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127話 『新たなる旅立ち』

「みんな、準備はいいな?」



 あのときは理不尽にも銜えられたまま運ばれたが……今日こそ俺は空を、世界を飛ぶッ!!



「さぁいくぞ!」



 声を合図にルークは力強く翼をはばたかせると勢いよく空へ飛びあがる。これが空に生きる者たちの世界――何も遮るものがなく地平線まで見渡せる。

 まさか竜騎士でもないのにドラゴンに乗って空を飛べる日がくるとは感無量だ……。魔界にも空を飛ぶモンスターはいるがドラゴンと張り合おうなどという命知らずは滅多にいないし、ルークが魔力を使って風除けをしてくれるから安全面も問題ない。



「よーしこのまま城まで一直線だ!!」


「わーーーい!!」



 城の中庭へルークが下降していくと下では兵士が待っていた。



「とうちゃーく!」



 シャルは元気よく立ち上がるとそのまま勢いよく飛び降りていく。そして、まさかのリリアも慣れたように飛び降りた。

 あれ、これってまさか俺も飛ばないとダメ? たぶんスキルはもう使っても大丈夫だと思うが……。



「僕が拾ってあげるから安心して落ちてきなよ」



 くそ、降りるということを忘れていた……しかしシャルがいる手前情けない姿はみせられないぞ。



「あっ、レニ君今そっちに行くから!」


「大丈夫」



 そう、俺にはルークという心強い味方がいる。立ち上がりルークの背を歩いていくと、ルークは俺に合わせゆっくり頭を降ろした。

 あとで綺麗に拭いてやるからな……ほんとごめん!



「よっと」


「ブフッ……その手があるとは、やっぱり君の考えることは面白いね」



 笑われようがこの困難を一人で乗り越えてやったぜ。シャルよ、これがパパの雄姿――



「兵士のおじさんこんにちはー!」


「いらっしゃい、今日も元気いっぱいだね」



 ……やっぱり慣れないことはするもんじゃないな。今度ルークに非常用の綱でもつけておこう。



「レニさん、お体のほうはもう大丈夫なんですか!?」


「おっ、アリスか。ずいぶんと心配をかけたな」



 この子(アリス)もちょっと前までは子供だったのに、今じゃすっかり顔つきも変わりモデルのようだ。レイラさんは他を寄せ付けないクール系だとすれば、アリスは優しさ八割のクール系ってとこだろうか。



「お元気そうでよかった…………さぁ、お姉さまもお待ちしてるので中に入って下さい」


「アリスちゃん遊ぼー!」


「シャル、今日はお姉さまのところへ挨拶にいく約束でしょ」


「あ、そうだった!」



 シャルはアリスと手を繋ぐと嬉しそうに歩き出す。



「お姉さま、皆様をお連れしました」


「はいって」



 おやまぁ……レイラさんもさらに磨きがかかったようだ。クールを通り越して、まるで日本刀のような美しさと妖艶さがみえる。



「レイラさん、色々と本当にお世話になりました」


「これで少しは借りを返せたかしらね」



 少しなんてとんでもない、ルークの面倒も見てくれて……。

 実をいうとルークのことで一つだけ懸念があった。強くなれるきっかけもなく何をどうやって鍛えてやったらいいのかもわからない、俺たちは成長できてもルークが成長するための手段がなかったのだ。


 そこで、レイラさんは召喚士としての修行も兼ねてちょうどいいからと、ルークをベヒーモス相手に戦わせることを提案してくれた。


 そしてさらに、そういうことならとリリアやミント、シャルもまとめてベヒーモス相手に修行すると言い出したらしい。普通に考えればあんな魔獣がそこら辺にいるわけないからそこまでしなくてもいいんじゃないかと思ったんだが……いつ魔人のような相手がきてもいいようにだそうだ。


 魔人だってそこら辺にいないって……俺が寝ている間にみんなはどこまで強くなるつもりだったんだろう……。



 とにかくそんなこんなでレイラさんには逆に恩ができてしまったくらいだ。



「何か困ったことがあればいつでも呼んでください。すぐに飛んできますから」


「うふふ、本当に危なくなったらお願いするわ」



 今の俺にはみんながいるから旅を再開したとしても来ようと思えばすぐにこれる。最後の談笑をしているとリッドさんからお呼びがかかった。

 そういえばエディたちの件もちゃんとしておかないと……話には聞いていたがまだ子供なのに大変だっただろう。


 リッドさんに連れられ別室に入ると二人は土下座して謝りだした。うーん、正直誰が悪いかといわれれば特に誰が悪い訳でもないんだが。


【ものまね士:状態(エディ:盗賊)】



「エディの職業は盗賊か」


「なんでそれを……」


「で、シェリーは――人形使いか」



 なるほど、使い方次第でいくらでも化けそうな職業だな。



「エディ、お前は義賊になれ」


「義賊……?」


「お前は人の痛みも悲しみも知ったはずだ。これからは盗賊という職業を生かして人を助けろ」


「で、でも俺は罪人だから……」


「んなもん知るか、罪人が人を助けて何が悪い?」



 少し強引だがこれで言い返すことはできないだろう。あとはシェリーだな。



「シェリー、人形使いってのはか弱いように見えてとても強く厄介な強さがある」


「人形を動かすだけなのに?」


「職業ってのは成長するんだ、いくらでも可能性は広がる。いつかはエディに負けないくらい強くなることも、それこそ守ることだってできるはずだ」



 何か思うところがあるようで二人は少し考えごとをしている。



「いいか二人共、済んだことを忘れろとは言わない。もし俺の腕を思うならその分……これからは人を助けるんだ。そうすれば自分を助けてくれる仲間も自ずと増えていく」



 っとまぁ、それっぽいことは言ったけど素直に聞けるわけないと思うし、あとはリッドさんに任せてしまおう。

 最後に一言、頑張れよと握手を交わすと俺は部屋をあとにした。



「それじゃみんな、そろそろ行くとしよう」


「レイラさん、アリス……本当にお世話になりました」


「なりました!」



 全員がルークに乗りこむと大きな翼を広げる。まるで成長した自分を見せつけているようだ。



「グォォオオオオオオオ!!」



 ルークなりのお別れだ。咆哮をあげると一気に空へと飛び立った。先の長い地平線を見ているとミントがやってきた。



「ねぇ次はどこにいくんだい?」


「それはな……」

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