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113話 『創られた世界』

 魔法陣から出た俺たちの前にはまるで宇宙のような空間が広がっていた。



「私の名はアイン、巻き込んでしまってすまないな」


「い、いえ。あの、あなたはなぜ先駆者として先回りを――それにあの子はいったい? あ、俺はレニです」



 次から次へと聞きたいことがありすぎて言葉がうまくでてこない。もう問題ばかりで何から知ればいいのかもわからん!



「君は魔法使いの歴史をどこまで知っている?」


「オーランの手記で何かがあったことくらいしか、俺たちは魔術学校にあった絵日記でこの時代に飛ばされたんです」


「そうか……やはり彼女の選択は正しかったんだな……」



 いったい誰のことだろう、まさかさっきの女の子のことじゃないだろうし……あれこれ聞きすぎてもすでにパンク気味だからとりあえず何か話してもらえるまで黙っておくか。


 そのまま歩き続けるといつの間にか何もない空間に焚き火のようなものが見え始める。そこへ着くとアインさんは砂時計を取り出し逆にした。中に入った砂のような物体は落ちることなく上に留まっている。



「……少し、魔法使いの歴史について教えよう」



 俺は促されるようにその場に座りアインさんの言葉に耳を傾けた。




 魔法使いの一族はなぜ人里に出ず暮らしていたのか――彼らは人という生き物がもつ欲への危険性を知っていたんだ。そこへオーランがきた。


 賢者だった彼は魔法使いに何度も会いにいった――――純粋な魔法に対する探究心からだ。しかし彼は世間の目を見極められてはいなかった。魔術が常識と認知されてきた世間では魔法という無限の可能性を持つ存在を危険と判断、すぐに排除しようと動いた。



「まさかそれって…………魔女狩りですか……ッ?!」


「その通り、戦いを選ばなかった一族は各地へと身を隠した。だが一人の子どもが逃げ遅れ捕まった」




 オーランはすぐにその子どもを解放するよう説得を試みたが、魔法使いという未知の存在を恐れた人々は、子どもを解放するとみせかけ助けにきた無抵抗の両親ごと子どもを殺そうとした。


 子どもを庇い重傷を負った両親は死の間際、泣き叫ぶ子どもに二つの魔法をかけた……一つは記憶を完全に消す魔法、そしてもう一つは……ここ、次元回廊に閉じ込める魔法だ。



「もしかしてその子どもって…………」


「あぁ、彼女の名前はシャル。当時から時が止まったまま生き続けている」



 オーランって魔術学校の創設者だろ、それからずっと生き続けてるって何歳だよ…………しかも、よりによってこんなところに閉じ込めるなんて……。



「なんでわざわざシャルの親はこんなところに?」


「いつか平和になった世界で生きてほしいと願ったんだろう。しかし、皮肉にもそれが世界を狂わすこととなった」


「い、いったい何が起きたんですか……?」


「記憶を消され、次元回廊に閉じ込められたシャルに≪神の祝福≫が起きたのだ」



 それは祝福といっていいのか……誰が名付けたかわからないが神のきまぐれのほうがいいセンスしてると思うぞ。もう変えたほうがいいよ、ほんとに。




 魔法使いとなったシャルは記憶もなくここで過ごしていた。だが自分と同じ生物がほかにもいるのではないかと考えたんだろう。一時的にだが、魔法を使うことによってここを抜け出すことに成功した。


 そして世界を巡ってはここに戻ることを繰り返していたある日、神という存在を知り自分に当てはめ、一部の人々は願いを叶えてくれるシャルを神と――そして絶望を運んでくる悪魔と呼び崇めた。


 魔法使いというのは創造力が大事だ、記憶がなく善悪を知らず生きてきたシャルには、魔法は願えば叶うという絶対的なものとなっていった。


 しかし、何度も力を使ってるうちに容易にここを出ることができなくなっていたんだろう。いつからか予言の本を対象の元に置き、その力で願いを叶えるようになっていった。



「預言の本はシャルが作っていたのか……でも、これからどうするんですか? リリアの居場所もわからないし……」


「そのためにこれがある」



 その手に持った砂時計にいったい何の意味があるんだ。もしかして占いの道具とか……でも中身はさっきから止まって反応がないし……大丈夫なんだろうか。



「――動いたか、私たちも急ごう」



 いや、なんにも反応してませんが……本当に大丈夫なのかこの人……。しかしこの場で頼れるのはアインさんしかいない………………信じるしかないな。


 俺たちは反応を示したらしい方向へと急いだ。何もない空間を進んでいくと――



「あれは……リリア、おい大丈夫か?!」



 気づくと魔法陣が現れ中央にリリアが倒れていた。走って近寄ろうとするが近寄れない。



「も~こんなとこまできたの?」


「シャル、その子は君の母親ではない。解放するんだ」


「ううんいるもん、ほらちゃ~んとここにいる」



 だからそれはリリアであって母親じゃない……というか記憶を無くしてるなら母親という存在を知らないはずだが。アインさんが説得を試みてるがシャルはまったく耳をかさない。



「終わりにするんだ、これ以上犠牲を増やすんじゃない」


「うるさいなぁもう! 邪魔をするならみんな出ていけーーーー!!」



 シャルがくるりと回ると魔法陣が展開される――しかしアインさんはすぐにその魔法陣へ小さな鉱石を投げいれると魔法陣は崩れ消えていった。



「もうなんで壊すのー?!」



 そういって地団駄を踏んでいるシャルをしり目にアインさんは短剣に手をかけた。



「レニ君、隙をみてリリアを助けてくれ。私は……シャルを殺す」


「えっ?! まだ子どもですよ!」


「誰かが止めなければ取り返しのつかないことになるんだ。それにもはや……話の通じる相手ではない」



 いや、でも子どもってそういうもんで――そんな甘いことを考えている俺にシャルは次々に魔法を使いだした。

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