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124話 『叶う願い、叶える未来』

 レニ君に変化がないことがわかり落ち込んでいると、ルーちゃんの上に乗ったミントが現れた。



「きたね、ちょっとそこに正座してよ」


「クゥ~」



 来て早々なぜか正座を促され流れでその場に座る。下は絨毯があり痛くないし、ちょうどルーちゃんとミントと同じ目線になり、椅子に座るよりも話しやすい。



「さぁ問題です、なんで僕たちは怒ってるのでしょうか?!」


「クゥッ!」



 さっきから怒ってるのか楽しんでるのか全然わからない。ルーちゃんもたぶん怒って? いるとは思うのだが。どうやら問題に答えなくてはならないみたいだ。しかしまったくもって検討がつかない。



「う~ん…………そろそろヒントくらい教えて」


「そんなに気づかないものなの?」


「だってわかんないよ、何かあるなら言ってもらわないと!!」



 いまいちピンとこない私にしびれを切らしたのか、ミントはため息をついた。アインさんが父だったということはもう伝えてある。ほかにあるとすれば……レニ君のことくらいだけど、あれは私が決めなきゃいけないことなんだ。



「君の親父さんに全部聞いた」


「えっ」


「そんなに悩んでるなら相談くらいしてくれていいと思わない?」



 そうだった……自分が決めなければとずっと一人で悩んでいた。ミントの言う通りこんなときだからこそ仲間を頼るべきなんじゃないのか……ここまで一緒に旅をしてきた仲間なんだから。



「ごめん……また迷惑かけちゃった」


「ま、今回は事情が事情だし多めにみてあげるよ」


「ねぇ、私どうしたらいいのかな?」


「そんなのあいつに聞けばいいじゃん」



 そういってミントはいつもと変わらない姿で眠っているレニ君をみた。



「僕たちは助けたいから助ける。そのあとで文句があるなら言えっていうんだ、さっきの君みたいに」



 ミントはわざとらしく両手で目を吊り上げ怒った真似をする。



「ふふふ、レニ君に文句を言われたら謝らきゃ」


「そのときはみんなで土下座だね」


「クゥ~」


「もちろん君もだよ、自分だけ逃げようとしてもダメだからね」



 私たちは伝えなければわからないことが多い。私は助けたい、もしそれを彼が拒んでいたとしても!

 私はその夜、父の元へと向かった。




 * * * * * * * * * * * *




「どうやら決心は固まったようだね」


「彼を……レニ君を助ける方法を教えて下さい」



 もう迷わない、私の運命がどうだろうと未来は自分で決める。



「わかった。といっても何も難しいことはない、彼を信じともに過ごすだけだ」


「それだけ……ですか?」



 もっと辛い試練というか、苦行のようなものを予想していたが思いのほか簡単そうなことをいわれてしまった。これなら別に悩ませられる必要もなかったような気がするけど。



「はっきり言うがいつになるのかは私も知らない」


「大丈夫です、昔もこんなことがあったので」



 懐かしい思い出――レニ君が目覚めなくてずっと泣いてた。もうあのまま目を覚ますことなく死ぬんじゃないかと……あの頃に比べればいつか目を覚ますとわかってるだけで何倍も何千倍も心強い。


 思い出すとなぜか恥ずかしくなり笑ってごまかす。



「まったく、一度は『そんな男に娘はやれん』といってみたかったが……そこまで想われているのなら何も言えないな」



 いつもなら反論してるはずだが、なぜか父の言葉には正直な気持ちになっていた。



「あ、あの……お母さんのこと、教えてくれませんか」


「いいだろう。母さんはお転婆でな――いや、ドラゴンに日記をもらっただろう? あれは母さんだ」


「じゃあもしかして竜の巫女って?!」


「ぶっ……あーはっはっはっは!!」



 父は吹き出すと今までにないくらい大声で笑いだした。そして母さんは子どもの頃から一人で旅をしており、父はその途中で出会ったことを教えてくれた。


 お母さんって、こう……なんというかレイラさんやソフィアさんのようなイメージがあったが、聞けば聞くほど自分と似ている部分があることに気づく。しかし、逆にそれが母という存在がいるということをはっきりとしてくれる。


 気づけば大盛り上がり、かなり遅い時間まで話し込んでしまった。



「お父さんはまた旅にでるんだよね」


「あぁ、母さんが待っているからな」



 旅にでればまた会えなくなる……父という存在を実感したからこそ私は今更ながら悲しみがこみあげてきていた。



「あ、あの……最後に頭…………」



 もうこんな歳でいうことじゃないのはわかっている。でも一度だけでもしてほしかった。普通の子どもたちがやってもらっていたように私も…………。

 そんな私の心を汲み取ったのか、それとも自身もそうしたかったのかはわからないが、父は優しく頭を撫でてくれた。



「今まで辛かっただろう……本当によく頑張った」


「うっううぅぅぅ……っ」



 大声で泣く訳にもいかず私は父の胸で必死に声を抑え泣いた。ずっと撫でてくれたその手はとても大きく温かかった……。ひとしきり泣き終えると父は私の手を強く握りしめる。



「リリア、絶対に諦めるんじゃないぞ」


「大丈夫……私はお父さんの子どもだから!」



 それから数日後、父は旅立ち――私たちはというと、レニ君が起きるまでの計画を色々と立てていた。シャルの教育に自分自身の鍛錬、それに料理だってもう少しできるようにしなければ。


 お金だって今はそこまで減ってはいないがこれから稼ぐ方法を見つけないといけないし、それにいつまでもここにいるわけにもいかない、どこか住めそうな場所を探そう。いつか彼が目覚める日を信じて。



 安心して休んでてね…………私が、私たちがそばにいるから。

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