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ざまぁヒロインは共闘するしかない!

「遅いですよ。私を待たせていいのはアリアだけです」


恐いお兄さんが射殺さんばかりに私を睨む

悪魔に魂を売った見返りがまさかの『共闘』だったとは誰が予想できるというのだろうか

1人で試験勉強が出来なかった自分の脳みそを呪いたい気分だ

因みに場所は学園の図書室の禁書棚コーナー

特別な鍵が無いと入れない場所だ


「フラーはアリア以外の人間にもう少し優しくなった方がいいと思うよ」

「鈴が頭の中でなりすぎて、人の話がちゃんと聞き取れないのですか?」

「……すいません。次からはもっと早く来ます」


事の発端は、高等部に入るための勉強の時に起こった

フラーが怒髪天の如く我が家にやって来たのだ

理由は簡単で、アリアがまたしても殿下に嫌味を言われたらしい

ケツの穴の小さな男である

その話を聞きながらキリオの到着を1人待っていたらフラーが私の勉強の効率の悪さに気が付いたのだ

問題の読解力、応用力、瞬発力

どれも動きが鈍いから覚えられないのだと力説し

なんなら自分が入試の日まで面倒を見ようかと名乗り出てくれた


当時の私は単純に感動した

これが本物の友情なのだと涙を流してお願いした

フラーの熱血スパルタ教育のお陰で無事、学園に合格した私は

意気揚々とフラーにお礼の品を持って訪ねる事にした

それが間違いだったのだ

お礼の品を見たフラーは悪魔の様な微笑みで言い放った


「お礼は労働で返してください」


私はフリーズし、何の事か一瞬分からず困惑していると

さらに笑みを深くして言うのだ


「お前は俺の駒になれって言ってんだよ」


口悪!

友情は何処行ったんだと思ったが

冷静に考えれば、元からこんな奴だったとも思いなおす

そもそも、あんなにあっさり勉強を教えてくれる所に疑問を持つべきだったのに

簡単に信じた自分も悪かったのだ


「……何をさせる気なの?」

「お前にしかできない事だよ」

「喋り方、すんごく恐いよ」

「俺は元々奴隷だぞ?コレが通常なんだよ」

「……アリアに」

「言いつけたら口縫い付けてやるぞ」

「すいません」


このやり取りが2ヵ月前

その後、演技レッスンをし入学をしたのだが……

フラーの考えている事はイカレテルとしか思えなかった

そう、フラーはアリアが殿下の婚約者候補脱落になる為に私に一芝居打たせる事にしたのだ

名づけて【頭悪い令嬢アプローチ大作戦】である

ごめん……作戦名は私が勝手に考えた


兎に角、殿下を凋落させ、人生勉強させろとの事らしい

しかも、どうやったのか王室からも許可をもらってきて

どれだけ皇太子として資質があるのか一緒にチェックするらしい

因みにこの作戦を知っているのは

王様、宰相、近衛団長、アリアの父キンドレッド伯爵様(財務大臣)、父ハイネリーク男爵、王家の影の皆さん、学園長、フラー、私という面々だ


他の婚約者候補の家紋に通達しなかったのは、家紋や本人が婚約者に成りたいと思っているから。キンドレッド伯爵家は実は何度も辞退をお願いしているが王家が留まる様にお願いしているらしい

王妃様がどうしてもアリアが良いと言うようだ。気持ちは分かる

ならば、殿下が婚約者候補達を嫌がればいいじゃん!みたいになり

フラーの作戦を王家に伝えたらしい

そうしたら、国王もノリノリで乗っかってきて

あれよあれよという間に準備が整い今日に至る

だから、伯爵も仕掛ける側なのだが……私の荷が重すぎやしないかい?

因みに、我が家はというと

上手くいったら商会に融通をかなりしてもらえる様で父は二つ返事でOKした

学費を出し渋ったくせに糞である


でも、私的にもコレはチャンスである

『ざまぁヒロイン』になりたくない私は

王家の犬になる事で大義名分を貰い

妙な嫉妬や嫌がらせからの死亡フラグを無くしたかったのだ

また、ある程度の強制力もコレで何とか回避の道が見えてくるのではないかとも思っている

殿下と断罪の後国外追放などもっての外

だから、フラーの駒になる事を選んだ


しかし、彼等の注文は私の想像を超えていた


「あのさぁ……この台本の台詞何とかならない?」

「何がダメなんだ?」

「頭悪い話し方すぎるよ。私、奨学金貰う人間なんだよ?こんな話し方ありえない」

「まぁ……でも、その台本は国王陛下の指示だから仕方ないんじゃないか?殿下はお子様だから守ってやりたくなる子がタイプらしいぞ」

「この、頭にリボンつけるのもいる?」

「殿下の愛らしい女の子イメージらしい」

「この御飯の指示も辛い。何で主食がパンケーキなの?肉食べないと頭働かないよ。米も」

「砂糖で作られている体がイメージなんだ」

「後、好きな飲み物がカフェオレって……ブラックコーヒーしか飲めないんだけど」

「可愛いのマストアイテムだと宰相殿が言っていた」

「お前ら、女に免疫絶対無いだろ?」

「俺に言うな。言うなら国の中枢に言え」


はぁぁぁぁぁぁぁぁと深い溜息を落とす

その間、フラーは私の髪にリボンを巻き付けていく


「こんな感じに毎朝髪にリボンを編み込むんだぞ」

「……できねぇよ」

「なら、このリボンのカチューシャをつけろ」

「こめかみが痛くなる」

「王命だ。やれ」


その後は2時間たっぷり喋り方の練習をさせられ

部屋に帰った瞬間、意識を失った様に眠りに就いたのは言うまでもない


こうして私の『ざまぁヒロイン2日目』は終わったのだ



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