぶ声が聞こえた。



「ちょ、ちょっと待ちなさーーーーい!!」

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