20話 一人の女の子
「はぁ…はぁ…」
女の子がふらふら歩きながら歩いている
「あそこは…街…?」
と人の声を聞き慌てて隠れる
「それでこれからどうするつもりなの?」
「この国の領主として…対策は取りたいなとは思うけど…正直面倒ごとはごめんだしね」
「あの人が…領主…」
女の子が周りを見ると妖精たちが飛び交っていた
「ここって…人間嫌いで有名だった精霊の街…?何で人間が領主に…」
女の子が呟くと2人の女の子はそのまま歩いて行った。
「おーい早紀!」
と前から早紀が走ってくる
「どうしたの?マリ」
早紀が外に出る
「今日は休日だしどこか遊びに行こうよ」
「朧月は?」
早紀は周りを見渡す
「あぁ…朧月は確か行きたいところがあるって…」
早紀は軽く頷く
「それではシルフさん、ウンディーネさん行ってきますね!」
「はい早紀さん!行ってらっしゃいませ」
ウンディーネが頭を下げた。よく早紀さんの会議室にみんなが集まるのだ。
「ところで…」
早紀が家の物陰を見る
「やっぱり早紀さんも気づいたの?」
「マリも?」
「うん…誰かあそこにいる…」
2人はあえて気づかないふりをした。
しばらく歩いていると前から鎧を着た兵士が歩いてきた
「貴様…何者だ?」
男たちが槍を向ける
「お初にお目にかかります…私は早紀…この国の領主です」
「なっ…領主だと!?いつここが国になったんだ!?」
男たちはここが国じゃないと思い入り込んだらしい
「はい、2か月ほど前にここの国の領主になりました」
早紀はそんなことを言うもマリは剣に手をかけている
「どうしたんだ?主」
と後ろから朧月も歩いてきた
「いや…なんかこの人たちが…」
「いやいや!すまない…おい!みんな帰るぞ!ここが国になったとなれば我々が勝手に入ることは出来ん」
と男たちはリーダーの言葉に慌てて帰っていった。
「クソ!まさかあそこが国になっていたとは…しかも女領主だと?」
男が呟く
「まずいっすよ!もしもあの国に逃げ込むようなことがあれば…」
後ろから男が叫ぶ
「だが出来て2か月の国だ…簡単につぶせ…」
「無理だ」
リーダーが頭を抱え呟く
「え?」
「まさかお前ら気づかなかったのか?あの領主の隣にいた赤服の女の子…と黒服の女の子…」
「あの子達がどうかしたんですか?」
「あの2人は間違いなくDランクだ…」
男たちが身構える
「ですがギルド国にはDランクの1人や2人は普通にいると思いますよ…」
「馬鹿野郎!」
男が叫ぶ
「何で人間のDランクが2人も妖精の国にいるんだ!あの国はいわば人間が領主の妖精の国…妖精たちは最低でもE+ランクは当たり前…上位精霊はDランクを超えるんだぞ!1人や2人のわけないだろ。そんな国に逃げられてしまうと我々には対処できん…領主次第だが…全面戦争も覚悟しとけよ」
男たちは息を飲んだ。
「あの人たちなんだったんだろうね?」
早紀がマリと朧月を見る
「さぁな…武装集団だからどこかのギルド国の人たちだろう」
「うーん…焦っていたようにも見えたけどね」
マリが早紀の顔を見る
「確かに!私が領主って言った瞬間に変わったよね?ここが国になったら何か不都合があるのかな?」
早紀が悩む。
(ねぇサキエル…前に行ってた女神?と今回の件関係あると思う?)
(はい!かなりの高確率で女神たちの捕獲をもくろんでいると思われますね。そしてこの国にも1人女神らしき人物がいることを確認してますよ)
(やっぱりここにいるのか…ありがとサキエル)
「今調べてみたら女神たちを捕まえているのがあの人たちらしい…」
「なるほどな…つまりここに逃げてきた女神を捕まえるために追ってきたというのが正しいのか」
「なんだ朧月もとっくに気づいてたのね」
マリがため息をつく
「こんな力を持っているのは女神くらいしかないからな……マリと主は除くが」
と朧月は奥の家をチラ見する
「終わったよ!隠れてないで出ておいで」
早紀は奥の家に呼びかけると女の子が現れた
「ど…どうしてわかったのですか?」
女の子が恐る恐る聞く
「なんだ?古代竜である私が見破れぬとでも思ったか?」
朧月が笑っている
「古代竜!?あわわ……」
女の子が目を丸くする
「まぁこんなところで話すより拠点で話を聞くよ」
と早紀が笑いながら女の子を連れて行った。
「さて…」
と会議室に集まり早紀がお茶を出す
「対しておもてなしできないけどごめんね」
早紀が頭を下げる
「いえ…大丈夫です…」
「あなたは本当に女神なの?羽が生えてないから分からないし…」
女の子は頷くと光をあび羽を出した
「…本来はばれないように羽は隠す…」
「まぁ…女神というのは希少だからな」
朧月が頷く
「早紀さーん」
と扉を開けガブリエルが入ってくる
「あらこれは…女神じゃありませんか?なぜこんなところに…」
「まぁまって一応名前聞いてもいいかな?」
早紀がガブリエルを止める
「アテナと言います」
(アテナかぁ…確かに女神の名前だなぁ…まぁ…妖精、天使、古代竜がいるんだもんなぁ…)
早紀は勝手に納得した
「私はこの国天優国領主の早紀!そして…」
「マリです」
「私が古代竜朧月だよろしく」
と2人が挨拶をする
「やはりこの国はおかしい…どうして妖精と人間と伝説の古代竜が…」
「それは私も思いますよ…」
ガブリエルがため息をつく
「…ところであなたは?」
アテナがガブリエルの顔を見る
「驚かないでくださいね、私四大天使のガブリエルです」
「へ?て…天使…」
「アテナー!」
アテナはそのまま倒れ気絶してしまった。
「やっぱりこうなりましたか……」
ガブリエルがため息をつく
「ところでなんでそんなに多種族と一緒というのはダメなの?種族が多い方が楽しいですよね?」
早紀の言葉にみんなが驚いた
「まさか早紀……気づいてないわけ?」
マリが目を見開く
「主よ……確かに多種族のギルド国は全然珍しいことも何もないが……普通なら人間、オーク、サラマンダー、ゴブリン、ドワーフなどの比較的な下級種族だ、だがこの国は人間、妖精、天使、そして私古代竜……数は圧倒的に少ないがあまりにも上級種族過ぎることが問題なのだ」
早紀は首を曲げながらも頷く
「そんな国が現れたと知ったら周りも警戒するでしょうに……」
マリがため息をついた
「あれ?でもガブリエルが天使だってことは公表してないよね?」
「ああ……だからこの国は今では人間、妖精、古代竜の住む国として知れ渡っているだろうな……」
「それでも十分おかしいんだけど」
気づいたらマリは肘をついていた
「困りましたね……これだとミカエルさんたちを呼び出しにくくなりましたよ」
ガブリエルが悩むような顔をする
「まぁ……そんな反面扱い的には小ギルド国に分類されるんだが……大前提として3種族……いや天使4人を入れると4種族か、この4種族が集まっているならそこら辺の小規模ギルドみたいにすぐ潰れたりはしないだろうし……ある意味安全か?主」
朧月が呟く
「どの道私は争いは嫌いだし」
「でもねぇ……女神を保護した時点で今日のギルド国に喧嘩を売ったんだよ」
マリが呟く
「ギルド国との対決になる可能性がありますね」
ガブリエルはうんうん頷いていた。
結局その日アテナが起きることはなかった。
2日後
「うーん……」
「起きた?」
早紀が聞くとアテナが一瞬怯え顔をするもすぐに昨日の事を思い出したかのように頷いた。
「やっほー!」
とシルフが入ってくる
「こら!シルフさん!」
奥からウンディーネも歩いてきた
「あっ……そうか今日って学校休みの日だっけ?」
早紀が首を曲げる
「はい!妖精たちも順調に強くなってますよ」
ウンディーネが笑っている
「そういえば」
早紀は思いついたように皆を会議室に呼んだ。
「さて……アテナここに来た要件は女神たちの救出で大丈夫?」
アテナは驚いた顔をする
「早紀さん面倒ごとは嫌いって言ってなかった?」
シルフが首を曲げる
「うん!だから今回も……ラミさんをね」
アテナを除く皆は大体予想がついていた。
「またラミさんに後始末お願いするの?」
マリがため息をつく
「そうそう!ラミさんが倒したことにしたら私たちの国が狙われる可能性は少なくなるからね」
「なかなかの策士なのか……ただの人任せなのかわかんないねこりゃ」
マリが両手を挙げた
「わたしの為に助けてくれるんですか?」
アテナが首を曲げる
「あぁ……主は困っている人がいたら何が何でも助けてしまう病気にかかっているからな」
「朧月!聞こえてるよ!」
早紀が叫んだ
「ところで早紀さんそろそろ私たちの紹介も全部済ませましょうよ」
ガブリエルが早紀の顔を見る
「良いねそれ!」
と早紀が笑った瞬間目の前が光り輝いた
「まぶし!」
シルフが叫ぶ
「あ~あぁ久しぶりの外じゃのう!」
「お前はリーダーとしての自覚を持て」
「まぁいいじゃないですか外に出ることが出来たんですし」
と3人が話していた。
「改めて私が紹介します。この赤い服の女の子が私たちのリーダーミカエルです。まぁこう見えて若いので……」
「おい!こう見えて、は余計じゃ!わしはまだ190才じゃぞ!」
(十分だけど天使にしてみれば……若いのか)
「そしてこちらの黄色の服を着た女の子がウリエルです。よくミカエルさんと喧嘩しています」
「おい!いらんこと言うな!私はミカエルの言動に突っ込みいれているだけだ」
「わしは普通の言動じゃ」
「どこがだよ……」
2人はまた睨み合った
「まぁ……そんなことはさておき最後はラファエルさんです!」
「ラファエルと申します、これからよろしくお願いしますね。私は主に治癒するのが得意です」
ラファエルが笑顔になった
「さてと……これで十分な戦力にはなったかな?」
早紀が周りを見る
「えっと主よ……戦力なのだが人間2人、竜族1人、妖精族10000人、女神族1人、天族4人だな……」
「そもそも人間少ない……」
アテナが呟く
「あぁ……マリと早紀しかいないからな……どんな偏り方なんだか……というか」
朧月が早紀とマリを見る
「……お前たちは人間と言っていいのか分からんよ」
「うっ……」
「え!?私まで!?」
マリは自覚ありつつ早紀は全然そんなことない仕草を見せた。
その日の夜早紀は四大天使と一緒に部屋で話をしていた。
「にしても外の空気はいいのう!」
ミカエルがまだ言っている
「まだ言ってるんですか……そろそろ子供じゃないんですし……」
ガブリエルがため息をつく
「ところで早紀本気で女神たちを助けるつもりか?」
ウリエルが真剣な顔をする
「ごめんなさいね早紀さん……ウリエルさんはこういう言い方しかできなくて……ほかの天使の皆さんからも少し怖がられているんですよ」
ラファエルが口をはさむ
「うるさい!」
「私はいいですよー、それで助けるつもりだけどどうして?」
早紀が不思議そうにウリエルに聞く
「それはわしも思ったのじゃ……早紀よお主気づいておるのか……?女神たちを捕らえているということはそのくらいの相手と戦うことになるのじゃ」
ミカエルが呟く
「そういえばそっか……」
早紀が悩む
「救出するだけならば妖精たちのあの作戦と同じでもいいと思いますが……」
ガブリエルが早紀の顔を見る
「そんな子供だましができる相手じゃないだろ……ガブリエルお前が1人で救出してきたらどうだ?」
ウリエルがとんでもないことを口に出した
「ガブリエルさん1人!?」
早紀は思わず叫んだ。
「確かにいい案ですね」
「わしの出番はまだないのか……」
「ちょっと待ってください!いくら何でも1人で真正面から突っ込むだなんて……」
早紀が納得している天使たちを止める
「何を言っておるのじゃ、透明化になれる方法があるじゃろうに」
早紀は思い出した
「マリの透明化を使うんですね!?」
「その通りじゃ、まぁ明日皆に説明するからの……今日はゆっくり休むのじゃ」
ミカエルが奥の布団にもぐっていった。この部屋は四大天使全員の意見により5つベットが用意されているのだ。
「ミカエルさん毎日休んでいるじゃないですか……」
「うるさいのじゃ!」
そんな会話を早紀は笑いながら聞いていた。
皆様のおかげで無事20話まで書くことが出来ました!一度でも読んでくださった方本当にありがとうございます。さてここまでたくさんのキャラクターが出てきたので少しずつですが登場人物紹介をはさみたいと思います。
これからも「Zランクの転生者でも仲間が強ければ最強ギルド作れますよね?」をよろしくお願いいたします!




