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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第一幕   若くして大秘術士と謳われる男の探遊記
16/192

15:女王陛下が秘術士の願いを聞き入れてくれる噺

 かつて神話の時代よりそびえ立つ神聖樹。


 その大木は平行世界の別次元を結びつけ、五つの世界を行き来できる門のある、神木として、全ての世界の住人達から崇められている。


 住民のほとんどが人種ひとしゅであり、最も大きな空間を持つ世界、ウイック達が住まう大海洋界フォルティナ。


 天使の住まう、天上界オーガイル。

 魔人や魔物の出生の地、魔門界ゲーゼンバルド。

 生きとし生けるものの生と死を司る世界、霊冥界エーゲ。

 そして数多の精霊と、精霊の加護を受ける人種ひとしゅの女性のみが住まう世界、精霊界ラムーシュ。


 ウイックら秘術士は、訓練で理力を吸収する術を身につける。しかしここラムーシュでは、生まれつきの本能で、個人個人で差はあれど、その体に精霊力を蓄えることができ、蓄える許容量に応じてランク分けがされる。


 精霊の力が強ければ強いほど、体の成長は遅くなり、中には年相応に生育する者もいるが、女王ティーファのように、実年齢との差がかなりある者も出てくる。


「因みに私は陛下と同い年です」


 そう言った女王の側近であるエレノアは、見た目で言えば、ウイックと同い歳くらいなのだが、彼女くらいが平均的な成長度合いなのだそうだ。


「へぇ、つまり女王陛下は、それだけ強い精霊力を蓄えているって事か」


「そう言うことだ。年上は敬うもんだぞ」

「確かに驚きだな。けど悪いな俺は育ちが良くねぇから、年齢にかかわらず敬うってことを知らないんだ」


 イシュリーやミルも社交辞令は心得ているが、ウイックが変に飾ったところでボロしか出ない。だったら最初から無礼講を承諾してもらう方がいい。とそう言いたいのだ。


「構わんよ。私は無骨者も決して嫌いではない。むしろそこまで砕けると、いっそ清々しいものよ」


 どうやらウイックは女王に気に入ってもらえたようで、快く滞在を許可してくれた。

 しかし必要なのは滞在の許可だけではない。


「秘宝ハンターと言うのだろう? お主らのような者を」


 この世界を自由に探索し、値打ちある物を取得する権利を貰わなくてはならない。


 大海洋界では、お宝の発掘こそを優先とする、冒険者協会の世界協定により、発掘者が手に入れた採掘物は、協会との交渉を優位にできる権利を持ち、場合によっては売買に応じなくても咎められることはない。とされている。


「それで構わんよ。そもそもお宝というのも価値を見出せんからな。私たちには日々の平穏こそがお宝なのだよ」


 単にお宝のような物が残される器、遺跡などはほぼ発見されておらず、ここには冒険者などが存在していない。


「貴重な物はそうだな、もし見つけたら交渉だけはさせてくれ」


 話はトントン拍子で進んでいくが、先述通り遺跡などはほとんどない。と断言されるほど、この世界は隅々まで人の手が加えられているらしい。


「折角だが、そういうことでな。好きにしていいとは言ったが、期待には応えられんかもしれん」


「神聖樹の側に洞穴があるだろう。あそこの探索を許可してくれるか?」


 神話の時代からそびえ立つ神聖樹。ここ精霊界ラムーシュでは、首都ラクシュよりさほど遠くはない山岳地に生えている。


 神聖樹にある異世界に通じる門は、その根の先端にあり、そこは地中深く、唯一の通路として地上に伸びる洞穴が存在した。


「しかしそんな洞のことをよく知ってたわね」


 ここまで偶然に来たも同然のミル達二人にとって、情報はないに等しいはずなのに、ウイックにはなにやら当てがあるようだ。


「確かに洞はあるが、あそこには強力な魔物もたくさん棲みついておる。そやつらをどうにかしてくれるなら、願ったり叶ったりなんだがな。その辺りも含めて食事を取りながら話そうではないか」


 どうやら双方の利害は一致したようだ。

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