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106話 『原点回帰』

「あの……ほんとすいません、リリアが言いいたかったことっていったい……」



 なぜか俺は雰囲気に負け正座をしていた。横ではルークが一緒に座っている。



「えー?! あれだけやっといてわからないの?! 君がバカなのか利口なのかわからなくなってきたよ」


「ちょっと難しい問題だったから仕方ないわね」


「いい機会だし僕が教えてあげるよ」


「よ、よろしくお願いします」



 一番面倒なやつにマウントをとられたが仕方ない。ミントは口は悪いが、遠まわしにしたりしないため直線的でわかりやすい。



「初めて僕と会ったときのこと覚えてる? いくら平和ボケした僕でも魔法には自信があってね、だいたい初見のモンスターや人間はあれで逃げるんだよ」



 そりゃあそうだろ。あんなダメージもなく倒せるかもわからないやつを相手にするなんてよっぽどのバカか命知らずくらいだ。



「あれは確かに脅威だった。ルークがいなければ詰んでたかもしれないし危なかったよ」


「クルルルルッ」



 ルークの頭を撫でると気持ちよさそうにしている。あそこに俺だけだったらどうすることもできなかったしな。



「あのときの君は魔力もないのに立ち向かってきた。確かに君の職業とドラゴンという組み合わせを考えれば納得も行くけど、ルークが負けることだって想定できたはずだよ。むしろ――今の君ならそう考えて逃げるね」


「はっ? なんでそんなことわかるんだよ」


「わかるよ。だって今の君は少しでも危険があるとあの子(リリア)の心配をしてすぐ逃げだすもん」


「それはリリアに危険な目にあってほしくなくて」


「それってあの子が望んだことなの? 守ってくれって頼まれた?」


「えっ、いや……そんなことはないが」


あの子(リリア)が弱いから? それとも過保護? どちらにせよ君がやってきたのはそういうことさ」



 でも、砂漠の国であったように取り返しがつかないことが起これば俺は……。あぁだこうだと頭の中で考えているとレイラさんが口を開いた。



「あなたは守ってるつもりでも、リリアちゃんからすれば自分が足を引っ張っているようにみえるのよ。ベヒーモスにすら突っ込んでいける人間が急に腑抜けたんですものね」


「ふ、腑抜けって……危険なのに変わりはないですしどうしろって言うんですか」


「そんなの決まってるでしょ。構わず前のようにしてればいいのよ」


「まったく、僕たちは君が守ってくれるからついてきてるんじゃないんだよ? なんのためにここまでついてきたのか考えてみなよ」



 ミントは俺の飯を食べたいからだろ……ルークは成り行きでテイムしちゃったし、リリアは両親を探すため……。


 昔のように……私の憧れていたあの頃に戻って……



「……昔……俺、何してたっけ」



 そうだ、新しい世界にきて伝説を追いかけて……そのついでにリリアを助けて、まさかのドラゴンを助けることにもなって……ついでばかりで人助けとか、今思えばとんでもなく酷いんじゃないか。



「ヤバい、思い出したら結構バカやってたかもしれん」


「それでいいのよ」


「簡単にいいますけど結構汚い人間ですよ……俺」


「今更何をいうのさ。この世の生物で綺麗な生き物なんてユニコーンくらいじゃない?」



 ユニコーンといえばあの伝説とされる幻獣の一匹で綺麗な心を持つ乙女じゃなければ会うことすら不可能と言われている……伝説の生物!!



「ミントは会ったことあるのか?! ユニコーンに!」


「あるわけないでしょ……なんでそこに食いつくのさ。とにかく、僕らは全員死のうが勝手に君についてきてるだけなんだから、もっと気楽にしなよ」


「そう言われてもだなぁ」


「一つ面白い話をするわ。ヴァイスも付き合いたての頃あなたのようになったときがあったのよ」


「あんなにできた人がですか? でも、レイラさんだって十分強かっただろうしすぐに納得してもらえたんじゃ?」


「それがヴァイスは『君に何かあればどうするんだ』っていってなかなか旅に出なかったのよ。だから――」


「だから……?」


「さっきのリリアちゃんのように勝負で決めることにしたの。正面からじゃ勝てなかったから、触媒を借りてベヒーモスをぶつけてやったわ」


「ッ?!」



 な、なんて酷いことを……ヴァイスさん、よく生きてたな。ミントがめちゃくちゃ引いてる……。



「でもそのおかげでお互い踏ん切りがついたのよ。ヴァイスが亡くなったときも、もちろん悲しみに暮れはしたけどあの人についていった後悔は微塵もなかった」


「そういうものなんでしょうか……」



 旅は道連れとはいうが、そこまで割り切ってしまっていいものなのかな。



「僕からすれば見た目と中身が合わない君のほうが気味が悪いけどね。もう少し見た目通りに動いててもらったほうが助かるんだけど」


「ははは、誉め言葉として受け取っておくよ。とりあえずリリアが戻ったら謝るか」


「そんなのいらないって、普段通りにしてればいいから」



 しばらくしてリリアとアリスが戻ってくる。どうにも照れ臭い気がするが……とりあえず今後はリリアの意思もちゃんと聞いてあげよう……独りよがりだけは注意すべきだな。

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