ざまぁヒロインは幼馴染達と話たい!
お久しぶりです。やっと、書く時間が取れました。
見てくださっている皆様には感謝しかありません!励みに完走を目指したいと思っています。
不定期更新になりますが、最後までお時間がある方はお付き合いください。よろしくお願いいたします。
『ざまぁヒロイン75日目』
先日の、教会での一件からクールダウンを貰い
本日土曜日、急遽だが、話合いをすることになった
メンバーは
カルラ、キリオ、ミハエル、フラー、デニスの5人
今回カルラはタイムリープをしていない、前世の記憶持ちと言う立ち位置なのだが
それでも、このメンバーのお茶会は心が弾んだ
女神テュケーのお陰でなのか
過去の記憶が鮮明になった事も理由の1つだ
待ち合わせ場所はいつもの教会
早めに部屋を出て、訪れたはずなのに
到着してみれば、カルラが一番最後だった
「カルラ。此方へ」
そう言いながら微笑むミハエルに安心感を覚えながらその隣に着席する
因みに右側にミハエル、左側にキリオ
斜め右向いにデニス、斜め左向かいがフラーだった
「何だか変な感じだな」
そう切り出したのは意外にもデニスだった
「俺はやっとな気持ちだがな」
そう答えたのはフラー
ジロリと睨まれたが、今はそれすら不思議な事に嬉しい
「カルラがメンバーに入ってくれると、正直やりやすいけどね」
ミハエルはニコニコと王子様スマイルでハッキリと言った
「お前達。カルラに何かあったら覚悟しとけよ?」
笑顔のキリオことコリンが圧をかける
和やかな雰囲気とまではいかないけど、何処か心許せる空気にカルラは安堵した
「じゃぁ早速だけど、今後の為にまずは現状の皆の情報を纏めておきたい。フラーから現在までに分かっている事を報告してくれ」
フラーは1つ頷くと、私達一人一人を見つめながら話し始めた
「何度もタイムリープしているのは実質3人。コリン、殿下、カルラ。コレは共通認識で良いですか?」
「俺とフラーは同じ回数だよな?だから片手で足りるよな」
ニコニコしながら話すデニムを見つめながらコリンは苦笑いをするが
その理由が分かるのは、フラーとコリンの2人だけなのでそれ以上は余計な事は言わない
「毎回、コリンは殿下とカルラを死なせたくないって思いながら行動なさってますよね?コレに対しては今回も相違は無いですか?」
「勿論だ」
「コリンは毎度、行動を変えてきていますが、最終的に必ず誤差があっても殿下とカルラは死ぬ運命にあります。これに対しても共通認識があると思って良いですか?」
フラーが周りを見つめ返すと、皆静かに頷いて答えた
「なら、此処で1つ疑問です。何故、毎回死なせないために色々と行動を変えているのに死んでしまうのか?考えた事はありますか?はい。デニス答えて」
「えっ?……じゃぁ……折角なので。ずっと思っていたのだが、敵勢力に俺達と同じ【記憶持ち】がいるのではないだろうか?」
「なるほど。デニスが無い頭で考え割には良い閃きですね」
「……なんかムカつくな。で?どうなんだ?」
「答えは【不正解】です」
デニスは不貞腐れた顔をしながらも、何処か楽しそうにフラーを見つめる
この2人ってこんなに気やすい関係だった事を今更知る
「敵勢力は毎回分かっていたので、あの手この手で主力を先回りして潰していました。コレを知っているのはコリンと殿下と私のみです。勿論、毎回アリアお嬢様に盲目的になっている第2皇子マキシム殿下にも何度も手をかけているのです」
「……俺はそんなこと知らなかった」
「当たり前です。貴方とカルラには触れない様にやってきた私のスキルの賜物なのです」
新事実に吃驚してコリンを見ると、一切ぶれることなく美しく微笑まれた
ミハエルはポンポンと肩を優しく叩いてくれたが
内心、両隣の皇太子教育の片鱗を見た気がした
「しかし、毎度【断罪劇】が行われる時には第2皇子マキシムは復活している。過去の経験上彼に対してはそれはそれは周到に暗殺してきたのです。勿論、影の存在もね」
「……ではなぜそんな事が起きるんだ?」
「デニスは聞いた事あります?彼が双子だって事?」
「……いや、そんな事は知らない」
「カルラは?」
「私が知るわけないじゃん!」
「そうなんです。コリンも殿下も知らなかった事実が今回初めて分かったんです」
何で今更という空気が室内に漂う
しかし、フラーは何か確信を持っている様で、真っ直ぐコリンを見つめて聞いた
「コリン。女神の祝福を受けている貴方にお聞きします。女神は貴方のパートナーに誰を希望していますか?」
「……アリアだ」
「そうです。そして、アリアお嬢様は毎回コリンと結婚しない場合短命なのです」
「……そうでもないぞ?」
「いえ。貴方が死んだ直後にほぼ死にます。毎回必ず」
「祝福じゃなくて呪いだな」
コリンは苦虫を嚙み潰したよう顔をしながらフラーに続きを促した
「私の仮説は実にシンプルです。女神の祝福であるコリンを主軸に、女神の願う世界になる様に強制的に何度も世界が途中で改変しているのではないのかという事です。つまり、我々は彼女の物語の登場人物にしか考えられていないという事です。そして、その中で自分の納得できる結末の為に途中で何度もテコ入れをしている。だから毎回不測の事態が生まれると言いうわけです。私はコレを【強制力】と言うのが正しいのではないかと思います」
「……強制力か。私が女神にあった時、思う様な結末に成らない事を嘆いていたから、有り得そうだな」
ミハエルは苦笑いしながらコリンをチラリとみる
コリンは真っ直ぐフラーを見つめながら続きを待っている様だった
話を聞きながらカルラはそのアイディアの出所に心当たりがあったの密かに震えていた
十中八九、元々のネタの仕入れ先による入れ知恵だと確信を持っていたのだ
「コリンは前回の生を覚えていますか?」
「ミハエルとアリアの結婚式の後、俺はやっとの思いで毒を飲んで死ねたな」
「はい。貴方は分かっていながら妹である姫君に出されたお茶を飲んで亡くなりました」
「その後は、妹は息災だったか?」
「……直ぐに捕らえられ、首を刎ねられました。王妃様は激しい方でしたので」
「……ミハエルのおススメは凄いな」
カルラがミハエルを見ると視線がウロウロしていた
あまり、突っ込まれたくない様だ
ミハエルも自分が思っている以上に王族らしい生き方が身に染みついているのだろう
「私達は貴方の死後数週間のうちに皆死んでいます。最初はミハエルとアリア。次にデニス。最後が私でした。恐らく、私の場合は予定が狂ったのだと思いますが……そこはあんまり意味がないので割愛します」
「ミハエルは俺の死後どの位で死んだんだ?」
「残念ながら、数時間後に死んだよ」
「俺の死を知っていたか?」
「死の知らせを聞いた瞬間、何者かに暗殺されたんだ。恐らく、毒殺犯にしようとして、その後失敗したんだろうね」
「アリアはどうだったんだ?フラー?」
「アリアお嬢様はミハエル様の身の潔白をその身をもって証明されました。その後は……まぁ今はどうでもいい話です」
そう言い切ったフラーと静かに話を聞いていたデニスは驚く程静かに小さく笑っていた
これ以上は聞かない方が良いのだろう
そして、聞いておきたい事も出来たので思い切って聞いてみる事にする
「キリオ……コリンは女神に逢ったの?」
そう尋ねると、コリンは満面の笑みで話始める
「1度だけね。と言ってもフラーが言った毒を飲んだ時に意識が朦朧としていたら、涙をボロボロ流している女の子が居たんだ。まぁ……子と言うにはもう少し大きかった気もするけどね」
「ちょっと待ってくれ。……女の子ではなかったのか?」
「ミハエルが言っていた女の子というサイズよりは大きかった気がするなぁ」
「……そうか。成長していたんだな」
「何か問題があるのか?」
「いや。ちょっと面白くなるかもと思ってさ」
そう言いながら、ミハエルはカルラを見つめる
「……私が逢った時は10歳くらいの女の子だったけどね。ミハエルは?」
「私の時は5歳位だ。コリンは?」
「俺はボンヤリだけど、13~14歳くらいに見えたかな?」
そう聞くと、ミハエルは益々笑みを深めた
そして、口元に手を当てて何やら考え込み始めた
「殿下がトリップすると長いので、こちらは此方で話を進めましょう。今回も恐らく断罪劇の予定が組まれています。しかし、予定より早く行われる事になるのではと私の情報筋からは推察されます」
フラーは真っ直ぐカルラを見つめながら確信を持って訪ねた
「おい猿。お前は、先日の記憶の旅とやらの中で『前世』について思いだしたのか?」
「……うん」
「そこで何かしたか?」
「……した」
「何をしたんだ?」
フラーの質問を聞いたそれぞれのメンバーは一斉にカルラを見つめる
緊張をしながらもカルラは真っ直ぐ突き刺さるフラーの視線を受け止めながら答える
「私は死ぬ直前まで、女神の世界を作る作業に必要な【教本】みたいな物を独自に作ってみたの」
「それで?」
「私はソコに、これからの私達の未来を幾つか予言の様に書き示した」
「その中に、双子の事は書いたか?」
「……書いた」
ニヤリと笑ったフラーは目を輝かせながらカルラを更に見つめた
「では聞こう。猿。お前は何を書いた?」
「私は……」
言い淀むと、両隣から手が伸びてきてそれぞれの手をギュッと握られた
小さく息を吐いて真っ直ぐもう一度フラーを見つめて返して静かに答える
「私は、ミハエルが王位を継いで、コリンが国へ帰り正式に皇太子となり、アリアが隣国へ留学する事を書いたよ。ソコには従者としてフラーが一緒に行き、デニスはミカエルの補佐になる」
「猿。お前は?」
力なく微笑みながらカルラはハッキリとした声で答える
「私、カルラ・ハイネリークは死ぬよ。世間から消えるんだ。それが私の書いた物語」