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18話 『小さな友達』

『待っていろ』



 ドラゴンは住処の奥へ入っていく。時間の空いた俺たちは王都を出るときを思い返した。


 王都を出る際、なぜか俺たちの旅立ちを知っていたソフィアさんとタイラーさんにお金と旅に役立つ道具をもらったが、その中でも両親からの手紙と婆さんからの茶袋は予想外だった。



「なんで旅にでること知ってたんだろ」


「そういえばお婆ちゃんも私が旅に出るのを知ってたような気がする」


「う~ん……まぁいっか、そんなことより宝だ!」



 しばらく待つとドラゴンが戻ってくる。差し出した手には小さな木箱があり俺たちの前に置く。



『開けてみるがいい』



 いったい何がはいってるんだろう……。自分を落ち着かせるようにゆっくりと開くと一冊の本入っていた。

 表紙は文字がかすれてしまっていてほとんど読めない。



「なんだこれ」


「なんの絵だろ……あ、下に何か書いてある」


「えっと……『今日は旅に出て一日目、初めての野宿だ! 一人でちょっと寂しいけど、これからどんな出会いがあるのかと思うと楽しみ!』」



 これは誰かの絵日記か?

 よく見ると星空と思わしき絵が描いてあり、次のページには同じように絵とその日の出来事が書いてあった。




「あ、待って! そのページって」


「ん? どれどれ……『でっかいドラゴンを見かけた。とてもかっこよくて綺麗だった! なんか怒ってるみたいだったけど話せばわかってくれたし、お友達にもなってくれた!』」


「これってもしかして……」



 俺たちが顔を見合わせるとドラゴンが昔を思い出すように説明した。



『もう何年も前だ。面白い人間でな……我に向かいこれ以上わかってくれないなら懲らしめるぞ、話を聞きなさい! と言ってきたのだ』


「ドラゴンに立ち向かうとかどんな人間だよ……」


『はっはっは! お主も人の事を言えんぞ。恥ずかしい話だが我はそのとき、手も足もでなかった』


「さすがに手加減してたとかだろ?」


『最初は甘くみていた、だが見たことのない魔法の前に結局何もできなかったのだ。動けなくなった我に人間はこういった……寂しいからお友達になってよ! と』


「マジかよ……」



 ドラゴンを完封したあげく友達になれってヤバすぎるだろ……実は魔王とかじゃないのか? 力があれば皆友達とかいってそうだし。世界は広いというが、どこの世界でもぶっ飛んでるヤツってのはいるんだな。



「何かわかったの?」


「この日記の持ち主、たぶん竜の巫女と言われた人なんだろうけど……ドラゴンに友達になれって言ったらしい」 


「えー! そんなにすごい人だったんだ! ほかのページには何が書いてあるんだろ?」



 中身を気にしていたリリアに俺は本を手渡した瞬間、突然本は光出した。



「なっ……何これ、なんで……」



 リリアが俺に本を見せると表紙には【リリアちゃんの絵日記】と書かれていた。



『そういえば……その本は一部の人間に反応して記録をつけるといっていたな』


「でも俺だって本を触って……あっ」



 もしかしてドラゴンのものまねしてるから人として認識されていなかった?

 しかも、素の俺は魔力が無いようなもんだし。



「どうしよう、中身も真っ白だし……あの、ごめんなさいドラゴンさん! 大切にしていた本だったのに!」


『気にするな。それよりも、いつか我が子との冒険でも読ませてくれ』


「リリア、その本はやるって。いつか読ませてくれって言ってる」


「えっ……。うん、わかった! ありがとうドラゴンさん、大事にするね!」


『さてと、お主たちは旅に出ると言っていたな。次はどこへ行くのだ?』


「ん~それが決まってないんだよな。できればこいつが目立たないとこがいいんだけど」



 ぐっすり気持ちよさそうに昼寝してる姿を見てるとやはりまだまだ子供だ。ドラゴンとばれて狙われるより、最初はもっと安全な場所を選んでおきたいからなぁ。



『ならばあの辺りがいいな……それと、いい加減名前を付けてやったらどうだ?』


「え、俺が名づけていいの?」


『当たり前だろう。我が子を救い契約したのはお主だ』


「そう言われてもなぁ……リリア、ドラゴンの子供に名前をつけろって言われてるんだけど、なんかいい名前ないか?」


「う~ん、あの子はレニ君が考えてくれたのならなんでも嬉しいと思うよ」



 そう言ってもなぁ、こういうのは苦手だし。王都、城……キャッスル……ん~……あ、そうだ。



「ルークってのはどうだ? あるおもちゃでお城の形をしてるんだ。王都で出会ったし呼びやすいと思うんだけどどうかな」


「ルーク……うん、カッコいいしいいんじゃないかな!」


「……クゥッ?」



 ルークは名前を呼ばれながらリリアに撫でられ気持ちよさそうにしている。



『ルークか、いい名だ』


「そういえば今更だけど俺はレニ、あの子がリリアっていうんだ。あんたに会った人と同じこと言うようだけど……俺たちと友達にならない?」


『ほう……』


「いや、何も慣れ合いたいってわけじゃない。こうしてあんたと話せてるし、せっかくならと思ってな」


『……よかろう……小さき友よ』


「本当か、ありがとう! リリア、ドラゴンが友達になってくれるって!」


「本当? やったー! 私もいつか話せるようになったらそのときはよろしくね」



 その言葉を聞くとドラゴンは頷いて応える。竜の巫女と呼ばれた人も話せるみたいだし、きっとリリアも魔法を使いこなせばいつか話せるだろう。



「そうだ、せっかくだし今日はここに泊まらせてよ。あんたの話も聞きたい」


『長く生き、狩るだけの人生だ。面白いことなどないぞ』


「それでもいいって! あんたのこと知りたいし、じゃあ今日は泊まりで決まりな!」




 こうして俺たちは一晩泊まることにした。話を聞くともう何百年以上生きており、この世界には様々な種族、生物、魔法、アイテムがあるが、長年生きたドラゴンですら把握するのは不可能だという。

 リリアとルークが寝静まっても俺は様々な伝説を聞き眠れずにいた。


 そんな俺を見たドラゴンは強者にしかわからない世界、景色、最後に悩みをほんの少しだけ…………明かしてくれた。


 そして翌日、俺たちはドラゴンに送ってもらい雪の町へと降り立った。

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