表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/46

ざまぁヒロインの幼馴染は時を越え思いを叶えたい!⑦

“運命の日になるだろう”

コリンはそう心の中で呟いていた


正装に身を包み、現在卒業式後のパーティーに参加している

先程まで行われていた卒業式にずっと消息不明だったミハエルとカルラが参加していて確信した

2人はどう見ても正気ではなかった

朝から目が合う事も無ければ

会話をする事もなかった


あんなに仲の良かったコリンとミハエルが一言も話をしない様子に周りも訝しんだ

会場を何となく見ていると、デニスが慌てた様子で此方へ走ってきた


「どうした?」

「大変です!殿下が……」


と、デニスが話出す前に過去のタイムリープの中で何度も話題になった【断罪劇】が始まった

実際の所、この目にするのは初めての経験だった


虚ろな目をしたミハエルとカルラが大勢の学園の関係者の前でアリアローズ・キンドレッド伯爵令嬢の罪を告白してく

そんな2人は寄り添い合い、お互いしか見えないような様子で語っていたから周囲も困惑していた

しかし、目の前のアリアローズ・キンドレッド伯爵令嬢は微動だにしない

それもそのはず、だってあれは人形だ

実際の所、フラー曰く言葉は5種類しか話せないらしい

「御機嫌よう」「謹んでお受けいたします」「ありがとう」「失礼いたします」「愛しています」

最後の言葉には引いたが、フラーは「何か?」と言う顔をしていた

本当に気持ちが悪い


断罪劇が進む中、ミレーニア王国の第2皇子のマキシムが割り込んだ

そして、その断罪劇を論破し、引っ繰り返らせたのだ

かくして、声高らかに話していたミハエルとカルラは後に登場した国王陛下に死の宣告を受ける事となった



******************************



「カルラ・ハイネリーク令嬢!貴様を反逆罪で北の地に投獄する!尚、皇太子は共謀罪でその身を共に北の地に置くことにする。廃嫡の後、北の地の塔で余生を過ごすとよい」


国王に言われるや否や、ミハエルとカルラは引きずられる様にしてパーティー会場を後にする

何時助けるか様子を伺っていると、ミハエルが頭を抱えて唸り始めた


「コリン殿下!この薬をミハエル様に……私が騎士達を引き付けます!」


デニスはそう言うと、ミハエルを捕らえている一行に突っ込んでいった

コリンも慌ててその後を追う、チラリとカルラの方を見るとフラーが駆け寄っていた

(フラーが居るなら安心だな)


剣と剣の間をぬってミハエルに駆け寄り、液体の薬を飲ませる

すると体を何度か激しく弓形にした後、何かを吐き出した

ソコに転がっていたのは何時かの時に文献で見た【バンシーの涙】だった


「これで正気を失っていたのか……」

「……くぅ……コリン」

「ミハエル!」


そう声をかけると、周りの騎士達も一部始終を見ていたのだろう

呆然と様子を見ていた

デニスが駆け寄ってくると、ミハエルは咳き込みながら縋る様にコリンに話す


「アリアが危ない……彼奴は最早狂人だ……」

「大丈夫だ。奴が連れて行ったアリアは人形だ」

「そうか……カルラは?」

「カルラならフラーがいる」

「………………危険だ。カルラの所へ行かなくてわ!」

「ミハエル?」


そう言うと、急に覚醒したミハエルがカルラの方へ走り寄ろうとする

反射的に剣を振り下ろした騎士の攻撃をデニスが弾く


「コリン殿下!ミハエル殿下を頼みます!!!」

「分かった!」


慌てて後を追うと、ソコには瀕死状態のフラーと正気を取り戻したカルラが居た

フラーを守ろうと魔法陣を繰り出していたカルラは

対抗しきれず、背後からザックリ切られてしまった


「やめろぉぉぉぉぉ!」


絶叫したコリンの声に、周りが一瞬ひるむ

その瞬間、ミハエルが次々と騎士達を沈めていった


駆け寄った時にはカルラは虫の息だった

しかし、その目はミハエルをしっかりと捉えて語り出した


「カルラ!」


ホッとした顔をしたカルラはその瞬間、そしてハッキリと宣言したのだ


「……みはえる……わたし……いちど……ことわりのそとへいってみるね」

「何を言ってるんだ!?」

「みてて……わたしてんさいなんだ」


そう言って、最後の力を振り絞って魔法陣を繰り出した

恐らく、ずっと内緒で用意していた物だろう

見た事の無い術式だった

カルラの側に居たフラーがその様子を見て「あのバカが……」と悔しそうに呟く


ハッとしてコリンは思わず叫んだ


「まって!カルラ!またおいていくのか!?」


ちらりと目があったカルラは笑顔を見せて呟いた


「いってきます」


そう言って、カルラはその場で光の塵となった


目の前の事態を見ていたのは


瀕死の状態のフラー


生き残ったミハエル


そしてコリンのみだった



***************************



しかし、物語はコレだけでは終わらなかった


廃嫡を宣言してしまった手前、国王は一連の騒動の主犯が第2皇子陣営だと分かりながらも擁護したのだ

コレが切っ掛けで帝国側とミレーニア王国の間で軋轢が生まれた

しかも、ミレーニア王国はミハエルをそそのかした1人として帝国の第2皇子であるコリンを名指しで批判したのである

帝国側でも動きがあった

コリンの廃嫡を望んでいた陣営はコレに乗っかり

保護していたアリアローズ・キンドレッド伯爵令嬢をミレーニア王国へ秘密裏に引き渡す代わりに協力関係を持ちかけたのだ

その主犯は帝国の正妃だったものだから事態は更に悪化した


結局の所、戦争が始まってしまったのだ


しかし、やはりこの時代にも女神に愛された男であるコリンは何処まで行っても輝きを放っていた


コリンは祖国へ帰ると最初に正妃とその一派を全て速やかに粛清した

そして、アリアを引き渡した第1皇子を自らの手で止めを刺した

彼の死体は逆賊として帝国とミレーニア王国の境界線に磔にされた


その後も手を緩める事なく進んだ

次に行ったのは、ミレーニア王国は逆賊と帝国側が判断し、容赦なく制圧に励んだのだ

結果として、ミレーニア王国は地図の上から姿を消す事となった


コリンの父である皇帝は一連の騒動の責任を取り、王位をコリンに譲り

彼は20歳にして帝国の太陽となった


その戦争中、彼の傍らには、金髪碧眼の影や口の悪い従者、脳筋の騎士と生真面目な宰相候補が常に寄り添っていたらしいが一説によると、影は仲間の為に自ら囮になって志半ばで王位を継ぐところを見ることなく死んだらしい


騒動に巻き込まれたアリアローズ・キンドレッド伯爵令嬢は【悲劇のヒロイン】としてその後の冒険談も愛された

彼女は自分らしさを追求する旅へと出掛ける事をあの事件を切っ掛けに決意したのだ

その道中で多くの軌跡を残した彼女は後に【聖女】と呼ばれ、多くの人々に愛された

そして、最後にはずっとサポートしてくれた帝国の太陽と結婚し幸せな余生を過ごした


彼等の結婚式は正規の世紀の結婚式としてずっと語り継がれていったと伝承が残っている


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ