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137話 『本領発揮』

「さーってと、次はどこにいこうかな!」


『もっとゆっくりしていかなくていいのかい』



 軽食もすませ体力も回復し、俺は次の目的地を考えていた。

 本来であれば人知れぬ伝説ランキングにランクインするであろうこの世界をもう少し見て回りたいと思うところだが、俺には――――いや、俺たちにはもう一つの目的がある。


 リリアの父親はみつけたが母親をまだみつけていない。アインさん曰く母親は時乃回廊にいるといい、行くことは不可能といっていた。


 だがよく考えてみてほしい。不可能なのにリリアのお母さんはそこにいる、つまり矛盾しているのだ。正確には限りなく不可能に近いというだけでいけないわけではないということだろう。

 そんな場所に伝説がないはずがない。なかったとしてもそこに辿り着けたリリアのお母さんが伝説である可能性が高い。



「俺たちは旅をしてるんだ、目的地があるわけでもないんだがな」


『……ならば一つ頼みを聞いてもらえぬか』



 これは間違いなく厄介事の予感がする。昔だったら絶対に断っていただろう、だけど今は――俺はあえてみんなに聞いてみた。



「精霊王からの依頼です。間違いなく危険だと思われますがどうしますか?」


「やっぱり君ってそういう才能持ってるよ。最終系は歩く災厄になるんじゃないの」


「もうミントってば……、レニ君が起きないと退屈だってずっといってたのに」


「ママはずっとニヤニヤしてたよー」



 え、なにその情報。シャルちゃんあとで詳しく聞かせて?



「ちょ、違うのよ! あれは嬉しくて」


「おやーやっぱり僕の情けない姿をみて嬉しかったんだ。シャル、僕は悲しいよー」


「ミントおじちゃんかわいそー」


「もうそのことはちゃんと説明したでしょ!」



 なぜか精霊王の依頼を受けるかどうか聞いたのに別の話題で盛り上がり始める。俺が寝てる間に何があったんだ……。

 だけど今はこれが当たり前というか、よっぽどのことがない限り俺が決めることに反対はない。何かあるときはハッキリというのがその証拠だ。



「ということで頼みというのは?」


『仲間たちは何やら騒いでいるようだが大丈夫なのか』


「あれは問題なしってことです。気にしないでください」


『そうか、頼みというのはな、地の世界にいる精霊たちの様子がおかしいのだ。もしかするとアビスが関わっているのかもしれぬと思ってな』



 なるほど、俺たちの世界で精霊は見たことがなかったからついでと思えばちょうどいいか。それに精霊使いがいれば俺もみんなを呼ぶことができるかもしれないし。



「それくらいなら任せてくれ」


『こちらの都合ですまぬな。すぐ近くにでれるようこちら側から調整しよう』


『あの……仲間たちをどうかよろしくお願いします』



 アクアさんたちもなんだかんだ心配してたのか四人揃って頭を下げてくる。



「できる限りのことはすると約束します。だからみなさんも次に会ったとき、代替わりでいなかったなんてことにならないようにお願いしますよ」


『そ、それは!』


『はっはっはっは! ならば全員鍛えてやらねばならんな!』


『精霊王様……なにとぞお手柔らかにお願いします……』



 これで少しはみんな頑張ってくれるだろう。元々力は持ってるんだから使い方さえちゃんとすれば精霊王も認めてくれるはずだ。



「さて、それじゃあ俺たちの世界に戻りますか!」


「ねぇ僕がもし魔力をなくしたら加護をちょうだいね」


「シャルもほしいー!」


「もう二人共……皆さん色々ありがとうございました! また会いましょう!」



 ルークが勢いよく空に飛び立つ。精霊とこの世界に別れを告げ、空を進むと精霊王がいっていた光の門がみえてくる。



「なぁみんな、空に島はあっただろ?」


「別の世界を島とは呼ばないよ」


「ふふふ、次はどこに着くんだろうね」


「行ってみてのお楽しみ~~~!」



 俺たちは光の門を抜け元の世界に戻った。地上を見下ろすと辺り一面森に囲まれている。まともにルークが降りられそうな場所も少ない。さすがに木を壊すわけにもいかないし……。



「ルーク、いったんあそこに降りよう」



 森に降り立ち辺りを見渡す。上からみると気づかなかったがなんとなくどこか手入れされているようにも見える。



「グルルルルル」


「何? みんな注意を」


「してるよ、こんなに気配をだしてちゃバレバレだって」


「数は多いみたいね」



 どうやら敵の気配に気づいてなかったのは俺だけだったようだ。仕方ないだろう、だって魔力がないからいちいちスキルを使って調べないといけないんだし……。

 さてどんな敵がでてくるやら――そんなことを思い構えていると一本の矢が高速で飛んでくる。



「シャル危な……い?」


「大丈夫、この子は傷つけさせない」



 リリアはシャルの前に立ち矢を手で掴みへし折った。いくら魔人のおかげで力が増えたといっても凄すぎない……? 魔法だって何倍も強力になってたし、いくら成長期だとしても異常だ。



「おー! ママ、かっこいいー!」



 喜ぶシャルの前でリリアは堂々と立っていた。心配し声をかけようとした俺をミントが止める。



「ほら、ちゃんと見てあげなよ。君が思ってるほど彼女は弱くないだろ」



 リリアはシャルをルークに守らせると、すぐに次の攻撃がこないか注意を払い一切の隙をみせていない。しっかり周りが見えている。



「ま、僕だって防御用に魔法を準備してたしね。あれくらい訳ないから安心しなよ」



 俺が寝てる間にみんな成長しすぎだろ……。まるで俺だけレベル上げを忘れたキャラみたいになってしまってる。

 ましてや剣までもが成長したってのに、敵襲の最中にへこんでる場合じゃないんだろうけどさ……。


 そんな俺に対し隙だらけだと言わんばかりに大量の矢が降り注ぐ。ミントがにやけながら俺をみた。



「さ、次は君の番だよ」

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