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40話 『別れ』

『そうか……終わったか』


「えぇ、メアリアさんも協定を結んでくれました」


『よかった……これでもう思い残すことはない』



 ヴァイスさんの身体が徐々に光を帯びるとレイラさんとアリスが声をあげた。



「あれ……ヴァイスさん!?」


「ほ、本当にあなたなの!?」


『おや、神様が最後に時間をくれたのかな』


「……最後に伝えたいことがあれば俺が伝えます」


『ありがとう』



 ヴァイスさんはレイラさんとアリスの前にいく。俺は邪魔にならないよう横にはけておくことにした。



『アリス、大きくなったね。これからは僕に変わってお姉さんを助けるんだ、約束できるかい?』


「……はい! ヴァイスさんの分も……いえ、それ以上に!」


『ふふっ、頼んだよ。そしてレイラ、君には随分と辛い思いをさせてしまったね』


「いいのよ、あなたと過ごした日々は幸せだったわ」



 ヴァイスさんとレイラさんは無言で見つめ合っていた。何も言わなくていいということなんだろう……本当に愛し合っていたんだな。



『……うん、たぶんだが君は私と同じことを考えているのだろう?』


「相変わらず察しがいいのね。昔からそういうところが…………大好きだったわ」


『少年よ、レイラとアリスを助けてくれた恩を返したい』



 ヴァイスさんがレイラさんの隣にいくと俺と向き合う形になる。ヴァイスさんが何か喋ろうとした直前、レイラさんがすかさず遮った。



「これからヴァイスが何を言おうとしてるか当ててみようかしら? いくわよ」



 そしてヴァイスさんとレイラさんが同時に喋る。



『「君に――()たちの剣を託そう」』


「……えっ?」


「どうかしら、かなりいい線いってたと思うわよ」


『はっはっはっは!! レイラ、やはり君には敵わないな!』



 盛大に笑っているヴァイスさんの光はどんどん強くなっていき――そして体が徐々に消え始めていった。



『おっと、そろそろ時間のようだ』



 ヴァイスさんはレイラさんの頬へキスをする。決して触れることはできない最後の別れを、レイラさんは涙を流し受け入れた。そして笑顔で見つめるヴァイスさんの体は消えていく。



『それじゃあみんな』


「……また会おう!!」



 きっと、さようならと言いかけたであろう言葉を俺は遮った。ヴァイスさんは驚くが笑顔でありがとうと言い残すと消えていった。

 静かに時間だけが過ぎていく…………最初に口を開いたのはレイラさんだった。



「さ、約束通りあなたに剣を渡すわ」


「そんな大事なもの……ほ、本当にいいんですか?」


「いいのよ、この剣はいつかヴァイスと二人で世界を旅するために作ったの。そんじゃそこらの剣より強力よ」



 そのとき、場を和ませようとアリスが元気よく俺の前にやってくる。



「お姉さまとヴァイスさんったら、お互いに借りを作りたくないからって二人で使う剣を二人で一緒に作ったんです。どんな剣を作ろうかお話しているときも、結局どちらも譲らなくて喧嘩ばかり――ムググッ」


「アリス、そのことは言わなくてもいいのよ」



 レイラさんがとっさにアリスの口を手で押さえる。心なしか照れてるようにも見えるがよっぽど思い入れがあるんだろう……。

 ベヒーモス相手に折れず耐え抜いた剣だ。普通なわけがないのはわかっていたが…………レイラさんは鞘から剣を引き抜くと刀身をみる。



「かなり使っていたから研ぎ直さないとダメね……レニさんはこれからドワーフの里へいくのよね?」


「えぇ、もしかすると旅の連れがいるかもしれないので」


「ちょうどいいわ、あそこならこの剣を研ぎ直してもらえるかもしれない」


「普通の鍛冶屋とかじゃダメなんですか」


「この剣はちょっと特殊な鉱石を使っているの。だから扱える鍛冶師も少ないのよ」



 ますますもらっていいものなのか気にしてしまう情報だが……あんまり断っても逆に悪いしな。二人の気持ちを無駄にするわけにもいかないしありがたく使わせてもらおう。



「わかりました、俺が責任もって綺麗な状態に戻してみせます」


「ありがとう。それじゃあよろしくね」



 レイラさんから渡された剣は細かい傷が無数にあった……ずっと二人を見守ってきたんだろうな。



「それじゃそろそろ戻りましょうか」



 俺たちが神聖樹に戻るとメアリアさんとミントとライムが出迎えてくれた。オミーネさんも出発の準備ができているようだ。



「用事はもう終わったかしら?」


「はい、時間をとらせてすいません」


「それじゃ出発するよ~」



 ミントが魔法で大きな木の獣を作ると頭に乗る。

 簡単にこれを作り出すミントは結構実力者なんだろう。……普段の間抜けっぽさがすごいためますますギャップを感じるが。俺たちも背中に乗ると獣は立ち上がった。



「寄り道しないでちゃんとみんなを送ってくるのよ!」


「わ、わかってるよ!」


「メアリアさん、それじゃあもし俺の連れが来たら」


「大丈夫、ちゃんと行き先を伝えるわ」


「ありがとうございます」


「レニさん、オミーネさん、ルークちゃんもいつか魔界に来てくださいね」


「あぁ、アリスも元気でな! レイラさんもまたいつか!」


「えぇ、あなたも元気でね」


「それでは次なる目的地、ドワーフの里へ出発だ!!」



 オミーネさんが合図を送ると獣が走り出す――森を抜けるとあれほど大きかった神聖樹が見えなくなっていた。



「あれ、なんか雰囲気が変わった?」


「果ての大地は元々人間がこれるような場所じゃないんだよ、それがいつからかちらほら見えて……」


「僕もまさか果ての大地に辿り着くとは思わなかった。これもさだめというものなんだろう」



 そう言えばオミーネさんは旅をしていたと言ったな。



「オミーネさんはなぜ旅に?」


「……村で誓ったのさ。必ず世界を平和にするとね」



 なんかすごく勇者らしい理由だな……村にお告げでも来たんだろうか。そんなことを思いながらまたしばらく進んでいくと山岳地帯へと入っていく。



「この先がドワーフの里だよ」

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