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128話 『未開の地』

 うーん……こっちじゃないな、あっちでもない。



「いい加減どこに向かってるのか教えてくれてもいいんじゃないの?」


「実はな、空に浮かんでる島を探してるんだ」


「はっ?」



 なんだその顔は、空といえば島だろ。前世では『空から女の子が降ってきた』という話もあったが今の俺はルークという名の無敵の翼を手に入れた。ならばやることは一つ、降ってくる女の子は地上の誰かに任せて俺は空に浮かぶ伝説の島を見つけ出す。



「レニ君、空に浮かぶ島なんて聞いたことないけど……」


「ないの~?」



 いいやきっとあるはず、伝説というのはいくつか種類(パターン)が存在する。

 人がでっち上げたもの、功績が何代も続き尾ひれがついたもの、訪れ経験した者が評価し広めたもの……そして、そのなかで最も出会うのが難しいと言われてるのが、誰にも見つかっていない『人知れぬ伝説』だ。


 俗にいう都市伝説と似ているがあれは根拠がなくとも噂や口承がされている。『人知れぬ伝説』は誰にも知られていない状態だ。まさしく似て非なる至高の伝説――――と、前世で読んだ本に書いてあった。



「みんなに足りないのは信じる心だよ。ほら、みえるだろうあの光が!!」


「パパ―何もみえないよー」


「こいつが言ってるのは表現であって……まぁ難しいからいっか」



 比喩でもなんでもなくて本当にあるんだけど。



「いや、ほらあそこに光が見えるだろ?」


「さすがに冗談がすぎるよ」



 みんなが疑いの目を向けている……信頼を失うようなことだけは避けなければならない。かくなるうえはただ一つ……。



「ルークは信じてくれるかい?」


「グルルルルルル」



 さすがだよ相棒。それじゃ共にいこうじゃないか、光の彼方へ!

 指示を出す方向へルークは飛び続ける。そして長いこと飛び続け距離の縮まらない光を諦めかけたそのとき、突如周りの景色は一変――みたこともない草木が生い茂る平原がでてきた。



「な、なんだここ……」


「綺麗……本当に島がでてきた……」


「うぉーッ! パパすごーーーーい!!」



 本当に出てきた……いや、島って急に出てくるものじゃなくないか? 俺は浮かんでる島を想定していたんだが。と、とりあえずルークを休ませるか。万が一この地面に見えるものが偽物で雲なら落ちてしまう。用心して降りよう……。



「ある……地面が」


「ふっかふかだーーーーー!」


「危ないから遠くに行っちゃダメよ」



 ここはいったいどこなんだろう……島なんて影一つ見えていなかったのに。いつにも増してミントが真剣な表情で考察をしている。



「もしかして結界や隠蔽魔法で隠していたのか……僕もこんなところは初めてだ」


「なっ、あっただろ」



 そしてこの次に起きる事といえば、奥に(きっと)ある遺跡から古代兵器や機械が現れ襲われる。最後はこの島ごと落下して――落下しちゃダメじゃねぇか! とにかく探索はあとにするとして、今のうちにやれることをやってしまおう。



「よしそれじゃあミント、飯にするから机と椅子を頼む」


「君には警戒するという言葉がないのかい」



 そりゃあ注意はしておくけど、このパーティってよく考えたらドラゴンに魔法使いに妖精に魔人の力、もう過剰な戦力だと思わない? 侵略にきたわけでもないんだからさ、もう少しリラックスしてもいいと思うんだ。



「シャル~ご飯にするから準備を手伝いなさい」


「はーーーい」



 さて景色もいいしピクニック気分も出てきた。こういうときに食べるものといえばあれだろう。

 パンを薄く切り二枚にする。あとは俺が適当に合いそうな食材を選びリリアに切ってもらい、それをシャルがパンの上に並べて挟む。

 そう、片手間でも簡単にできて気分も盛り上がるサンドイッチの出来上がりだ!



「パパこれでいい?」


「お~上手いじゃないか」



 さすがルークサイズのサンドイッチ……多段にして量を増やしてはいるがシャルの顔が隠れているくらい大きい。



「それじゃママに運んでもらって。残りは俺たちで運ぼう」



 ミントが作ってくれた机にサンドイッチを並べていく。おまけ程度にサラダはつけているが味付けはシンプルだ。



「みんな揃ったかな。それじゃ、いただきます」


「ミントおじちゃん、これ私が作った~」


「挟んだだけでしょ……まぁ綺麗にできてるし、美味しいからいいんじゃないの」



 うん、シンプルだが野菜はうまいし肉を挟んだのもしっかり旨味がでていて美味しい。隣に座っているリリアもシャルの手本になるためか行儀よく食べているが口の中がいっぱいいっぱいだ。

 それにあのミントがまさかのおじちゃん扱いとはな。



「あーッ! 私のーーー!」



 シャルが声をあげると、小さく素早い獣はシャルの食べかけのサンドイッチを奪い逃げていく。まぁこんなところだしお腹が空いてたんだろう。捕まえようとシャルが魔法を使おうとしたがすぐに止める。



「シャル、あの子もお腹が空いていたんだよ。パパの分をあげるから許してあげて」


「うー…………じゃあこれ、パパと半分こするー」



 そういってシャルは俺が渡したサンドイッチを半分にして渡してきた。何この子……いい子過ぎない? 過酷な教育でも受けさせてたの?



「なんだいその目は。僕たちじゃ子供一人まともに育てることもできないと思ってたの」

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