ざまぁヒロインは待ち人から話が聞きたい!
短いです
『ざまぁヒロイン73日目』
私は人の居ない学園の中で
更に人気の無い場所に居る
何となく、そこに行けば会える気がしたからだ
「やっぱり居た」
そのボロボロの教会の扉は薄く開いていた
中に居るのは間違いなく彼だろう
何の躊躇いもなく扉の中を覗いた
「待っていたんだ。私の話を聞いてくれるかい?」
待ち人はやはりいた
自分から来たのだ
「ミハエルは私に話があるの?」
「正確には君にしか話せない」
どういう意味かと考え込んでいると「座らないか?」と声がかかる
教会の扉を閉めて、念のために結界を張る
ミハエルは私がそうする事を知っていたみたいに
ニコニコ笑いながら自分の隣の席を指さす
「何か飲む?」
「そうだね……長い話になりそうだから助かるかな」
「紅茶で良い?」
「ありがとう」
2人で水筒の紅茶を飲む。あの日の様に
不思議だが、この空気は全然嫌じゃなかった
一息ついたところで、ミハエルは徐に指を鳴らした
すると、膨大な魔力で作られた空間遮断の魔法が発動した
「……やっぱり、前回魔法が使えなかったのはアナタの仕業だったんだね」
「気がついていた?」
「穏やかな人間だけで皇太子殿下は務まらないもん」
ニッコリ笑ったミハエルは真っ直ぐ私を見つめて驚きの言葉を発する
「カルラ・ハイネリーク令嬢。私達の死のループを一緒に止めないか?私はこの世界をもう幾度となく過ごしている。死ぬ時は必ず君と一緒だ。そして、今回は私が思うに君は《転生者》なのではないか?」
沈黙が続く
まさかの事態だ
もしかしたら、自分以外に【記憶持ち】がいるかもしれないと思っていたがミハエルだとは思っていなかった
「記憶持ちはフラーだと思っていました。しかし、私が転生者とはいつ気がついたのですか?」
「正確に言えば前々回の君は私と同じ時間逆行型だったのだ」
「……え?」
「つまり、君は以前も先の事を知りながら1度一緒に行動し、最終的には仲間の中で最初に殺されている」
衝撃だった
私は、転生が初めてだと思っていたのに
その前に違う形で人生を歩み直していたというのだ
「因みに……前々回の私はいつ死にましたか?」
「卒業パーティーの日さ。しかし、いつもと様子は違った」
「……死んだのは私だけ?」
「ああ。君の死後、王都奪還を目指していたのだ。しかし……あと一歩で裏切られ、その時に私は死亡した」
「アリアは?」
「その時は王都の城の中で軟禁生活だったと聞いている。確認する前に死んだから確かな事は分からない」
「ミハエルは何度目なの?何を知っているの?」
「カルラ・ハイネリーク令嬢。いやカルラ。私達はループの中で同盟を結んだんだ」
そう言って彼はペンダントと取り出した
それは、見たことの無い魔法陣だが
どう見ても、私が作った形の魔法陣だった
「コレは……」
「君が作った魔法陣だ。世界の理を壊すため……僕達で未来を変えるために作ったのだ」
ミハエルはペンダントを首から外すと私に渡してきた
掌に置かれたソレはステンドグラスになっていて、独特の光の調和を生み出していた
思わず光に当てたくなってお日様に向かってペンダントをかざす
すると次の瞬間、膨大な記憶の波が押し寄せてきた
「ミハエル……!」
「大丈夫だカルラ。ほんの1時間程記憶の旅へ行っておいで。私も何度もその旅をしている。その目で見てくるのだ」
ミハエルの言葉を最後に私の意識はそこで途切れた