表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第一幕   若くして大秘術士と謳われる男の探遊記
9/192

8:石人形相手にちょっとだけ本気を出した噺

 ウイックに襲いかかるゴーレムの右豪腕を、秘術で強化した右腕で受け流し、後ろに飛ぶと同時に炎の矢を放つ。


「そりゃあ、効くわけないわな」


 無数の矢が命中しても、ゴーレムは全く意にも介さず、ウイックを追って真っ直ぐ踏み込んでくる。


 体中に埋め込まれた精霊石が、秘術の理力を吸収しているのだろう。


 声の主がここでの大技を封じたのは、この効果を最大限に使うためだろう。


「おおっと!」


 大振りの右ストレートを、ウイックは余裕で左手へ回避するが、ゴーレムの頭部が放った光弾に襲われる。


「そんなもん、こっちだって屁でもないぜ」


 戦闘前に既に発動させていた、“鏡反きょうはんの秘術”によって、光弾は放った当人に返っていく。


 だがこれも当然のように吸収してしまう。


「なんだこいつ、使っているのは魔力なのか?」


 鏡の結界に受けた波動は、理力とはほんの少し違っていた。


 理力とはこの世の全ての理を紡いだマナの全てであり、その中には聖光気、魔力と妖力、それに精霊力が含まれている。


 このゴーレムは精霊石を通じて、周辺から魔力だけを抽出して、攻撃に利用しているようだ。


「かなり高度な魔術で、生み出されたゴーレムってことか」


 生命のないゴーレムに、理力を制御させるのは難しい。


 だが魔力のみを使わせれば、今のような殺傷力の高い光弾も生み出せる。


「けっこうヤバいな、こいつは」


 ミルの方はどうなっているのか?


 ウイックは戦闘を継続しながら、視線を横に向ける。


 ミルは無数の光弾を、全て巨大な剣で払いのけ、隙を見つけては、果敢に殴りかかっている。


「ちょっとウイック、これ全然切れないじゃない」


 そう、大きな剣を振り回して、殴りかかっているのだ。


「しょうがないだろ。刀身を守るのが精一杯だ。そんなので斬り裂こうなんて、大剣豪でないと無理な話さ」


 殴りかかった箇所が、陥没するほどのダメージを与えても、少しの間で回復してしまうゴーレムに、イライラが積り始めたミルに、ウイックの一言が変なスイッチを入れさせてしまう。


「やってやろうじゃない。殴って倒せないなら、斬り刻んでやるわ」


 “堅硬けんこの秘術”で固めることで、棍棒状態になっているグレートソードで斬るなんて事は、伝説級の大剣豪でもないとできるはずがない。


「せいやー!!」


 本気を出したミルは、人智を越えた集中力を見せた。


 一刀のもとに斬り落としたゴーレムの腕は重く、大きな音を立てて石畳の上に落ちた。


「マジかよ……」


 並の剣士ではないとは思っていたが、奇跡の一閃を、いとも簡単に成し遂げようとは。


「嘘でしょ!?」


 ミルは驚愕した。凄まじい回復能力を持つゴーレムだが、まさか落とされた腕が瞬く間に塵となり、元ある場所で復元してしまうなんて。


「半端じゃねぇ回復力だな。試練と呼ぶには、あまりに難易度高すぎないか?」


 ウイックは剛拳を目一杯に振るい、相手の表面をボコボコに変形させるが、それもまた瞬く間に復活してしまう。


「おい、観ているか?」


『なんだ?』


 ウイックは奥の壁に向かって大声で語りかけ、向こうも待っていたかのように、直ぐに返してくれた。


「試練というなら、打開のヒントくらいは、もらってもいいと思うんだがな」


 自惚れではなく、自分達がこれだけ能力を発揮して、まったく突破口も見えないなんて、これじゃあ並の冒険者では、どうにかできるとは思えない。


『そうだな……』


 最初から攻略させる気はないのかもしれない。


 だがこうして、こちらの問いに答える気があるように感じるのは、少なくともウイック達を気にしているに間違いないのだ。


『いいだろう。ヒントをやる。そいつらは二つで一つだ。片方だけを倒しても、もう片方が欠落を補うように魔力を送る』


 つまりはこの強力なゴーレム二体を、同時に片づけなくてはならないと言うことだ。


「ヒントというより答えだな」


 実のところウイックには鑑査かんさを使ったときから、このゴーレムの弱点は見えていた。


 ただその二つを同時にと言う発想がなかっただけに、なぜそんなに分かり易いところにウイークポイントが見えているのかが理解できなかった。


「なるほど、同時にか。そうだなぁ……」


 それならウイックには、一人でもどうにかできる手が幾つかあるが、一度手を組んだ以上、相棒にも見せ場は残さないといけない。


「ウイック、どうするの? 何か分かったんでしょ?」


 まだまだ余裕は残しているようだが、精神的に辛そうなミルは答えをいた。


 コツを掴んだのか、今はゴーレムの装甲をスパスパと斬り刻んでは、回復されるを繰り返している。


「そうだな。俺はお前みたいに、一撃でこいつのコアをぶっ壊すことはできないから、先ずは俺から攻撃する。お前は俺の合図に合わせて、そいつの頭からど真ん中を、縦に一刀両断してくれ」


 ウイックは剛拳ごうけんに雷の属性を追加。


 ゴーレムの回復力を遅らせて、少しずつ敵の装甲を剥ぎ取り、露出するコアを確認した。


 あと少しで打ち抜けるところまで砕いたところで、ミルに合図を送った。


「……動きが止まった?」


「あぁ、勝負あったな」


 期待通りにミルは、一太刀でゴーレムを真っ二つにしてみせた。


 ウイックも最後の一撃でコアを破壊し、これでは流石の魔力人形も復活は不可能。


『ちょ、ちょっと、嘘ですよね? そ、そんな……』


 明らかに動揺した声は、返還されることのない少女の物。


「これで試練は突破でいいんだよな。奥に進んでいいのか?」


『えっ? あっ、はい。じゃなかった! ……しょ、しょうがない。その部屋の結界を解くから、進んでくるがいい』


 乱れた口調を元に戻し、声は二人を神殿奥に招き入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ