2話:君のことを予約する
『一緒に観ちゃいます?笑笑』
俺はこう返信する。
人間不信ではあるが、松戸凛は俺と同じオタクであり、その人と同じアニメを一緒に観るのである。
「それくらいならいいか」
口から言葉が溢れる。
1時間ほど経って返信が来た。
『行っちゃいます?笑笑』
『じゃあ春休みに行きましょうか!』
今は二月。春休みは3月の中旬からなので、1ヶ月後くらいだ。
『そうしましょう!DVDはこっちで借りておくので、安心してください!』
俺はこう返信した。
俺も、松戸凛も結構乗る気で、どんどん話が進んでいく。
このまどマギ鑑賞会の話は大体半日くらい続いた。
まだほぼ会ったことない人と、二人っきりでネカフェに行くなんて、とても緊張する。しかも異性だ。そんなことを考えていると、松戸凛から返信が来た。
するとなんということだろう、衝撃的なことが書いてあったのである。
『アキバ付き合ってくれませんか?私アキバ最近行っていなくて、久しぶりに行きたいなと思ったんです!』
二人きりでアキバときた。俺は昔から女子と二人でアキバに行くというのに憧れていた。
元カノはオタクではなかったし、まずあまり仲良くもなかったので一緒にアキバへ行っていない。
だから行ってみたいなと思ってしまう。
二人きりでアニメを観て、しかも二人きりでアキバ…
もうデートじゃないですかと、つっこんでしまいそうである。
俺の答えは決まっている。
『いいですよ、行きましょ!俺もちょうど行きたかったんです!』
俺は「ちょうど行きたかった」と、イヤイヤ感がない巧妙な手口で返信する。
『そうですか!じゃあ行きましょうね!あ、その代わりと言っては何ですが、一緒に行って欲しいところがあったら、ついて行きますので、言ってくださいね!』
何ということだろう、次のデートの予約可能ですよ、ということなのだろうか。
俺は展望台に行きたいと思っていたので、
『東京スカイツリーに行きたいです!』
と返信する。
すると
『え!?私なんかでいいんですか!?それ、なんだかデートみたいですね笑』
と返ってくる。
あ、攻めすぎた?
いや、完全にデートの予約OKですよ、ということかと思ってしまった。
俺はテンパる。
『ごめんなさい!!えーっと、じゃあそれはまた今度で大丈夫です!』
テンパってまた今度で大丈夫という適当なことを言ってしまう。
『地味に次の予約してますね笑笑いいですよ、私でいいなら』
地味に次の予約になってしまいましたぁ。
しかも松戸凛は、意外と乗る気である。
しかし、1日でアキバの後スカイツリー、というのは無理に等しい。
なぜなら、アキバは1日ではまわれないくらい内容が濃いからである。
『じゃあスカイツリーは今度にしましょう!アキバは内容が濃いので一日掛りな気がします!』
松戸凛は
『たしかにそうですね、じゃあ一緒にアニメ観る日はアキバだけで!』
ここまで話が進展すると、発生する問題がある。
そう、敬語が違和感になってくるのである。
『仲良くなりたいから敬語じゃなくて、タメにしよっか!』
俺はこう述べる。
『わかった、そうする!!』
なんだか距離が縮まった気がした。
もう一件メッセージがくる。
『突然なんだけど明日の昼休み、M組行く用事があるからその時会わない?』
でた、松戸凛の得意な唐突爆弾発言。
『え!?いいよ!会お!』
俺は動揺しながらも、返信する。
ということは明日こそは、しっかりと松戸凛の顔を見るということになる。
俺がブサイクすぎて、もうあなたとはアキバに行きたくないとか言われたらどうしようかなど、いろいろ考えながら、次の日の昼休みを迎えた。
昼休み、ソワソワしながら、いつも通りクラスで友達とひたすら走るソシャゲー、言い換えればクソゲーをやっていた。
すると
「勇人、呼ばれてるよ」
と、クラスの女子に肩を叩かれる。
ゲームを中断し、廊下に出る。
すると身長は160cmくらい、髪の毛はサラサラの茶髪がかったロング、目はくりんと丸く、瞳がきらりと輝いている。胸は日本人らしいちょうどいいサイズ。
まとめると、容姿端麗の美少女がM組の前に立っていたのだ。
もしかして、この美少女が松戸凛?もしかしてこんな美少女と二人きりでアキバに行くの!?
「えーっと、松戸凛です、、!よろしくね、、!!」
美少女は、耳を朱に染めながら口を開く。
この美少女は松戸凛というらしい。