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136話 『合作』

 専用に作られた台座には剣が立て掛けてあり、その姿は見えないように外装で隠してある。

 台座がある理由としては武器が出来上がったあと無性にほしくなり精霊王に頼んで作ってもらったから――ランナーズハイってやつかも、後悔はしていない。



「ねぇ、なんでわざわざ隠してるの」


「それはな……やってみたかったんだ。お披露目会」



 ローラさんのところで作ったナイフを除けばこれが俺の処女作となる。最初くらい盛大に披露してもバチは当たらないだろう。みんなも今か今かと待ってくれている。



「パパー早くみせてー!」


「よーし、それじゃあいくぞ。これが俺と精霊王の合作だ!!」



 外装を外すと豪華な装飾を施された鞘が現れる。歓声が上がる中、客観的に初めてみた俺はあることが頭をよぎった。


 ちょっと…………鞘が豪華すぎたか?



 実はというと、素材をすべて使い切って刀身を完成させた俺はあろうことか鞘の存在を忘れていた。

 そこで精霊王と一緒に急ぎで鞘と台座も作ることにしたのだが、徹夜のノリが続いてた俺はどうせならと精霊たちのイメージをあれこれと相談し拘っていった。



『これが我らにとってアビスに対抗しうる最大の武器となる。精霊たちよ、その目に焼きつけておけ』



 精霊王が鞘から剣を抜くと細身の刀身が現れる。そう、俺が作ったのはレイピアだった。これなら少ない力でも扱いやすいし刺突ならアビスにも有効だ。多少なら斬ることも問題ない。


 だが、如何せん完成させることに必死だった俺は刀身に模様を入れたりする余裕もなく、錬金術で勝手にできた模様のまま仕上げていた。完成当初はそれがとてもかっこよく見えていたのだが……。

 完全に鞘と台座に映え負けしている。



『この鞘は我らの源である水、火、土、風を現している。そして素晴らしきはこの刀身に込められた模様――これは、我らの力も地の力も祖は同じという少年の心の表れだ』



 そうだったのか、すごいな少年。なぜか精霊王による剣の解説が始まるとみんなが感慨深く頷きながら聞いている。



「よくわかんないけどパパすごーーーい!」



 駆け寄ってきたシャルの頭を撫でながら平常心を装う。大丈夫、余裕がなくてただできただけですなんてルークしかわかっていない。

 精霊王の素晴らしい解説によってあのミントですら『言われてみれば確かに……』といいながら頷いている。



『少年よ、素晴らしい剣をありがとう』


「みんなの協力があったからできたんだ、精霊と……俺たちみんなの合作だよ」



 かっこよく握手を求めると精霊王もそれに応えてくれた。よし、これで模様についてばれそうになったとしても、精霊王も関わっているんだよというとても強力なフィルターがかかってくれる。



『名をまだ聞いてなかったな』



 名前をいうと精霊王はしっかりと聞き頷いた。たぶん精霊王にも名前があるのかもしれないが、万が一ここで名を付けてくれなんて言われたら洒落にならない。

 口は禍の元、黙っていよう。今は寡黙こそが得なのだ。



『レニよ…………そなたに我の加護を授けよう。いつかそなたの身を守ってくれるはずだ』



 ちょっと待て、これ以上加護なんてもらったら絶対ヤバいって。しかも精霊王の加護なんて明らかに普通じゃないでしょ!



「まったく、こんなに加護をもらう人間なんて君以外絶対いないよ……」


「さすがシャルのパパーーー!」



 もう断れないじゃん……。というか精霊たちはみんなサラッと加護を渡し過ぎだよ! もっと加護を大事にして! なんなら俺の分をみんなに分けてやっていいから!

 半ば強制的にみんなから加護を受けた俺は一気に徹夜の疲れが押し寄せてきた。



「疲れたから俺は少し休むよ。リリア、すまんがしばらく経ったら起こしてくれ」


「わかった、ゆっくり休んでね」



 ルークが寄ってくると一緒に寝転ぶ。気持ちのいい空を眺めながら俺はゆっくりと目をつむる。

 遠くからは宝具として祀るだの色々聞こえてきたが俺は何もなかったと自分に言い聞かせそのまま眠りについた。




 * * * * * * * * * * * *



「ねぇ、僕たちが加護をもらうことはできないの」



 レニ君が休んでる間、ミントが精霊王へ聞いていた。あんなに羨ましそうにしている姿は初めてみる。



『精霊使いでもなければ無理だろうな』


「やっぱり魔力が原因?」


『あぁ、地の世界の魔力を持つ者には加護が与えられん。それを可能にしているのが精霊使いというわけだろう』


「ちぇ~……精霊の力なんて滅多にみれないのに」



 ミントはどうしようもない事実にやっと諦めたようだ。



「残念だったね」


「……なんでそんなに嬉しそうなのさ」


「えッ!? そ、そんなことないよ!」



 言われて気づいたがどうにも笑顔が抜けない。レニ君は今まで自分の魔力がないことを嘆くこともなければ他人を妬んだりもしなかった。

そう生まれたのだから仕方がないと受け入れているようにもみえるが、それは生まれたときからずっと続いていたはず。だからこそ、長い間耐えてきた彼が報われたような気がして私は自分のことのように嬉しかった。



「ママ、ニヤニヤしてるー」


「僕が加護をもらえなくてパパだけもらえたのがよっぽど嬉しいらしいよ」


「えーママいじわるだー」


「ち、違うの!」



 とにかく今はこの緩みっぱなしの顔をなんとかしなければ……。レニ君が起きたときようにご飯でも準備してよう。

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