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ざまぁヒロインの攻略対象ミハエル・ロイ・ミレーニアは生き抜きたい①

爆発音と共に上がった砂塵に、この建物の老朽化ぶりを痛感させる


「この場所がなくなると、カルラは悲しむだろうなぁ」


柄にもなく感傷的になっていたら、この惨劇を演出したご本人の登場だ


「怒り過ぎだと思うよ。私達は仲間じゃないか」

「イカレタ頭が戻ったのか?どうやら会話が通じるようになってるじゃないか」


煙の中から現れた彼はいつもの変装が解けていた


「その恰好……その恰好で学園内をうろついてないでしょうね?」

「お前には関係ない。お前こそ、王子様な話し方が取れてるぞ」

「この建物……カルラのお気に入りの場所だったのに……」

「お前が空間遮断の魔法なんか使わなかったらこんな事は起こらなかった」

「お前のストーカー行為が目に余った結果だろ」

「自覚はあるが、カルラも許可していた」

「許可させていたの間違いだろ?お前の押しの強さに若干引いてるようにも見えたけど?」


両肩を上げて笑って見せると、容赦なく次の魔法が放たれる

左頬ギリギリの所をかすって、後ろにあったパイプオルガンに直撃した


「……ここ、俺の思い出の場所でもあるんだけど?」

「遠い記憶の結婚式だろ?現世ではありえない話だ」

「それはカルラとの結婚式だったから?」

「過去は過去だ」

「どうしてこんなに闇の深い子に育っちゃったんだろうねぇ」

「お前は回を重ねる度に軽くなっていくな」


次の魔法を放つ準備をしていた相手を見て、ミハエルは自分の右横の椅子を指さした

ソコには深い眠りに就いたカルラが、ミハエルの作った魔法陣の中で眠っていた


「カルラ!」


慌てて駆け寄る相手は、先程までの凶悪な顔は鳴りを潜め、年相応の顔になった

ミハエルが魔法陣を解除してやると、震える指でカルラの頬を撫でた


「この眠りは……カルラに逆行魔法を使ったのか?」

「どんな言葉が合うかなぁ?時間旅行が合うかな?」

「精神だけを飛ばすなんて……やっぱりお前は狂っているな」

「いやいや!お前に言われてくないね!!!」


ぎゃぁぎゃぁと2人で言い合いをしていると、後方から咳払いが聞こえる


「コホン。お話し中すいませんが、間もなくマルク・ルグローブがこちらに到着されます。出来れば再度空間遮断の魔法をしていただきたいのですがミハエル殿下やっていただけますか?」

「ヤッホ~!フラーは丁寧で好いねぇ!!!誰かさんとは大違い!!!」

「俺がしても良いんだぞ?」

「お前は俺みたいに繊細な作りの魔法は得意じゃないだろう?大体、お前が魔法を壊して入ってきたからこうなったんだよ!」


ブツブツ言いながら、ミハエルは両手を空に向って伸ばす

指先から緑色の煙が緩やかに上ってそれが蔦の様に広がっていく

あっと言う間に教会跡近辺を包むと空間が遮断された


「見事ですね」


フラーの賛辞に得意気な顔をするミハエル

そんな中でもカルラに集中して目線を送っている人物がいる


「そんなに見ていたら穴が開くぞ?」

「現世でやっと会えたんだ。この苦しみはお前には分かるまい」

「いやいや……俺だって前回会えなかったのはショックだったよ?それに、巻き込まれたフラーに申し訳ないだろ?」


そう言ってフラーを見ると、困った顔をして笑っていた

彼がこんな顔をする様になるまでの年月に感慨深いものを感じる


「何故カルラは《理の外》へ俺も連れて行ってくれなかったんだろう?」

「実際、前回のタイムリープの記憶保持者は俺とお前とフラーの3人だからな」

「しかも、フラーの両目に魔法陣が出来ていた」

「あれはカルラの魔法の暴走に当てられたのか……あるいはこの世界のバグかな」

「何はともあれ、カルラの居ない前世は苦行しかなかったからな。お前は早々に死んだから分からないだろうが……」

「この世界に愛されている人間は大変だなぁ」

「これは呪いの一種と言えるぞ」

「神様も報われないものだ」


そう会話している間に、フラーが周りを片付け、簡単なティータイムの準備をし始める

長くなると判断したのだろう

準備が整い、座る様に促すと

2人はゆっくりとそちらへ移動した


「カルラはああなって何時間経った?」

「当初の1時間で帰ってくる予定だったんだけど、今で2時間強って所かな?」

「大丈夫なのか?」

「多分カルラは理の外へ行った時の記憶の場所へ行っている。だから帰るのに時間がかかるんだと思っている」

「理の外はそんなに危険なのか?」

「危険というか……恐らく、カルラであってカルラじゃない存在として生きていたはずだ。そちらで幸せなら帰るのも時間がかかるかもしれない」

「……それは複雑だな」


そう言いながらションボリする相手に対して、ミハエルは無理矢理肩を組む


「目覚めた時の第一声は何にする?」

「それは決まっているだろう?あの時、カルラは俺に言ったんだぞ……」


そう話していたら、フラーが目を大きく開けて2人の後方を見つめていた

ハッとして振り返ると、椅子の上に横たわっていたはずのカルラが体を起こしていた


「「カルラ!」」


思わず、走り寄る2人に支えられ、ゆっくりと辺りを見回すとカルラはミハエルを見た


「凄い濃い内容の時間旅行だったよ」

「お気に召したか?」

「うん。行って良かった。でも、何でこんなに壊れてるの?」


困った顔のミハエルは隣に視線をやる

ソコにはカルラの体を支えながらジッと見つめる1人の青年が居た


黒髪に黒目のその男は、良く知った人物だった


「ただいま、キリオ……いえ。只今戻りました〘コリン・ロキ・リリーベル殿下〙」

「僕はただのキリオだ」


そう言って、カルラの事を強く抱きしめた

彼はこの日の為に沢山準備してきたのだが、それは気の遠くなる程の年月だった

現世でも手伝わされているミハエルとしては辟易するレベルだ


それでも目の前の彼は彼自身の思いを諦められなかった

だから運命に何度も抵抗したのだ


(なんでカルラだったんだろう……)


ミハエルはそんな事を考えながら2人を見つめ続けていた

取り敢えず彼が出来る事は、現世では死なない事が第1だと、思いを新たにするのであった


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