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147話 『4+1』

「ふぁ~……」


「パパおはよー!!」


「おはよう、シャルはママに似て早起きだなぁ」


「ママお外にいるよー」



 階段を降り朝から元気なシャルの頭を撫でる。昨日は散々だった……もうあんな敵は見たくない。フリックさんたちもまた戻ってくるって言ってたし一応外で待つか。

 外に出ていくとリリアがルークとのんびり座っていた。挨拶を済ませ俺もシャルと一緒に座る。


 ルークがいなかったら今頃どうやって下に降り地上に戻るか頭を抱えているところだったな……。みんなでルークを労っていると里へ帰っていたフリックさんが森から出てくる。



「おーい、里の精霊が無事に戻――ってなんで家が建ってるんだ!?」


「あぁこれはな」



 そのとき家の扉がゆっくりと開かれミントがやってくる。眼の下には隈を作りまるで昨日の幽霊さながらだ。



「みんな……おはよー……」


「ど、どうしたんだその顔は」


「ふっ……僕としたことが、怖れるあまり家の中なら大丈夫と油断していたね。どうやら夢にでてくる奴らを防ぐのは無理だったようだ……」



 ミントはルークの上にふらふら飛んでいき倒れるように寝込む。そう、この家は森に着くなりミントの提案で急遽作ったもの。

 籠城すれば大丈夫と考えたミントもさすがに夢の中までは無理だったようだ。ちなみに俺はというとしっかり剣を抱いて寝た。そのおかげもあってかぐっすりと眠ることができ、今日の体調はすこぶるいい。



 しばらく経つとジュリネさんも歩いてきたがどうやら寝不足みたいだ。さすがのフリックさんも気の毒そうな顔をしている。そりゃあそうだろう、あんな悍ましいものと戦ったんだ。心配はしても笑う奴など誰もいない。



「こちらの精霊は無事に戻っていたわ」


「そうか、フリックさんのほうも戻ったということだし、これで呪いは解決ということだな」



 色々と謎は残るがまずは精霊王にいい報告ができそうだ。そういえば加護をもらっていれば精霊術で召喚できるんだっけ、試してみるか。


≪スキル:ものまね(精霊術師)≫


≪精霊召喚≫



『……やぁ』



 あ、ノンちゃんがでてきた。相変わらずのんびりしているなぁ。召喚されたこと自体に驚いてもいないようだし何度かきたことがあるのかな。

 シャルがハイタッチして挨拶をしているとフリックさんとジュリネさんが跪き畏まっていた。



「な……なぜ地の大精霊様がここに……!」


「二人も知ってるんだ?」


「知ってるも何も……歴代の精霊術師でさえほとんど契約したものがいなかったといわれる、伝説の四大精霊のうちの一人、ノーム様じゃないか」



 伝説だって!? ……確かに……思えばあの世界自体が人知れぬ伝説だとすれば、そこにいる生物は全部伝説のようなもの――なのに俺としたことが伝説の世界に浮かれすぎた結果、伝説のはずの精霊を堪能できていない!


 もう残りの精霊も中身を知っちゃってるし……。仕方ない、とりあえずノンちゃんにあれを聞いておこう。



「ノンちゃんにもらった果実さ、こっちの世界にもあるらしいんだけど食べると魔力欠損になっちゃうらしいんだよ。何でかわかる?」


『……この世界は精霊樹が育ちづらいから魔力を吸収するように作り替えた、そのせいだと思う』



 なるほど、だからこっちの実は魔力量の少ない人間が食べると逆に魔力を奪われて危険なんだな。まぁ精霊のおやつみたいなもんだろうしそのまま残しておいたほうがいいだろう。



「そんなことが……ん? もらった?」



 フリックさんは何かに気づいたが慌てて誤魔化した。さすがにこれ以上は話すと大変なことになるからな。

 そして今度はジュリネさんが何かに気づいたのか顔をあげた。



「ねぇ、ノンちゃんっていったい」 


『……私の名前、付けてもらった。いぇーい』



 ノンちゃんは嬉しそうにピースを作る。あ、ジュリネさんが固まった。フリックさんは辛うじて大丈夫みたいだが何かぶつぶつ言っている。



『……そうだ、みんなが自分たちも呼べって騒いでたよ。君の魔力まだまだ大丈夫そうだから呼んであげて』


「えっ、まじ? さすがに全員は……まぁ喧嘩になるといけないし呼ぶか」


≪精霊召喚≫



『お、本当に召喚された! この感じ懐かしいぜッ!!』


「ッ!! も、もしや火の大精霊様!?」



 サラさんが現れた途端、ジュリネさんが立ち上がり駆け寄ってきた。



『ん? お前は火の加護をもっているのか』


「は、はい! 精霊とも仲良くさせてもらっております!」


『これからもよろしく頼むぞ』



 そういって肩に手をかけられたジュリネさんは背筋を伸ばし何度もお辞儀をすると元の位置へ戻っていった。まるで上司に褒められた部下みたい。

 フリックさんは定位置で茫然としているしもう面倒だ、このまま次も呼んじゃおう。


≪精霊召喚≫



『あら、本当に呼ばれるとはね』


「あーお水のお姉ちゃんー!」



 アクアさんだって。なんか段々同窓会みたいになってきてしまったが、残るはあと二人だな。


≪精霊召喚≫



『お~本当に地の世界に……って無視かよ!?』



 無視するつもりはないんだが、こうも精霊が集まるともうジュリネさんもパンクしてるみたいだし、フリックさんだって……あれ?



「な……なんとお美しい姿なんだ……」


『えっ、な、なに』



 そういえばフリックさんって風の精霊と契約していたな。やっぱり精霊も個人の好みが別れるのだろうか。

 浮いているシルフさんを崇拝するようにフリックさんは跪いている。



「まるで宝石のような輝き……しかし夢幻の如く漂うそのお姿は間違いない、あなた様は風の大精霊様ですね!?」


『ちょ、え、なんなの』


「あぁ素晴らしい! まるでこの世のどの宝石よりも美しい!!」



 シルフさん、崇拝してくれる人がいてよかったじゃないか……。まさかフリックさんがこうなるとは思わなかったが。さてと、最後は精霊王か。

 しかしあの人がくるってのにこんな騒ぎじゃあ一喝される気がする。とりあえずみんなを落ち着かせるしかないな。



「はーい、みんな静かにー。今からあの方を呼ぶので整列しましょう」



 精霊たちは俺の言葉を聞いた瞬間、姿勢をただし俺の横に並んだ。どうやらあのあとこってり絞られたらしいな。



「よ、四大精霊が揃ってるだけでも異常なのに……誰がくるっていうの?」


「文献では四大精霊以上の存在は書いてなかったはずだが……そもそもこんな光景、幻なんじゃないのか」



 夢じゃないぞ、ちゃんと現実を見るんだ。そして今から来るのはもっと夢のような存在、頼むから倒れないでくれよ。



「それじゃあお呼びしま~す」


≪精霊召喚≫



『――この地も久しいな』



 子供の姿は変わらないがやはり精霊王、ピリッと引き締まった。フリックさんたちも完全に雰囲気にのまれている。よし、静かなうちにとりあえず報告を済ませるとしよう。

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