ざまぁヒロインじゃない正ヒロインはもどかしい!③
久しぶりに時間が取れました
書ける喜びに感謝しかないです
アリアは最近もどかしくて仕方がない
理由は実にシンプルだ
どうやらアリアはカルラ・ハイネリーク男爵令嬢に嫌がらせをしているという噂が立っている様だ
しかも、自分の手を汚さず他人に命令してやらせているらしい
アリアにとってそれは青天の霹靂で身に覚えの無い事だった
しかも、内容もどれもこれもしっかり目撃者や目撃証言があり
アリアと仲の良い令嬢やその従者が関わっているとの話だった
そんな事はありえないと思うが、日頃上位貴族の横暴に耐えていた学園内の平民や下級貴族はこぞってこの話を面白可笑しく話した
それが何時しか真実となり、学園中に広がっていったのだ
ある者は話す
アリアがカルラの教科書を故意に魔法の授業の時に燃やしたと
ある者は話す
アリアがカルラの昼食に食堂の人間を買収して毒や異物を入れたと
ある者は話す
アリアがカルラの移動中に階段から突き落としたり、頭上に植木鉢を落としたと
どれもこれも身に覚えはないが、出てくる証言に終わりが見えない
そうこうしている内にとうとうカルラが腕に大怪我をしてしまった
乗馬の授業中に興奮した馬に振り落とされ肩と骨折したのだ
後々調べたら、鐙に針が仕込んであってソコから薬物反応が検出したらしい
コレは流石に重大事件となり、しばらくの間生徒会のメンバーがカルラの身辺警護に当たる事になった
そして、生徒会の指名で魔法に長けたアズール先生も彼等の手が回らない時に身辺警護に協力する事となった
この事態を面白く思わない人間は多数いた
特に、第1皇子の婚約者を選ぶ大切な時期に
平民出身の成金男爵令嬢がミハエルの周りをウロウロするワケだ
名の上がっている3家と関わりのある家紋の者はそのストレスの行き場に困惑していた
そんな背景があるというのにカルラ本人と言えば……
「エルゥ!一緒にテスト勉強しましょぉ!!!」
「……それなら同じ学年のマキシムに頼んであげようか?」
「えぇ!!!エルが良いですぅ!意地悪しないでくださぁい!!!」
という事が有ったり
「デニス!私、今度の休日にギルドの体験に参加するんですけど、一緒に行きませんかぁ?」
「……ご令嬢にはまだ早いのでは?」
「えぇ~!心配してくれるんですかぁ?キャッ!困っちゃうぅ~!」
という事が有ったり
「マルクは小言が多いですねぇ~。言い換えの方法を教えましょうかぁ?」
「……それはどんな?(ゴクリ)」
「うふふふふふ。それはですねぇ~」
という事が有ったり
「先生は天才ですねぇ!私、尊敬しちゃいます!」
「ほぉ。君もナカナカ良い感覚を持っている様だね」
「キャッ!先生に褒められましたぁ!次の実技も頑張るのでご褒美にデートしてくださぁい!」
という事が有ったりした
どれもこれも人目のある場所で
どれもこれもまるで舞台の演目を見ている様な錯覚が起こるほどの立ち回りだったそうだ
最初はそんな事あり得ないと思っていたアリアだったが
実際、断片的だが何度か目撃もしているので
全てが偽りとは言い難い気もする
それだけではない
渦中のカルラがアリアに全く接触してこない事も気になる
あれだけ幼い頃から付き合いがあって
アリアとしては一番の親友だと思っていたし、自負もあったのだ
しかし、まるであの時間は夢だったのではと思う程に疎遠となっているのは事実だった
(それでも、私はカルラを信じるわ)
まるで自分に言い聞かせるようにアリアは何度もその言葉を飲み込んだ
そんなある日の事
アリアは独りになりたくて、こっそり学園の裏庭に身を隠していた
午後から自習だったので、これ幸いとサボタージュを決め込んだのだ
昔ならあり得ない行動だが、悪友達の影響で楽しめるようになった
芝生の影からボンヤリ空を眺めていると、足音がした
誰か確認しようとした瞬間、口元を抑えられ何かにグッと抱き寄せられた
恐ろしくなって身動ぎしていると耳元に聞きなれた声がした
「落ち着いて。俺の魔法で向うには存在の認識がされていないから」
恐る恐る見上げると、鋭い目つきをしたキリオが居た
アリアが落ち着いたのを感じると、ゆっくりと拘束をといてくれた
アリアは反射的に視線の先を慌てて追いかけると、丁度カルラが誰かと通信機で話している様だった
「……あれは」
「見たことの無い通信機ですね」
「……この国のモノじゃないな」
「何でカルラがそんな物を持っているのかしら」
暫くすると、カルラの目の前の空間が歪みはじめ歪みが生まれた
緊急事態なのか、かなり焦っている様にも見える
そして、歪みの中心から人がひょっこり現れる
アリアはその白髪の青年を見て息を飲んだ
何故ならば、その人は会いたくて渇望していたフラーだったからだ
「……フラーの髪の色が」
「白いですね」
キリオも驚きを隠せない様だった
フラーの姿を確認したカルラは走り寄り、何やら頭を指さして説明している
暫く話を聞いていたフラーは呪文を唱えてカルラの額に自分の額を当てた
その姿はまるで恋人同士の様な距離感でアリアはショックを隠し切れなかった
「……どうなっているの」
そう言いながら、キリオの制服の袖をギュッと握りしめると
キリオからも緊張が伝わってきた
暫くすると、カルラは急に気を失い
そんなカルラをフラーが抱き寄せ
肩に担いで何処かへ連れ去った
軽々と担いでいた姿に甘さの欠片も微塵も無かったが
2人で密会していた事実を確認したのは大きな収穫だった気がした
「フラーだったな」
「えぇ。髪が真っ白だったわ」
「お前のお世話のストレスか?」
「……キリオってカルラ以外には本当に失礼ね」
取り敢えず、2日後に会う約束をしてその場を後にすることにした
それなのに……
現在、アリアは絶賛監禁中である
学園の何処かかは分かるが、どの位閉じ込められているか分からないのが現状だ
フラーの姿を久しぶりに見て浮れていたのかもしれない
まんまと薬を嗅がされ今に至る
手持ちのアクセサリーも全て没収された
こんな状況下でも誰かの助けを待つしかできないなんて……
アリア・キンドレッド伯爵令嬢
彼女はやはり今日ももどかしい思いをする事しか出来なかったのだ
また間があきます
すみません
コロナの終息を願うばかりです




