15話 妖精たちの森
「おーい!なんで早紀は毎回問題ごとに首を突っ込むんじゃ!」
ミカエルが頭を抱える
「そろそろ私たちの事を教えた方がいいですかね…」
ガブリエルが悩む
「だが早紀をこっちになかなか連れてこれないからな」
「ウリエルさん…気持ちは分かりますが落ち着いて待つことも大事ですよ!はい、癒しの水です」
ラファエルが水を渡す
「じゃが妖精の森はちょっと危険じゃ…あやつら大丈夫なのかの?」
ミカエルが首を曲げる
「それも見たらわかりますよ」
ラファエルの言葉に3人はまたモニターを眺めた。
「おい!何で負けたんだ!」
男が叫んでいる
「すいません…途中で邪魔者が入りまして…どうやらたまたま通りかかっただけのようですが…強さがその…桁違いで…」
男が口ごもる
「邪魔者か…何人だ?」
男が聞く
「はい…3人でした」
その報告に男は2人を睨む
「ふざけるな!そんなたった3人に負けて戻ってきたのか!?妖精たちを売らないとギルド国【ハーペル国】に我々が滅ぼされるのだぞ!スタルム様になんて報告すれば!」
男が叫ぶ
「はい…それは重々承知の上ですが…」
2人は膝をずっとついている
「とりあえず…すぐにでも早く次の妖精を連れてくるのだ!」
「はっ!」
男たちはまた消えていった。
「それにしても朧月さすが…あの人数を相手に一瞬だもんね」
早紀は軽く笑っている
「おうよ!あれくらい楽勝よ」
「あの…」
「そうなんだ!竜眼だっけ?あれで2人以外気絶したもんね」
マリが朧月に詰め寄る
「私で気絶してたらダメだがな…」
「あの!」
と後ろから声が聞こえた
「あっ…ごめんね…気づかなくて…」
「いえ…人間……とドラゴンさん助けて頂きありがとうございました…」
緑服の女の子が頭を下げる
「とりあえず広い道まで歩こうか…」
早紀が周りを見渡す
「どうした主?」
朧月が首を曲げる
「道どこだっけ?」
「あそこでしょ?」
マリが奥の獣道を見る
「あそこは…ちがいます…」
結局女の子が案内することになった。
「じゃあ…」
と早紀は収納からバスを出す。無論女の子の目は白目になっていた。
「さてと…とりあえず家に帰さないと…」
早紀は運転席に座る
(あれ?そういえばサキエルの能力でバス動かせるんじゃない?)
(すみません…私ではこの乗り物を動かすことは出来ません)
サキエルから答えが返ってくると早紀は頭を落とす
[自動能力創作によりサキエルに物体操作術が付与されました。これによりサキエルが物体を操作することが可能となります]
と文字が現れた。
(そんなんでもスキルつくれるの!?)
(はい!私が天語様にお願いして作ってもらいました)
(あの文字は天語なのね…じゃあサキエル…妖精たちが住まう場所の入り口までお願いしますね)
(分かりました!早紀さん!任せてください)
早紀は初耳の言葉に驚くももうこの世界には慣れていた。
「おっ動いた動いた」
早紀はバスが動いたことを確認すると後ろに向かう。
「ちょっと早紀?何で無人で動いてるわけ!?」
マリが目を見開いている
「ちょっとね…サキエルにお願いした」
「ん?ちょっと待て主…サキエルはインペッシブルスキルのはずだろう?」
「えっ…」
女の子も目を見開く
「あっ…忘れてたね…私早紀!そしてこの赤服の子がマリでこの黒服の女の子が朧月…古代竜だよ」
早紀が順番に説明をしていく
「私は…シルフ…」
「シルフ!?」
早紀が叫ぶ
「どうしたの早紀!?」
マリが驚いた顔で早紀を見る
「シルフと言えば…大精霊じゃないですか!?」
早紀の言葉にシルフが照れる
「まぁ…そんなことよりだな主…」
朧月が呟く
「サキエルがこの乗り物を動かしているのだとしたら…能力そのものに自我があるってことだよね?」
マリの言葉に朧月が頷く
「早紀さん…一体何者なんですか…?」
シルフが呟く
「私?私はただのAランクの冒険者だよ」
早紀が振り返り笑う。
4人はそのまましばらく話しているとバスが止まる。
「どうやら入り口に着いたみたいだね…」
4人が外に出ると早紀がバスを収納する
「ついてきてここからは私が案内する」
シルフが笑いながら先頭を歩いて行った。
「おい!人間どもが精霊の森に入ったぞ!」
木の上で弓を構えている妖精が4人を見る。
「リーダー!これを……」
と別の妖精が双眼鏡を持ってくる
「なんだと!シルフ様が……おのれぇ……シルフ様まで……」
と妖精が弓をひく
「待ってくださいリーダー!ウンディーネ様の指示がまだ……」
「うるさい!黙ってろ!お前ら!俺に続け!」
とリーダーが弓を放った。
「そういえばマリ、朧月…なにがあっても妖精たちには手を出さないこと」
「分かった!」
「おうよ!主!」
「私早紀さんに助けていただいて良かったです」
シルフが笑う
「あはは!私たちは仲良く、優しくがモットーだからね!」
「モットー?」
3人は首を曲げる
「えっと…簡単に言えば目標?というかルール?かな」
「なるほど……良いですね…!私人間たちは皆悪者だと教えられてきましたが……」
シルフの言葉に早紀が頷く
「確かに……人間は残酷で最悪ですが……それを面に出さなければ良いだけの話……人とは考えられる生き物だし」
早紀がシルフの頭を撫でる
「妖精たちは私たちが助け出すよ!」
マリが手を握る
「早紀さん…マリさん…朧月さん…本当にありがとうございます」
「まぁ…一番は早紀さんが全部決めたことですからね早紀さんに感謝してね」
マリが笑う
「はい!早紀さん!本当にありが…」
とシルフが振り返ったとき早紀の肩に矢が刺さる。
「早紀!?」
「主!」
マリと朧月が倒れる早紀を支える
「これは…毒か!」
マリと朧月が騒いでいる
「これは…」シ
ルフが周りの森を睨むと周りから大量の矢が飛んでくる。
「私が…」
「いえ…私が」
マリの言葉を遮るようにシルフが歩いてくる。
「シルフ…?」
「はぁ!」
シルフが叫ぶとすべての矢が風圧により地面に落ちる。
「私の恩人に何するんだぁ!!」
シルフの周りに緑の魔法陣が現れる
「ウインドストーム!」
とシルフの目の前には巨大な緑色の球体が現れ目の前の森をすべて吹き飛ばした。
「うわぁ…さすが上位精霊様…」
目の前にはたくさんの妖精たちが倒れているだけだった。
「2人共!早く早紀さんを!急いで!その矢には妖精たちが人間たちを倒すために作られた特殊毒です!早くしないと早紀さんが死にますよ!」
「お…おう」
朧月とマリはシルフの変わりように驚くも朧月が早紀を担いだ。
「うーん…」
早紀が目を覚ますとそこは白い空間が広がているだけだった。
「何ここ…」
「起きましたか?」
と奥から緑色の服を着た女の人が歩いてくる。
「あの…あなたは?」
「あっ…初めまして私ガブリエルと申します」
早紀は目を白くする
「あーなるほど…私は毒の矢に打たれてまた死んだのですね…今度はどこに転生させてくれるのですかぁ…?」
ガブリエルは首を曲げると納得したように笑う。
「あなたにはすでに毒無効がありますのでだいぶ軽減されていますが…特殊毒でしたので…少し眠りについたのです…そのうちに早紀さんに話したいことがありこの場所に魂を呼び込んだのです」
「話したい事?」
早紀が首を曲げる
「はい!それではこちらにいらしてください」
ガブリエルが早紀を連れて行った。
「あのぉ…これはどういう…」
目の前には赤い服、水色の服、そして黄色い服を着ている3人がいた。
「初めましてじゃな!わしはミカエル!」
「あぁ…君が早紀か…初めましてだな、私の名はウリエル以後覚えてくれると助かる」
「私はラファエルです。今後ともぜひよろしくお願いいたしますね!はい癒しの水です」
早紀はラファエルから水入りコップをもらった。
(ところで…ミカエル・ウリエル・ガブリエル・ラファエルって…四大天使スキルだったような…)
「ねぇ…そういえば私のユニークスキルに四大天使のスキルがあるのだけれどそれとは違うのですか?」
早紀が質問をすると待っていたかのようにミカエルが話を始める。
「わしたちはお主の仮契約天使じゃ」
「仮契約天使?」
早紀が首を曲げる
「まぁ…簡単に言えばわしたちの力を使えるようにするために結ぶ契りのようなものじゃ」
早紀が頷く
「でもちょっと待って仮契約天使ということは契約できるってこと?」
「まぁ…そういうことになるが…」
「実は私たちが勝手に転生するときに契約することを仮契約天使として半分の力を貸すことが出来るのじゃ…」
「なるほど…ってん?」
早紀の目にまた文字が現れる。
[ユニークスキル四大天使が消滅し代わりに仮契約天使として名前が変わりました]
「どうした?」
ウリエルが早紀の顔を見る
「天語ですか?天語が出たらステータスを確認することをお勧めします」
ラファエルが説明してくれる
「そういえば最近確認してなかった…」
早紀が左手を振る。
名前、三河早紀
性別、女性
年齢、18才
職業、冒険者・契約者
レベル1
冒険者ランク
ランクZ
アビリティ
HP200
ATK100
MP60
スキル・能力
鑑定・全属性魔法・物体操作術・言語翻訳・痛覚無効・絶対防御・思考攻撃耐性・錬金術・毒無効・麻痺無効・貫通攻撃無効・空気シールド・追跡・想像創作
エクストラスキル
自動超速回復・超速再生
ユニークスキル
RA強制解放
インペッシブルスキル
能力創作・些奇恵瑠
仮契約天使
四大天使・ミカエル・ラファエル・ウリエル・ガブリエル
契約天使
○○○・○○○
「本当だ!仮契約天使になってる!そういえば…これから妖精たちを助けに行きたいのだけど…」
早紀は妖精たちを助けるための作戦を話した。
「はぁ…」
マリがベッドに寝ている早紀の顔を見てため息をつく。
「失礼します」
と扉が開くと薄い水色の服を着た女の妖精が入ってくる。
「体調は良くなりましたか?」
と水を置く
「ごめんね…ウンディーネさん、家まで入って」
マリが頭を下げる
「いえいえこちらこそ…シルフさんの恩人に私の部下が失礼なことを…」
ウンディーネが頭を下げる
「それでは私はこれで失礼しますね…」
とウンディーネが部屋を出て行った。
「マリは人は簡単に死ぬと思っているか?」
早紀を見て悲しんでいるマリに朧月が聞く。
「人は弱いです…ちょっとの炎でも死ぬときは死ぬよ…」
マリが朧月を見る
「それは一般市民の話だろう?主はどうだ?異次元な力、耐久力、回復力で本当に死んだと思うか?」
マリは大きく首を振る
「なら…起きるまで…」
と朧月が言った瞬間早紀の体が緑色に光り輝いた。




