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129話 『天の世界』

「なぁこれ……どう思う?」


「そもそも空に大地なんてないんだから僕らは夢をみてるんだよ」



 火が生えている、試しに近くの枝を拾って触れると枝が燃えてしまった。生えてるという言い方も変だが実際生えているのだから仕方ない。



「変なお花ー」


「危ないから触っちゃダメよ」



 いったい何なんだこの島は……ルークが森を通ろうとすると今度は木が避けていく。なんだか気味が悪い……。



「お水きたなーい」


「ここは……湖だったのかな?」


「元々沼なんじゃないの」



 とても綺麗な湖だったような気もするし元から沼ですと言われればそうともみえる。釣り人ならば主が住んでいるといって大喜びするだろう。



「綺麗にしてあげる!」



 魔法陣が湖の真上に出現し、勢いよく水を吸い込むと綺麗に浄水し始める。浄化といいたいが単純に汚れと水を分けているだけで汚れは湖の脇へと捨てられていく。綺麗な水は混ざらないように丸く浮かべて溜めてあった。


 もはや何でもありと思ったがこれぞ魔法使いの魔法だろう。ミントやソフィアさんでも手順を踏めばできなくはないと思うが、それまでの労力をすべて無視している。



「パパ―おっきいのがいるよー」


「ッ! 下がれシャル!」



 魔法陣が割れ打ち上げられたそれはその場で蠢いていた。深淵のような暗さが何かを黒か染め上げている……間違いない、アビスだ。



『ニ……ゲテ』


「みんな、注意しろ!」



 無数の触手が襲ってくる。ルークが爪で切り裂くと辺りに散った黒い塊はまた元の場所へ集まっていった。アビスは影を狙うしか方法はない。



「なぁ、こいつの本体()ってどこにあるんだよ!」



 ミントが叫ぶ、俺たちは背に腹は代えられないため声がした主には悪いが反撃を試みた……だが、塊を真っ二つに切ろうが潰そうがまったくダメージはないように攻撃してくる。



『ミズ……ヲ……』


「お水ほしいのー?」



 苦しそうに訴えかける声に対しシャルは宙に浮かせていた大量の水をそのまま黒い塊へ落とした。普通ならとどめを刺してるようにしかみえないが、黒い塊は水の中で暴れると光のようなものが徐々に離れていく。そして黒い塊から離れるように綺麗な水の塊が分離していった。



『お願い、そいつを倒して!』



 突如、俺の持つ剣が光を発光し透き通るような刀身へと姿を変えていった。剣からは薄っすらと何かが溢れている。もしかして使えといっているのか……?

 剣を構えアビスを切り裂くと元に戻ることはなく、黒い部分が消えていき綺麗な水だけが残った。



「倒せた……のか?」


「パパかっこいいー!」



 剣を鞘に納め抱き着いてくるシャルの頭を撫でる。剣が成長したってことなのだろうか。



『地の者よ、ありがとう』



 声がするとシャルが溜めていた綺麗な水はどんどん形を変え人間のような姿になっていく。

 なぜか俺のものまね士でも反応がない。生物ではないのか?



「あなたはいったい……」


『私はウンディーネ、水を司る精霊』


「精霊だって!?」



 精霊使いっているらしいし別に精霊がいてもおかしくないんじゃないのか。ミントが珍しく驚いているが今いち基準がわからない。



「お水のお姉ちゃんー」



 シャル、その言い方は誤解を招くと思うからやめなさい。



『あなたが綺麗にしてくれたのね、助かったわ』



 ウンディーネが湖へ手を入れるとそこからあっという間に透き通るような綺麗な水へと変わっていく。



「精霊の力ってすごいんだね」


「当たり前だよ! 僕らの持つ魔力とはまったく異なる力なんだ」



 精霊専用の力か、なんか特権って感じでカッコいいな。才能に溢れ周りよりも優れているというのは華があるが、そういった枠組みから外れつつも、実はすごいんだぜっていうのもかなりロマンがある。

 一度は言ってみたいものだ、この力は俺だけにしか扱えない、とか。



『あなたたちはどうやってここへ?』


「空に浮かぶ島を探してたら着いちゃってさ」



 ……なんだこの微妙な間は、嘘なんかいってないぞ。精霊なら嘘かどうかくらい見破ってくれ!



『おかしいわね、地の世界にある魔力では探知できないのに』


「どういうことですか?」


『この世には二つの世界が存在しているの。一つはあなたたちがいる地の世界、そしてもう一つが私たち精霊の住む天の世界。地の魔力がある限り天の世界に干渉することはできないはずなんだけど』



 でも光を追ってたら着いちゃったわけだし……あっ。



「もしかして、俺って魔力がないから、そのせいであの光がみえちゃってたとか?」


『地の世界は魔力なくして生きていけないはずよ、そんな人間いるわけ――』



 そんな目で全員に見られても困る。まさか魔力が一切ないことにより視えるものがでてくるとは……。

 喜びたいけど素直に喜べない、そんな俺をシャルは元気よく褒め称えた。

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