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146話 『正体』

「はぁ……はぁ……はぁ……」



 幽霊の声もとりあえずは聞こえなくなり、場は落ち着きを取り戻す……。ルークだけはなぜか例外だったのか幽霊が襲うこともなく何も感じていない様子だった。



「な、なぁみんな……今のってモンスターだと思う?」


「あんなのに比べたらゴーストはもっと可愛いよ……」


「精霊樹で作られた矢も効かなかった、あれは間違いなくこの世のものではない……」



 やはり幽霊の類か、しかしなんであんなヤバいのが……。完全にビビりモードに入っている俺たちに向かってシャルを連れたリリアが口を開いた。



「とりあえずオーランの遺産を探そっか」


「あ、あなた……あれが平気なの?」


「ん-怖いけどレニ君なら倒せるし」


「パパだけ倒せる敵ー!」



 いや、俺が倒せるというか俺の剣がなぜか効くというだけで内心ビビってるから!

 そりゃあ俺にだって怖いものはある、伝説の怨霊ならまだしも名も知らない幽霊など恐怖でしかない。



「よし、ならばこのまま先頭は君に任せよう」


「そ、そうね。私たちじゃ足手まといになっちゃうし」


「周りの索敵は任せてよ」



 くそ、こいつら俺を生贄にするつもりか。いきなり現れる幽霊相手に苦戦したばかりだろうが……。リリアとシャルがすぐ後ろをついてきてくれるが、正直声が聞こえる時点で怖いのだ。気づいたら一人とかほんとやめてくれよ……。

 そんなに遠くにいくつもりもないためルークを視える範囲で待機させておく。


 伝説の魔道具のためだ、そう言い聞かせ歩き続けると台座が現れ、上に棺のようなものが置かれている。



「これがオーランの遺産?」


「どうみてもヤバいヤツが封印されているようにしかみえないんだけど」


 ……クライ……ダレカ…………



 また声が聞こえたと思うと前の棺のようなものが大きく動き出す。



「もう勘弁してくれよ……」


「ほ、ほら君の出番だよ頑張って!」


 サムイ……タスケテタスケテタスケ…………ロ…………



 大きく音を出し蓋がずれた棺から黒い液体が溢れでてくる。そしてワンピースをきた女性が現れた。腕や足はひしゃげて血で染まった帽子が落ちると頭からは大量の血が溢れでていた。



「はあああはやく倒せええええええええ!」


「うおおおおおおおおごめんなさあああああああい!!」



 女性を斬るとほかの霊と同じように霧散し消えていった。とっさに叫んでしまったがシャルとリリアが無事ならもうなんだっていい。棺から離れミントたちのほうへ戻る。



「はぁ……もう当分夜はぐっすり寝れないかもしれないな」


「レ、レニ君……」



 そういったリリアの視線がなぜかずれていた。そして、ミントたちのほうを見ると完全に俺と目があったはずなのに逸らした。俺が前へ一歩歩くとミントたちが一歩退く……。



「パパいっぱい連れてきたー」



 ゆっくり後ろを振り返ると逆さになった首や、半身を失くし地を這いつくばる霊などが大量に湧いていた。


≪秘剣:四方≫


 特別な存在だかなんだか知らないが恨むならこの剣を作った張本人(ローラさん)を恨むんだな!!

 反撃にでた俺はちょっとだけローラさんのせいにして必死に幽霊を斬りまくった。解呪ができないのであれば呪えないくらい切り刻んでやる!!



「ね、ねぇミント、もしかして幽霊ってあの棺からでてきてない?」


「ん? ほんとだ……あ、あれってまさか」



 次々と襲いくる霊をひたすら斬る俺の後ろでリリアとミントが話をしている。そして後ろから棺に向け魔法が放たれた。棺に当たったと思うと影が蠢き霊たちが苦しそうにしている。



「そうか……やっぱり! あれはアビスだ、本体は棺だよ!」


「何ッ!?」



 しかし、棺の周囲は大量に湧き出てくる霊が多く近づけない。みんなも遠くから棺を攻撃しているがさすがオーランの遺産だけあって頑丈な造りだ、まったく壊れる気配がない。



「わ、私も加勢するわ!」



 ジュリネさんが精霊を呼び出す――すると一斉に霊たちが反応した。まるで獲物を見つけたようにこちらは見向きもしていない。



「ちょ、ちょっとなんでこっちにくるのよ! い、いやああああああああ早く攻撃してええええええ!!」



 火の精霊は口から炎を吐き出すと霊たちを焼いていく。まるで霊たちはダメージを受けているかのように……いや、確かに受けている!



「ジュリネさん、精霊の攻撃が効いている! そのままそいつらを引き付けててください!」


「は、はやくなんとかしてええええええええ!!」



≪絶剣:桜花奉断≫


「これで――終わりだあああああああああああ!!」



 振り下ろした剣は棺を粉砕しそのまま地面を割った。……そういえばこの技ってベヒーモスの角と魔人相手にしか使ったことなかったな。

 どのくらい強いのだろう――そんな疑問が頭をよぎった瞬間、地面に入った亀裂は音を立ててそのまま広がっていった。



「あ、ヤバい」



 まずい、崩落する。すぐに何かもの言いたげなみんなを避難させルークに乗り込む。徐々に音を立てて崩れる穴から俺たちは脱出した。



「……ふー危なかった」


「ねぇ、あの崩落って君の」


「あーッ!! 伝説の魔道具を壊してしまったああああああ!?」



 そうだ、あれはオーランの遺産、つまり伝説と言われた魔道具だったんだ!

 アビスがいたということですっかり忘れていた……今思えば中にいるアビスだけ倒すとかすればよかったんじゃ……。なんで思いつかなかったんだああああああ!!



「あれでアビスを抑え込んでたのかな?」


「全然抑えられてなかったと思うけどな。それくらい強力な相手だったんだろう」


「これで精霊さんの呪い解けたー?」



 あ、そういえば元凶ともいえそうな棺を破壊したしどうなんだろう? フリックさんは確認のため精霊を召喚する。


【ものまね士:状態(精霊)】



 よし、手も見えないしものまね士も異常はなさそうだ。



「完全に治ってるしもう大丈夫だ」


「ほ、本当か!?」



 めちゃくちゃ俺に懐いてくるがまぁこれも加護のおかげだろう。フリックさんの目には恩人に感謝する精霊としかみえていないのかなんとも思っていないようだし騒がれなきゃ結果オーライだ。

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