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ざまぁヒロインは自由に生きたい!

時を遡ること6年前

当時10歳だった私は父の仕事について行って国一番の港町に来ていた


私の住むミレーニア王国は小国ながらそれなりに栄えた国である

港があるので他国との物流や交流は絶え間なく行われており

温暖な気候により出来た作物と良質な資源が主な収入源となっている

貴族と平民の差はあるものの

現国王は『実力主義』を謳い

平民の中でも優れた才能の者には城で職に就く事もできる様になっている

また国王肝いりで最近では優秀な学生を集めた【学園】なるものも作ったとかなんとか……


我が家は平民出身の商家である

小さい商会ながらも品質の良さが噂になり

王国御用達にまで上り詰めたのが3年前の事

クリーンな取引と父の整った顔立ちが功を奏したのか

家業はどんどん成長していき

私が6歳の頃には国の中でもトップ3に入る商会となっていた

その功績を称えられ、男爵の地位を承ったのが……

もうお分かりだろうか?

そう、我が家は所謂【成金貴族】というヤツだ


家族は父、兄、弟、そして私の4人家族

母は2年前に不慮の事故で亡くなった

まぁ本当に〘不慮〙なのか怪しいが、子供の私が知ったところで何かできるワケでもない

それに、下の弟はまだ3歳

父や6歳上の兄は家業に忙しく、必然的に私が弟の世話をする事になったのはごく自然な事ともいえる


私の名前はカルラ・ハイネリーク

一応【男爵令嬢】だ


名前しかなかったのはつい数か月前の事なので

家名の重みとかはイマイチよく分からないけど、これから名乗る時には言わないといけないらしい

だからといって、劇的に何かが変わるワケでもなく

今日も今日とて、父の右腕である補佐のグレゴリーの息子である1つ年上の幼馴染キリオと

弟のレフの3人で我が家の所有する貿易船の倉庫の中を散策していた


「カルラ!あんまり奥に行くと危ないよ」

「うるさいなぁキリオは。それより誰も来ないように見張ってて!」

「おねぇちゃん。僕お腹が空いたよ」

「レフちょっと待ってて、今面白そうな箱見つけたから」


わくわくしながら見つけた木箱は他の箱とは明らかに違い濃い緑色に塗装されていた


「何が入ってるんだろう?」

「カルラ!勝手に開けたら旦那様にまた怒られるよ!」

「黙ってればバレないって」

「そう言って前回もバレたじゃないか」

「おねぇちゃんお腹空いた」

「んもぉ~うるさいなぁ」


大げさに溜息をついて手を乗せていた箱から顔を上げると同時に扉が開く

その音に私達3人はビクリと肩を震わせる


「居ないと思ったらやはり此処か」


扉の前には私の兄ヨハン・ハイネリークが立っていた


「兄さん!仕事は終わったの?」

「若様、お疲れ様です」

「にぃに。お腹空いたぁ」


それぞれに声をかけると、苦笑いしながら兄は指さす


「それを今日一番のお客様の所に持っていかないといけないから来たんだが……カルラ?」


絶対零度の笑顔に私はただただ凍り付く


()()()()()()()()()()()()()


思わずといった返しに隣のキリオは静かに明後日を見る

兄は笑みを更に深くして近寄ってくると私の頭にそっと手を乗せ鷲掴みにした


「商品んで遊ぶなって何度も言ってるだろうが」

「ひぃぃぃぃぃぃごめんなさいぃぃぃぃ」

「この何にも入っていない頭はやはり飾りか?」

「いえいえ、港の美味しい店の情報が沢山つまっています!」

「家業の商品の事ももっと詰まっていてほしいものだな」


ギリギリギリギリ……と室内に響く


「若様、お気持ちは痛いほどわかりますがお客様がお待ちです」

「ふむ。今日は命拾いしたなカルラ」


パッと手を離された瞬間、床に転ばされた私をキリオが慌てて起こしてくれる

兄に声をかけたのは使用人のルスランだった

恐らく心配して見に来てくれたのだろう


「いったぁ!私女の子なんですけど!!!」

「仮にも貴族になったのだ『淑女』を目指してほしいものだ」

「私は恋愛結婚したいから、政略結婚の駒にはならないわ」

「口先だけは10歳らしからぬ事を言うのに……この羽はねっ返り娘は」

「あぁぁぁぁぁ聞こえない~!」


両耳を塞いでそっぽを向くと、見かねたキリオが兄に話しかける


「すみません若様。僕の方からもちゃんと話をしますので」

「いやいや、キリオは良くやっている。カルラの自覚の無さが問題なのだ」

「若様、お客様をこれ以上待たす事は出来ませんのでそろそろ……」

「うむ。すまないな」


ルスランの声掛けに軽く頷くと、濃い緑色をした木箱を持って兄は去って行った

終始剝れていた私は勿論兄を見ることはない

気を遣ってか、ルスランは弟のレフも一緒に連れて行ってくれたので部屋にはキリオと2人きりになった


「ちゃんと、若様に謝らないとダメだよ」

「私は悪くないもん」

「でも、勝手に商品を見ようとしたのは本当じゃないか」

「まだ開けてないわ」

「それに、貴族のマナーを覚えるのは大切だよ」

「独りで覚えるなんて嫌よ」

「でも、カルラは貴族なんだから必要なんだよ」

「なりたくてなったんじゃない!」

「でも……」

「『でも』ばっかり止めて!」


怒りをキリオにぶつけるのは間違っているのは分かっているが感情が抑えられなかった

悔しくて膝に顔を押し当てて俯いていると

そっと右手をキリオが握ってくれた


「……キリオも一緒に勉強してくれるなら頑張れるかも」

「……僕は平民だから必要ないよ」

「じゃぁ勉強しない!」

「我儘だなぁ」


クスクス笑いながらキリオは更にギュッと手を握ってくれる


「旦那様に相談してみようか。ダメなら若様だな」


ガバリっと、顔を上げてキリオを見ると困った顔をしながら優しく微笑む

嬉しくなって抱き着くと、慣れた手つきで背中を優しく撫でられる


「私達、最高のバディだわ」

「何処で覚えたの?」


クスクス笑い合いながら気を取り直して倉庫から出る

2人で貿易船から降りて港町でお昼ご飯でも食べようと相談しながら階段を上っていると

頭上から女の子の声がした


「もし、そこのアナタ。カルラ様でよろしいかしら?」


目の前に立っていたのは同い年くらいの女の子

黒い髪に釣り目がちな紫色の瞳、赤のフリルのついたドレスを着こなし

手には白色の扇子を持っていた


その瞬間、酷い頭痛が襲ってきて思わずしゃがみ込んでしまった


「カルラ!?大丈夫!?!?!?」

「アナタ大丈夫なの!?」


声を掛けられ答えようと口を動かすも音は出ず

私はそのまま意識を手放した


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