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111話 『対抗策』

「このモンスター……さてはお前、テイマーか?」


「さぁてどうだろな」


「レニさん気をつけて! この子かなり強いです!」


「大丈夫だ、俺たちに任せておけ」



 今回の俺は完璧に準備をさせてもらった。


 リッドさんがなぜ魔界にきた俺たちをすぐに見つけることができたのか――それは【蟲使い】で俺たちをみかけ次第、知らせるようにしていたからだ。


 だから俺は同じようにレイラさんたちの状況をみていた……そして本の内容もすべてわかっている。ついさっきまでレイラさんたちとずっと一緒(・・)にいたミントが知らせてくれたから。


 【蟲使い】で俺は外から、そしてミントは姿を消し中から、そこにクマの能力で連絡を取り合うことによってリアルタイムで作戦会議を行っていたのだ。


 ずるい? なんとでもいうがいい、しょせん伝説の足元にも及ばない作り話の本など俺が徹底的に破壊してやる!



「リリア、ルーク、いくぞ!」


「ククゥ!」


「うん!」


「「はじめの鬼さん、だ~~~れだ?!」」



 俺たちはエディを黙って見つめる。



「な、なんだお前ら?! なめやがって!!!!」


「逃げろーーーー!!」



 エディが声を上げた瞬間俺たちは一目散に散らばる。思った通りだ、エディはわざと遅れたリリアを追いかけるが絶妙に追いつけていない。


 レイラさんたちの戦いでおかしな点がいくつかあった――そのなかでも一番目を引いたのはアリスだ。なぜアリスがあれほど強いエディ相手に長く戦えたのか、本の内容を考えればすぐに合点がいった。


 強者が弱者になればいいという文、それに強者相手に勝つということ、要するに元からこっちが弱者の扱いになってれば力は発揮できない。今の俺たちは(エディ)という絶対的な強者相手に逃げることしかできない状態だ。


 隙をみてルークがアリスを背に乗せレイラさんの元へ連れていく。そして戻ってくると今度は俺が王を担ぎレイラさんの元へ届けた。



「ほいっと、みんなはここで待っててくれ」


「クマー」


「ちょ、ちょっとあれは何をしてるのよ?!」



 すぐ戻ろうとした俺がレイラさんに呼び止められるとミントが姿を現す。



「見てわかるでしょ、逃げてるんだ」


「そういうこと! ミント、クマと一緒にみんなに回復薬を頼む。あとはあの子(シェリー)だな」



 さっさと俺も戻らないといけないしシェリーはリッドに任せれば大丈夫だろう。



「妖精が人間といるだと……」


「王様、勘違いしないでよ。僕はあいつと旅をしてるだけで人間と手を組んだとかじゃないから」


「父上、ご安心ください。彼らがいっていた少年たちです」



 俺たちが逃げ続けて随分立つ――エディが息を切らし始めた。本来ならここで攻撃したい……だが弱者は手を出さない。寸分の反抗心を持たない、それが立派な弱者魂というものだ!!



「くそ、おい! 逃げてばかりいるな、戦え……ッ!」


「リリア、ルーク、絶対に攻撃はするなよ」


「うん!」


「クゥー」



 エディは俺たちに追いつけないとわかると立ち止まり、そしてそれに反応するように手に持った本が光始める。



「もうすぐだったのにまたやり直しか」



 そういうとエディは本を持っていた左腕を剣で切り落とした。落ちた手の中から本が奇妙に動き出す……エディの横に添うように浮くと発光し腕の出血が止まる。



「レニ君、あの子腕を……!」


「ながされるな! 少しでも劣勢になって立場を変えようとしてるんだ!」



 まさか自分の腕を切り落としてくるとはな――しかもリリアとルークに迫る動きが断然早くなった。やはり強い側を弱く、弱い側を強くさせてる……しかしここまでだ。



「二人とも下がれ。エディ、お前の負けだ」


「やっと戦う気になったか?! だけど俺にはこれがある、負けることはないぞ!」



 予言の本か……持ち主には希望であり、そして呪いだな。



「残念だが本があろうとなかろうと俺はお前に勝てない。そしてお前が勝つこともない」



 何を言ってるんだこいつ、と言いたそうな目で見てくるが決して煽っているわけではない。俺は大まじめだ!



「ふ……っざけるなあああああああああ!!」


【ものまね士:状態エディ 出血】



 エディは躍起になって剣を振るう――しかし自分とまったく同じ力が相手では強くなろうが弱くなろうが立場は変わらない。そして俺の剣が折れることは絶対にない。


 何度も剣を交えるとエディを弱らせようとしているのか本が出血を促す。



「おい、そのままだと本当に死ぬぞ」


「うるさいッ! うまくいってた……契約ももうすぐだったんだ…………それなのにッ!」



 本に書いてあった悪魔との契約ってやつか。いったい何が起こるのかわからないがろくでもないのは間違いない。それでもエディは出血しながらさらに剣を振り続ける。



「お前さえいなければ俺は!!」





「フンフフンフ~ン♪」





 それは突如現れた――軽快な鼻歌が聞こえすぐに後ろを振り返ると小さな女の子が歩いている。



「なッ……どこから現れた?!」


「レニ君! その子、真実の鏡(ファクトミラー)でみた……!」


「やった……俺の勝ちだ! おい、力をくれ、誰にも負けない強い力を!!」



 エディが咄嗟に女の子へと懇願する。しかし女の子は頭を左右に揺らしながら鼻歌を歌い続けリリアをみると指を指した。



「あーーーー!! やっと見つけたあ!」

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