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162話 『始まりの魔女』

 人を未来へ送り出す――本当にそんなことが可能なのだろうか。そもそも賢者といわれたオーランですら、考えた末に出した答えというのが封印術だ。

 もし未来へ送る魔法があったのなら何か歴史に残されていてもいいとは思うのだが。



「ちなみに、(オーラン)に封印術を教えたのも私よ」



 いったい何者なんだこの人は……。ミアさんはいつの間にか人数分の椅子を出しており座るように促す。


 仮にもしそれが本当だったとすれば何百年以上も生きていることになる。

 妖精とのハーフとか? もしくは吸血鬼とか……世界にはまだまだいろんな種族がいると聞く。現にミントも長生きしてるわけだからそういった存在がいたとしても変ではない。


 問題は俺達を送ったのが本当にこの人なのであればなぜそんなことをしたのかだ。



「色々聞きたいことがありますが……とりあえず、もしそれが本当なら、なぜ俺達をこの時代に送ったんですか」


「あなたは話が早くて助かるわね。ちょっと移動しようかしら」




 魔法陣に包まれると、気がつけば石畳が外灯に照らされた空間にいた。念のため立ち上がり、すぐ動けるようにしておくと奥から大きな魔獣が現れる。そういえばこいつもニッグの記憶でみた……。


【ものまね士(状態:フェンリル)】



『ようこそ、来訪者よ』


「来訪者って、俺のこと……だよな?」



 肝心のメアさんもいないし、こいつは襲ってくる様子もなければ俺の声に反応しキラキラと目を輝かせている。



『私の言葉がわかるのか。すごいぞ、やはりメアの言った通りだ』



 嬉しいのかわからないが尻尾がブンブン動いている。メアさんを知っているということは敵ではないのだろう……話をしてみるか。



「なぁ、ここはいったいどこなんだ?」


『何も聞いていないのか』



 話を聞こうとしてここに飛ばされたからな。どうしたものかと思っていると奥から二人の人影が歩いてくる。外灯の光に照らされ姿がはっきりすると見たことのある姿だ。



「おーまさか本当に連れてくるとは、どうみてもただの人間にしかみえないが」


「こっちじゃ普通の人間って言ってたでしょ。メアはまだのようだし自己紹介でもしてましょう。私はラーティアよ」



 ミントとは違い背も大きく、握手をするとなかなか力が強い。俺はただの人間だが、みんなは普通じゃないのか? みんな改造を受けてるとかだったらなんか嫌だな……。



「俺はヒュノス、よろしく頼むぜ」



 やはり間違いない、あのときたった三人と魔獣でニッグを抑え込み、世界の終わりを防いだ人達だ。しばらく挨拶をしていると背後から声が聞こえる。



「さてと、みんな揃ってるようね」


「おう。まだこいつに何も話してないんだってな?」


「仕方ないでしょ、彼の秘密をみんなの前でいう訳にはいかなかったもの」



 俺の秘密だと。もしかしてこの人、俺が大の伝説好きだということを知ってるのか!?



「……もしかしてあなたも?」


「それはないから安心して。あなたのように他の世界から来た人間なんて誰一人としてほかにいないわ」



 あぁそっちか。なんだ、仲間に会えたと思ってちょっと期待したのに……残念だな。確かに俺が前世から来たなんていってもみんな信じてくれるかどうか……いつか時がきたら話したほうがいいんだろなぁ。


 そういえばフェンリルも来訪者って言ってたし、もしかして前世のあの山で聞いた声って――。



「俺のことを呼んだのってメアさんなんですか?」


「違うわ。あなたを呼んだのは彼女(リリア)の母親よ」



 あの声の主はリリアのお母さんだったのか。だけどなぜそれをメアさんが知っているんだろう。



「失礼ですがメアさんはいったいどこまで知っているんですか? オーランの時代から生きているにしても不老不死でもなければ人間が生きているなんてことできないはずです」


「私は未来と過去を移動することができるの、だから全部ではないけどほとんど知っているわ。現時点の世界がこれからどうなるのかもね」



 それってもはや神様じゃない? だけど、俺達をこの時代に飛ばした理由がまだだ。

 場合によっては一言モノ申したいところである。あのせいでどれだけリリアが大変な目にあったか――。



「ちなみに俺達を飛ばした理由ってのは? まさか、砂漠の国や人々を助けるためってことじゃないでしょうね」


「あら、人助けできてうれしくないの」


「ふざけないでください。俺はまだしも、リリアがどんな目にあったのか知っているはず。それとも、もし死んだりしたら変わりでも連れてくるつもりだったんですか?」



 嫌味たっぷりに言ったつもりだったが目の前の四人は表情一つ変えずに俺の話を聞いていた。あの程度くらいなんとも思っていないのかわからないが、徐々に腹が立ってくる。



「なぜあのタイミングなんだ。せめてもっと魔法を使えるようになってからとか……方法はいくらでもあったはずだ!」


「あなたの言い分もわかるわ。だけど安心して、彼女はあなたが生きている限り死ぬことはないから」



 ど、どういうことだ。いくら魔法使いだからってそんな根拠もないこと……まさか!



「もしかして、死んだら生き返らせるつもりだったのか!?」


「さすがにそれはできないわ。神様が許可してないもの」


「いったいどういうことだ? 俺が生きている限りって――」



 もう何が何だかチンプンカンプンになってきた。……一度頭を冷やそう。

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