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ざまぁヒロインは友情を育みたい!

秘密のお茶会がスタートして早くも今回で10回目になろうとしている

毎週、決まった曜日の決まった時間に会っているのだから

10回なんてあっと言う間だ

私達は皆年が近い事とアリアの熱烈な希望で名前を呼び合う仲になった

今日は、伯爵邸にあるアリアご自慢の温室でまったり4人で寛いでいる


「カルラ。女性なのですから足は開いて座ってはダメよ」

優しく諭すように話すアリアことアリアローズ・キンドレッド伯爵令嬢

黒髪さらさらロングヘアで腰まで伸びている髪は艶めきが凄い

目は紫色で光が入ると少し白っぽくなる

初めてのお茶会から徐々に高飛車な態度は鳴りを潜めていき

今や普通に穏やかなご令嬢と化している

未だに緊張したり、初めての相手には高圧的になってしまうのが悩みらしい

美しく整い過ぎた容姿も迫力が増すポイントなのだろう

齢10歳にして既に淑女の片鱗を感じる


「アリア。カルラに何を言っても無駄ですよ。直す気が無いんですから」

興味なさげに話すのはアリアの従者のフラー12歳

水色の髪に藍色の目

肌はそれらを際立たせるように白い

元々は奴隷だったらしいが、アリアが強引に連れ帰り

そのまま従者にしたらしい

子供なのに剣術の才能があるらしく

メンバーの中では恐らく一番腕が立つ

しかし……こんなに明るいキャラクターだったかと疑問にも思う


「フラーのいれた紅茶は本当に美味しいね!俺も練習しているんだけど上手くならないよ」

ニコニコしながら食を堪能しているのは私のバディかつ幼馴染のキリオ

濃い茶色の髪に茶色の目

THE平民って風貌だ

私と一緒に常々走り回っているせいか日焼けした肌をしている

11歳の彼は思っていたより順応性があったようで

緊張する事もなく、空間を楽しんでいるようだ

商人には必要なスキルだからこの先の事を考えるとワクワクする

最近では身長も伸びてきて男っぽくなってきた


「温室の芝生って最高だね!今日だけは許してアリア」

ヘラヘラ笑いながら話している私は

茶色の髪に深緑色の目をした私もTHE平民って感じ

その上厚かましい

同じ10歳とは思えぬ私の様子にアリアは笑って許してくれるので調子に乗るばかりだ

最近ではアリアを巻き込んで一緒に芝生に寝転んだりもする

いつの日か、伯爵家から我が家へクレームが入るのではないかと

内心ヒヤヒヤしているが

伯爵も伯爵夫人もアリアの明るい笑顔が見れると喜んでいるらしい

金持ちは心が広いのだと感心する


お喋りしながらクッキーを摘まんでいるとアリアが少し疲れた顔をする


「どうしたの?何か悩み?」

「うん。実は私皇太子殿下の婚約者候補の1人で、御妃教育にほぼ毎日行っているの」

「アリアって大変なんだな」

「アリアは3人いる候補者の中で殿下と同い年で家紋は1番低いのだけれど、1番優秀なんだ」

「他は誰がいるの?」


アリアは遠い目をしながら教えてくれた


メンバーの中で1番の上位貴族はスザンナ・マートン侯爵令嬢

しかし年齢が8歳と幼く

御妃教育に早くも脱落しそうなのだとか……

親は何が何でも婚約者に選ばれたいのだが

本人は嫌気がさしているらしい


次に控えるのはココネット・タリヤドール辺境伯令嬢

年齢は11歳

殿下の1つ年上で、本人も家紋も婚約者になる事を強く望んでいる

ただ、ダンスは素晴らしいが座学が苦手で社交も不安視されているらしい

根が素直過ぎて騙されやすいのではとの見解の様だ


そして、3人目がアリアなのだが……

10歳にしてハイスペックガールの彼女は王妃のお気に入りになってしまったらしく

最近では露骨に贔屓されるようだ

家紋が1番低いと云えども王家への嫁入りは可能な立ち位置

教育係達からも皇太子妃に圧す声が上がり始めていた

注目されるとやっかみを受けるわけで、そのせいで心が休まらないという事らしい


「そもそも、私がカルラの事が気になったのは御妃教育が始まったことがきっかけなの」


アリアは少し気まずそうに話し始める


アリアの御妃教育は今で2年目になるらしい

周りの期待が徐々に高まるにつれ

その勉強は日に日に難易度の上がっていった

人知れず涙を流しては歯を食いしばり頑張っていた彼女は弱音を誰にも話さなかった

そんな彼女がある日、心がポキリと折れてしまったらしい

その理由が……


「皇太子殿下に言われたのです。貴女と居ると息が詰まると」


サイドからえらく不穏な空気が漂ってきているがスルーする


アリア曰く

婚約者候補達は定期的に殿下とお茶会をするらしい

義務みたいなのもで、アリア本人は仕方なしに参加していたが

殿下から見れば『どうしても婚約者になりたい人達がゴマすりに来ている』

と感じたらしい

その上アリアはハイスペックガールだ

きっと早くも負い目を感じているのだろう

でも、文句も言わず頑張ってきたアリアの心を傷つけたのは事実だった


その後、様子がおかしい事に気が付いた伯爵様が気分転換にうちの商会に

連れてきたらしい

そしてアリアは、商会に向かう馬車の中で伯爵から私の奇行を色々聞きだし興味を持ったという流れだったようだ


「1番興味を持ったのは他国の子供と友達になって、言葉を覚えたって話。一緒に居たキリオも自然と覚えたと聞いて座学以外に学ぶ方法があるのだと気付かされたの」

「んな大袈裟な」

「アリア。カルラはお菓子の値切り交渉の為に言葉を覚えたんだよ。そんな綺麗な話ではないよ」

「黙れキリオ。アンタも共犯でしょ」

「カルラはある意味現実主義だな」


フラーが笑い飛ばすと、アリアは嬉しそうに頷く

毎回思うけど、アリアが殿下に興味を持てないのは

直ぐ側に絶対的な理解者で味方がもう要るからだと私は思う

言えないけどさ……


「でも、あの日勇気を出して2人を探して良かった。倒れたのはビックリしたけど、お陰でこうやって遊べるようになったし」

「アリアと友達になって私も嬉しいよ。この先、何か困ったことがあったら何でも言って!絶対力になるから!!!」

「微力ながら俺も何か手伝います」

「良かったですねアリア」

「……うん。ありがとう」


目に沢山の涙を浮かべたアリアは天使のように微笑んだ

私は胸が熱くなり、この友情を一生守ろうと心に誓ったのだ




こんな美しい風景が繰り広げられた6年後


私はまさかの形で友情の誓いを実行することになった


あの日に帰って自分に言いたい


人は変わる


環境も状況も変わる


ましてや、幸せになるためならば手段を選ばない択ばない人間もいる


妙な正義感で誓うのではなかったと胸を痛めても時すでに遅し


入学式後、女子寮の自分のベットの上で私は枕に顔を埋めて奇声を発するしかなかった



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