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28話 『一期一会』

「随分と世話になったな」


「こちらこそ、色々とありがとうございました」


「お爺さんも元気でね」



 町の出口ではみんなが集まっており、馬車がいつでも出れるように準備されていた。



「ほら、メユ……挨拶しなさい」


「………………」



 メユちゃんはアリッサさんの横で手を繋ぎ、うつむいたままだった。リリアが膝を折りメユちゃんと顔を合わせる。



「そうだ、メユちゃん。パールとレニ君がね――首飾りのお詫びにこれあげるって」



 そういってリリアはメユちゃんの手を取り永久氷雪を渡す。アリッサさんは驚き俺をみたが笑顔で返すと、リリアにもいいんですと言われ、返しなさいと言う訳にもいかず深く頭を下げた。



「これにはメユちゃんが早くお父さんと会えるようにって、おまじないをかけてあるの」


「えっ、本当?」


「うん! だから大事にしてね」


「よかったわねメユ、ほらお兄ちゃんにもちゃんとお礼を言いなさい」


「レニお兄ちゃんありがとう!」



 メユちゃんは俺に向かって声をあげる。俺は軽く手をあげ笑顔で応えた。区切りがいいと見たのか、馬車の準備をしていた男性が声をあげる。



「よーしそろそろ行くぞ。あまり遅くなっても名残り惜しくなっちまうだろうからな!」


「はい、リリアそろそろいこう」


「うん」



 リリアが立ち上がるとメユちゃんはリリアの服を小さな手で強く握っていた。



「お姉ちゃん……また会える?」


「……うん、きっと会えるよ」


「メユ、ほらお姉ちゃんがいけないじゃない。離してあげなさい」



 そう言われ手を放すがメユちゃんは徐々に目から涙を流し泣き始めてしまった。

 あの子の年齢なら別れはまだ辛いだろうからな……今まで我慢していたものが溢れてしまったんだろう。



「うわぁぁぁぁん! お姉ちゃんいっちゃやだああぁぁっ!!」



 リリアは少し戸惑っていたがメユちゃんの肩に手を置く。



「メユちゃん……私もね、お父さんとお母さんを探してるの。だから寂しいけど行かなきゃいけないの」


「うぅ……っ」


「それに、きっとまた会えるから。今は笑顔で見送ってくれないかな。私もそのほうが嬉しいな」


「うぅぅっ……ひっく……っ」



 メユちゃんはリリアになだめられると必死に泣くのをやめ、変わりにアリッサさんの足に抱き着いた。



「偉いわねメユ。さぁ、引き留めちゃってごめんなさい」



 アリッサさんにお辞儀をするとリリアはこちらに走ってくる。馬車に乗り込むのを手伝うと――リリアの目には涙が見えた。

 そういえばリリアにとってもこういう別れはなかったかもしれない……こんなときは何か言うより、時間が解決してくれるのを待ったほうがいいだろう。

 そして出発のため最後の確認をしたとき、横の穴にいたパールが声をかけてくる。



『また会おうね』


「おう、そういえばお前、昼寝は大丈夫なのか?」


『ちょっとずつ食べればすぐに眠くはならないみたい』


「そうだったのか、落ち着いたらしっかり食ってくれよ」


『うん! そうだ、あの人たちに教えてあげたいことがあるんだけど』



 俺はちょっとだけ出発を止めパールからあることを教えてもらった。そして出発のときがくる。



「みんなまたなー! おーいトス爺ー!! ここは鉱石がでないっていってたよな!? パールがそこにあるってよ!」


「ん……? な、なんだと!!」



 トス爺は俺が指差した場所……自分のいる足元を見た。そう、皮肉にも鉱石はトス爺たちが切り開いた町の真下に埋まっていたのだ。

 自分の足元と俺を交互に見るトス爺をしり目に俺は合図を出す。



「さぁ出発だ! 行くぞ、ルーク!」


「クゥ!!」



 馬車が動き出すとルークも走り出し飛び上がる。こうして俺たちを乗せた馬車は次の目的地、メユちゃんの父親がいるという魔法都市へと向かう。


 膝を抱え泣いたままのリリアに俺はたった一言、頑張ったなと伝えるとリリアは静かに頷いた。




 * * * * * * * * * * * *




「おーい、そろそろ着くから準備してくれ」


「わかりました、ルーク戻っておいで!」


「クゥ~」



 馬車の速度を落としルークが一緒に歩き始める。



「魔法都市かぁ~どんなところだろうね」


「魔法の研究が盛んだとは聞いたが、リリアの魔法について何かわかるかもしれないな」


「そうだといいけど、でもまずはメユちゃんのお父さんに報告しなきゃね!」



 徐々に大きな橋が見えてくる。入り口に到着すると検問所のような小屋からローブをまとった女性が御者に声をかけてきた。



「どういった御用でしょうか」


「知り合いに会いにきた。後ろの二人は道中で出会ってな、旅をしている」


「まぁその歳で……そのモンスターは?」


「そいつは少年の従魔だ。安全は保障する」


「わかりました、少しお待ちください」



 女性は中に入ると何か道具のようなものを取り出し確認をしていた。たぶん犯罪歴がないか調べているのかな。もしくは嘘をついていないか、とか。

 中にいたもう一人の女性も一緒に確認している。



「うん、問題はなさそうね」


「えっ…………ドラゴン?」


「何を言ってるの、もう一度ちゃんとみなさい。きっとリザード種でしょう」


「なぁ姉ちゃんたち、もう行っていいか? 後ろも詰まってるようだし問題はないんだろ?」


「えっ!? あ、はい失礼しました。ようこそ魔法都市オーランへ!」



 騒いでるようにも見えるが……まぁいっか。目立たず問題を起こさなければいいだけだ。


 こうして俺たちは橋を渡り魔法都市へと入っていった。

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