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117話 『決死の覚悟』

 ここは………………



『起きた?』


『わっ?! あ、あなたは……えっと』


『私の名はシトリー、会うのは二度目ね』


『あのー……ここはいったい……あ、ごめんなさい! 私リリアっていいます!』


『知ってるわよ、あなたのことは全部見てたから』



 見てたって――ああああああ?! この人もしかして、また砂漠の国のときみたいに暴れようとしてるんじゃ!!



『さ、させません! 今度は身体を奪おうとしたって絶対に負けないんだから!』



 あのときは私が弱かったせいでみんなに迷惑をかけてしまった……だけど、もっと強くなるって誓ったんだ。もうレニ君には心配かけさせない。



『あら、あれはあなたが願ったのよ。まぁいいわ、そんなことよりもあなた、そろそろ死ぬわよ』


『えっ急に何を…………あー! そんなことで騙そうとしても無駄よ! 騙されないんだから!!』


『呑気なものね、ほら』



 シトリーが指を鳴らすとなぜか私が血まみれで倒れている景色が浮かびあがってくる。



「ミントさん、リリアさんは大丈夫なんですか?!」


「あとはどうなるかなんて僕も知らない……こんなときにあのバカはどこにいったんだよ!! もう!!」


「クウゥ……」



 あれ、みんな……そういえば私はシャルと呼ばれていた女の子を止めるためにレニ君と一緒に戦ってて……。


 黒い竜がベヒーモスに噛みつき投げ飛ばす。すぐにシャルが魔法で攻撃をするがまったく怯んでいない。竜が翼を広げると空に暗雲が垂れ込め、崩壊した山々と割れた大地はまるでこれからの世界の行く末を暗示してるような光景だった。



『あれ、待って――この男性が言ってた少年って……あの竜がレニ君ってこと?!』


『あの子、とんでもない職業(モノ)を持たされたようね』


『止めなきゃ!! レニ君はきっとこんなこと望んでいない!』


『このまま死んでいくあなたに何ができるわけ? それにいったとしても状況は変わらないわ』



 確かに……あんな怪物たちを相手に私がいったところで何かができるわけでも――――




 はい鞄、ちょっと汚れちゃったけど………………ほら、もう泣かないで


 あいつも根は悪い奴じゃないんだ。よければ徐々にでいい、仲良くしてくれないか


 もう大丈夫だ…………ほんとに、お疲れ様


 やったな! おめでとう、リリア


 あぁ、おやすみ……俺がずっと側についてるから……安心して……



 そうだった、レニ君はいつも諦めなかった。もし今、逆の立場だったとしても彼は……きっと、いや、絶対に諦めない。



『行かなきゃ……ここで諦めたら私は、私を一生許せない!!』


『あら、戻っても殺されるだけよ』


『それでも! それでも止めてみせる!! だからあなたの力を貸して――いえ、貸しなさい!!!!』


『ふふふ、ワガママこそが魔法使いの本質とはよくいったものね。いいわ、手を貸してあげる』


『ほんとに?! あ、でもあとでお礼をしなきゃいけないから……今度少しだけこの身体を使わせます……でも絶対誰も傷つけないって約束して!!』


『あら、それじゃあ契約になるわね。私も頑張らなくっちゃ』


『まずは早くみんなのところに戻らないと』


『私の力を使うんでしょ、願いなさい。あのとき(・・・・)のように、今度は自分の意志で』



 今度こそ私がみんなを、絶対に彼を助ける…………だからあの竜にも負けない力を、お願い!!


〖タノミゴト〗




 * * * * * * * * * * * *




 いつの間にか途切れていた意識は徐々にはっきりしていき、それと同時に聞きなれた声が耳にはいってくる。



「みんな離れて! こいつは別人だ!!」



 ドラゴンの子に妖精、前にも見た光景だな。さてと、腹の傷も癒えたことだし決着をつけるとするか……シャルのこともあるからね。



「あなたたち、この子に力を貸してくれないかしら」


「な、何をいってる?! お前は誰だ!」


「そういえば自己紹介がまだだったわね。私はシトリー、あそこで戦ってる子どもと同じ魔人よ」


「リリアさんは無事なんですか!」


「安心なさい、彼女はここにいるわ」



 そう、私は今身体の主導権を借りてはいるが彼女(リリア)も一緒にいる。おっと、説得なら彼女のほうが早いか。



「みんな、私は大丈夫。それよりレニ君を止めるから力を貸してほしいの」


「クルルルルルル」


「ルーク危ない……って、ほ、本当に君なの? あいつを助けるってどこにいるんだよ」


「ルーちゃん心配かけてごめんね。レニ君はあの竜の中よ――そうですよね?」



 念のため先駆者に確認をするとゆっくりと頷いた。



「はぁッ?! なんであんなことになってるんだよ!」


「詳しくはわからないけど、前にも似たようなことがあったでしょ。たぶんそのせいだと思う」


「あの島のときか……でもどうすんのさ、ベヒーモスは召喚獣だから大丈夫だけど、もう一人の魔人だってかなりヤバいよ」



 あの子はシトリーが止めるって言ってたから信じるしかない、作戦はシトリーに任せよう。



「シャルは私が止めるわ。あなたたちは一瞬だけ囮になってくれればいい――ただし、死ぬ覚悟はしてちょうだい」


「ふん、そんなの言われなくてもとっくにできてるよ! あのバカをさっさと連れ帰るよ!」


「クゥーーー!!」


「やっと借りが返せそうね。アリス、あなたはこの方を守って。万が一があったら魔界を……城をお願い」


「お姉さま……大丈夫、ここは任せてください! だから絶対にレニさんを! みんな、無事に帰ってきてください!」



 仲間に恵まれたのね……この子たちならあの子を任せられるかもしれない。



「それじゃいくわよ、死に物狂いでついてきなさい」

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