11話 新たな依頼
とある白い空間で、
「いやぁ…あやつ古代竜を仲間にするとはの」
「まぁいいじゃないですか?強い仲間が増えるほど早紀さんは安全になりますし…」
「私らがいる時点で早紀は安全だろ…ところで…」
「はい?どうかしました?」
「あの竜が言ってたゴブリンの事だが」
「確かに気になりますね…ゴブリンは自力で外に出ないはずですから…」
4人は頭を悩ませる
「ゴブリンマスターが出たというのが正しいじゃろ…」
「ゴブリンマスターは数千年に一度現れるゴブリンの変異種ですね…ゴブリンを一つにまとめ上げる能力を持っていて下手をすれば国を潰しかねませんよ…」
「そんなことにならなければ良いがの…」
4人はため息をつきながら頷いた。
して早紀たちが居る宿屋にある一通の手紙が届いた。
「なになに…『ゴブリン討伐依頼が出たので天優団の皆さん今日の11時ごろに冒険者ギルドに集合してください』だって」
早紀がマリと朧月をみる
「ということは主、いよいよ戦いに行くのか!」
「朧月は何でそんなに嬉しそうなのよ…」
マリがため息をつく
「いやぁ最近戦ってないから私の竜の血が疼いてきてなぁ!主!あはは!」
朧月は早紀の顔を見つめた。
(念願の転生!私はいまこんなに楽しくてとても面白い仲間に囲まれています!)
「うん!それじゃあ冒険者ギルドいこうか」
「まぁ早紀がいいならいいけど…」
「よっしゃあ!行くぞ主!」
「待って!」
早紀が朧月を止める
「気合い入れていきましょ」
早紀が片手を伸ばす
「掛け声は?」
「じゃあこれで…」
早紀がマリと朧月に耳打ちする
「恥ずかしいけど…でも」
「主の為なら!」
「それじゃあ行くよ!私たちは!仲間を守り!」
「天使のように!優しく!」
「龍のように強い!」
【天優団出撃です!】
3人はそのまま片手を振り上げた。
「ねぇ…普通に天優団出撃します!で良くないかな?」
マリが恥ずかしそうに下を向いた
「うん…そうしよっか私も恥ずかしかったよ…」
3人は笑いながら外に出た。
3人が冒険者ギルドに着くともう多くの冒険者たちが集まっていた。
「いらっしゃい!天優団の皆さん」
奥からシオンが歩いてくる。
「なんだよどんな助っ人かと思ったらあの時のAランクじゃねえか」
奥から声が聞こえる
「たしかにAランクでしたが…大丈夫です」
シオンが言うもその男は信用してないようだ。
「あ?Aランクは所詮雑魚じゃねえか」
「お前もう1回行ってみろ!」
その言葉に起こったのは早紀ではなく…朧月だった
「なんだお前!」
男が立ち上がる
「待ってください!2人とも!」
シオンが慌てて止める、周りは何が起きたのか興味ありげに覗き込んでくる。
「わが主を侮辱するのは許さないぞ!」
「朧月!」
早紀が叫ぶと朧月が慌てて手を引っ込める
「すまん主ついつい…」
「分かりましたあなたが私の事を雑魚だというならば勝負しましょう?」
「どういうことだよ」
男はまだ睨んでくる。
「簡単な話です。ゴブリンを倒した数で勝負ということですよ。私達天優団3人とあなたたちのギルドで」
「なるほど!早紀やるね」
マリが納得する
「良いだろう…そこまで言うなら受けて立とうじゃねえか…たかが3人俺たちは20人だ勝利は目に見えている」
男は笑っている。
(こんなにきれいにフラグ立てる人いるんだ…)
「あの…本当にいいんですか?あんなこと言って」
シオンが早紀に囁く
「うーんでも問題はどうやって数えるのかだよね…」
早紀が唸る
「ゴブリンは倒したら魔石が手に入るからその数でいいんじゃない?」
マリが話す
「魔石?」
早紀がマリの方を見る
「主よ魔石というのはいわゆるモンスターの力の源みたいなもので倒した場合、その魔石はモンスターの体内から外に浮かび上がり地面に落ち自動的に倒した本人に渡されるものだ」
朧月が頷きながら話す
「まぁだから拾い忘れることはほぼないかな」
マリが早紀の顔を見る
「それでは皆さん今からゴブリン討伐に向かいたいと思います!」
シオンの言葉にみんなが手を挙げた。
冒険隊一同は森の中を歩いている
「あの人たち強いのかな?率先して1列目を選んだけど」
早紀が呟く
「ただの自信過剰でしょ…」
マリが呟く
「まったく…わが主を侮辱したからには相当強いんだろうなぁ」
朧月はまだ許してないらしい。
「まぁ…ここで見せてあげましょ私たちの本当の強さをね」
早紀が前を向く
「おう!」
「皆さん!いました…が」
シオンが前の光景に唖然とする
「どういうことだよこりゃあ…軽く1万匹はいるじゃねぇかよ!」
先頭の人が叫ぶ
「どういうこと?」
早紀はマリと朧月を見る
「ゴブリンは普通に集団で行動するけど…せいぜい20匹前後のはず…」
「やっぱり…ゴブリンマスターか」
朧月が呟く
「こんなに多くてもたかがゴブリンだ行くぞ皆!」
「待て!」
朧月が叫ぶも無論聞く耳をもっていないようだ。
「朧月……ゴブリンマスターってまさか」
マリ達も先頭まで行くと崖の下には確かに億を超えるほどのゴブリンがいた。
「ゴブリンマスターは数千年に一度現れるゴブリンの変異種だ…ゴブリンマスターが現れた時世界は崩壊に向かうともいわれている」
朧月が説明する
「私たちも行く?」
早紀が朧月の顔を見る
「やっと言ってくれました主!」
と朧月が剣を抜いた。
「リーダー!数が多すぎです!」
男の人が叫ぶ
「たかがゴブリンだ!行くぞ!」
とリーダーが叫んだ時隣で悲鳴を上げた女の子がいた
「まて!」
リーダーが叫ぶも遅くゴブリンの棍棒が女性に降りかかった。
「まったく…何をしてるんだお前たちは」
と朧月が棍棒を素手で掴んでいる
「朧月!」
と後ろからマリがゴブリンを切る。
「お前ら…」
「いいか?私はあんたたちの事を許してないが見殺しになんてしたら主に申し訳が立たないからな…下がっとけ」
朧月が振り返る
「なっ…」
男は目を丸くする
「マリ」
「はいよー」
マリが詠唱を開始すると男たちの足元に術式が現れそのまま消えてしまった。
「なんだ今のは……」
男は崖の上に戻っていた
「転移術式ですね…」
女の人が下で話している3人を見る
「今はあの人たちに任せましょう」
男は黙って頷くしかなかった。
「さてと早紀さん始めますか」
マリと朧月が剣を抜く
「私はここににいるね」
と早紀に青い光がまとわれた。
「さぁ行くよ!」
と2人が猛スピードでゴブリンに向かった。
「やぁ!」
マリが剣を一振りするとまとめてゴブリンが切れる
「100匹かな」
「何を…はっ!」
今度は朧月が一振りする
「見た限り150匹倒したぞ」
朧月がマリの顔を見る。
「ずるい!」
「じゃあ勝ってみろ!」
2人はまたどんどんゴブリンを倒していく。
「2人とも遊ぶのはいいけど急いでよ!」
早紀が後ろから叫ぶ
「はいよっと1000匹目!」
朧月が笑っている。
「あいつら…なんで笑ってるんだよ…そして何でたった2人であんなにゴブリンを簡単そうに倒せるんだよあいつら…」
「天優団…恐ろしいですね…」
「言い忘れましたが」
と男たちの後ろからシオンが歩いてくる。
「天優団のメンバーはリーダーの早紀さん、そしてマリ・スカーレットさん」
「は?」
この言葉にみんなが目を丸くする。
「最後のお1人は…古代竜の朧月さんです」
しばらくの静寂があると
「なにぃいい!!?」
周りから奇声が上がる
「なんだ?」
「マリ・スカーレットさんと言ったらかの英雄の少女の弟子であり…ギルド国を一人で壊滅させたって噂の…」
「なんで最古最悪の古代竜が……」
男達が呟いていると目の前で大爆発が起こった。
「本気で行くよ!」
とマリの周りに炎が現れる
「炎燗と為せ…灼熱地獄」
マリの周りから火柱が上がっている
「わが主の為なら!はぁ!」
今度は朧月の背中に巨大な竜の羽が現れる
「古代竜の力見せてあげますよゴブリンさん」
とあっという間に大量のゴブリンを殲滅してしまった。
「冗談だろ…あれだけのゴブリン集団を一瞬で…」
男が下を見る
「さて勝負はどうする?」
気付いたら隣に3人がいた
「ふざけんな!お前!全然戦っていないじゃないか!」
男が早紀を指さす
「そこまで言うなら…」
と早紀が下に降りていく
「何をする気だ…?って何だあれは!?」
早紀の目の前には大きなゴブリンが現れる
「あれがゴブリンマスター…」
マリも目を見開く
「あぁ…間違いない…だがわが主なら」
朧月がマリを見る
「そうですね!なんたって私たちのリーダーですから」
とみんなが早紀の方を見た。
(仕方ない…ここで私の力を少し開放するとしますか…)
と早紀の足元に黄色の魔法陣が現れる
(それにしても大きいなあ…ビル3階分くらいかな)
と早紀が双剣を抜くとゴブリンマスターが斧を振り下ろしてくる。
「危なっ!予想以上に攻撃が速い」
早紀はぎりぎりで避けると斧が地面にあたる。
(うわっ…私じゃなければ即死級じゃん…)
と早紀は双剣で攻撃をする
「ぐあああ!」
とゴブリンマスターが咆哮を上げさらに早紀へと攻撃を続ける。
「まぁ…私も暇じゃないので…ここで決めさせてもらうよ」
と2つの双剣が光り輝く
「千光瞬神剣!」
早紀が両手で振り下ろした剣はゴブリンマスターの体を3等分に切り裂いた。
「本当にすいませんでした」
男のリーダーが3人に頭を下げる。
「こちらも助けて頂きありがとうございました」
女の人も頭を下げる
「もう2度とAランクの人たちの悪口を言わないこと!いいね?」
早紀がリーダーに詰め寄ると黙って頷いた
「さぁ皆さん帰りましょう!明日には報酬がありますよ」
シオンが歩いてくるとみんなはそのまま歩き出した。
次の日。冒険者ギルドにて
「え?報酬こんなにもらってもいいのですか?」
金貨や銀貨がたくさん入っている袋を覗きながら早紀がシオンに聞く。
「はい!今回は天優団の皆様のおかげでゴブリンそしてゴブリンマスター討伐が出来ました。ギルドマスター直々の報酬ですよ」
シオンが笑う
「ありがとうございます!」
早紀は報酬を収納すると3人は冒険者ギルドを出た。
「ゴブリン退治のおかげで周りからの目も色々変わったし…」
そう昨日の一件により天優団のことは【3人の大規模ギルド】もしくは【3人のギルド国】と呼ばれていくようになった。
「いやぁいいですね主!」
「良くない!」
早紀が叫ぶ
「これじゃあゆっくり暮らせないじゃん!」
早紀がベッドに顔を埋める
「リーダーなんだからしっかりしてほしいわぁ…」
マリがため息をつく
「そういえば来週から何する予定なの?」
マリが早紀の方を見る
「え?何をするって?」
早紀が慌てて聞き返す
「ほら来週から冒険に出るんでしょ?」
早紀は慌てて思い出した。
(そういえば…そうだったあ!!すっかり忘れていた)
「すっかり忘れてた…」
マリは頭を抱える
「まあその時はその時だ主!まずは休憩することも大事だぞ」
朧月が早紀の肩を叩いた。




