表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つなガール!  作者: 松竹梅竹松
第3章 春待つ夏
93/157

第3章 第1話 自分のおわりとはじまり

〇きらら



「部活もないしこのあとスイーツでも食べいかない?」


 じめじめとした空気が落ち着き、確かな夏の訪れを感じるようになった六月末。授業が終わり、帰り支度をしていた自分にそうお声がかかりました。


「だめですよっ。部活がないのは期末試験が近いからですっ。遊ぶためじゃないんですよ?」


 来たる期末試験は七月一週目から。つまり来週から試験が始まるというのにこの人はなにを言っているんでしょうか。椅子に座ってようやく見上げられるようになった水空環奈(みずぞらかんな)さんに自分は注意しました。


「でもきららって確か学年一位でしょ? あたしもギリ一桁だったしちょっとくらいサボったっていいじゃん」


 あっ! これはダメな考え方ですっ!


「いいですかっ!? そういう考えが油断を生むんですっ! そもそも自分が一位なのは花美がとっても頭が悪いからですっ! こんなおばかな学校で一位をとっても意味なんてないんですっ!」

「オーケー。みんな聞いてるから静かにね?」


 はっ! しまったです。思わず大声を出してしまいました。みなさんに失礼な発言でしたね。


「というかなんで今日なんですか? 再来週にはもう実質的な夏休みだというのに」


 まだ教室に残っているクラスメイトのみなさんに頭を下げ自分はそう訊ねます。試験が終わっても答案返却などあってまだ正式な夏休みだとは言えませんが、採点などの都合でお休みにはなっています。それなのになぜ今日突然なのでしょうか。


「んーとね、きららに会いたいって人がいるんだ」

 環奈さんの返答はずいぶん曖昧なものでした。そんなことを言われたら掘り下げるしかありません。


「その方はどなたですか?」

「んー、内緒にしといてって言われてるんだ。いや別に言ってもいいんだけどちょっと負い目もあってあんまり逆らいたくないんだよね……」

 そう言う環奈さんの顔は本当に気まずそうです。ならこれ以上詮索はできませんし、断るのも忍びないです。


「そういうことなら構いませんが……どうして自分なんですか?」


 お友だちなので信用していないわけではないのですが、さすがに少し警戒してしまいます。自分なんてどこにでもいる普通の高校生です。そんな自分を名指しするなんて怪しいです。


「心配しないで。信用できる……いやあれを信用できる……? 信用できないけどいい人……いい人じゃないよな……とにかく悪いようにはしない……ううん、あいつのことだからそんなはずないか……」

「とっても怪しいですっ!」


 なんですかその人! 当時嫌っていた珠緒(たまお)さんのこともそこまでひどく言っていなかったですよっ!?


「とにかく行ってみたらわかるから」

「えー……」


 その後十分かけて説得された自分は、渋々環奈さんに連れられて彼女たちに会うことになりました。


 それが自分の人生を変える出来事の発端になるとは、この時思いもしませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ