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嘘から始まった世界で

名もなき花の精霊

作者: 花染

 神アークルと精霊の母となったイフティナが約束を交わした日に生まれた新たな精霊。美しく気高い女性の姿をした勇気の精霊の名は、バルキニー。


 バルキニーは、精霊でありながらあらゆる生命に時代、時代と生まれ変わり生きてきた。何故なら彼女は、世界を守るために精霊として生きるより一つの個体で、生きるよりも多くの個体で、生き物に寄り添う事で、平和を世界を守って来た。


 ある日の事、繰り返す争いを止めていたバルキニーを哀れに思ったのか、愚かな種族の争いを見続けていた希望の女神は、無力な自分に疲れたのか、女神の体を捨て人になろうとした。しかし、それを許さなかった世界は、彼女の魂に聖なる炎を纏い永遠の命を待つ精霊フェニッスとして、生きるようにした。


 彼女は、悲しみ、憎み、苦しみ、恨んだ。その負の感情が、捨てた体に流れ込み一つの魂をが宿った。


 負の感情。負のエネルギー。全て女神に流れ込み、彼女が現れると不幸が訪れると言われ人々は、こう言った“死の女神ヘル”と


 世界を守ることが仕事であるバルキニーは、不幸を呼ぶ死の女神ヘルを殺す事で、世界を救う事に繋がると考え、もう1人の女神“救いの女神アスト”に願いを求めた。


「解った。ならお前の魂を8つに分け七つの神器を作ろう。お前の力である火、水、地、風、光、闇、そして精霊の力を石に込め心と願いが強く持った者に力を貸す。

 お前は、バルキニーと言うのをやめ、新たな適合者、精霊の力を持つ神器が使える者、人間を探し出しヘルを殺しなさい」

「と言うことは、私は、もうバルキニーとして役目が終わったという事ですか?」

「希望を失った人々には、もう勇気がないのだよ」



 バルキニーは、その言葉を聞き歯を食いしばりながらもう一度こう言った。


「バルキニーと名乗れない私は、なんと名乗れば良いのですか?」

「かつて、イフティナが精霊の母となる前である花の精霊として、生きなさい。そして、名は、魂のかけらであるお前は、ダストにしょう」

「ダスト…」


 ダスト。チリ、こほり、ゴミ。要するに彼女は、女神アストにとってもう必要がない存在。それを理解したバルキニー改めダストは、歯を食いしばりこう言った。


「勇気ある者なら誰でも力を与える者として私は、生きてきました。だから神器を使える者は、勇気がある者だけとなります。私の意思は、石となり。言葉は、言霊となり。勇気は、希望となります。だから、けして誰でも使えるような物では、ないでしょう。そのうえ、精霊の力は、人間では、扱えません」

「だから、その者をバルキニーにするのです。人が起こす争いを人が止めるべきであり、精霊や神が止めるのは、間違っています」

「…人間を人であり精霊でもある存在にしていいのですか?」


 ダストの問いにアストは、少し黙って、ニッコリと微笑んだ。そして、頬を触りこう言った。


「貴女が一番理解している筈ですよね?」


 “理解している”そう言えば、簡単だ。だから、希望の女神であることをやめたフェニックスもその悲しみと苦しみが流れ込んで生まれた死の女神ヘルもそして、生命を否定し続けていた守りの神アークルも理解している。


 平和を守るとは、なんだろうか?世界を守るとは、なんだろうか?


 ダストは、息を飲みアストを見た。


「解りました。それが私の役目なら何でもやりましょう」

「いいですか?ダスト。もし貴女が裏切ったら花となりそして、その美しさを誰にも見られず触れたものは、全て切り裂く荊に覆われるでしょう。私が許すまで、貴女は、永遠に咲き、万が一目にした者が居るとすれば、その者の魂と記憶を奪う花として、皆に恐れられる花になります。


 私の期待を裏切らないで、下さいね」


 背筋が凍るような笑顔。ダストは、深々とお辞儀をして、その場を後にした。


 アストは、誰よりも恐ろしい者だ。


 アストは、人々から救いの女神と言われる理由は、彼女は、知っている。しかし、アストは、それをアークルに知られないように騙し嘘をついている。


 ダストは、空から世界を見て、深呼吸をし魂を8つに分けその中の7つを石となり流れ星のごとく地上に流れ落ちていった。


 8分の一となったダストの残りの魂は、先ほどよりも小さくなり幼女の様な姿になりほんのすこしだけ残った精霊の力で、自分とそっくりな人間を探した。


 そっくりな人間と言っても外見や中身ではない。その者が誰よりも勇気があり、誰よりも正義感があり、誰よりも悲しみも苦しみも知っている者だ。


 ふと、1つの国のお姫様に目に付いた。その姫は、綺麗なオレンジ色の長い髪を可愛らしいリボンで結んでいるが、瞳を隠す様に見ては、ならない様に目隠しをしていた。


「誰?」


 物音に気が付いたのか姫は、ダストがいる方へ振り向いた。当然彼女のには、ダストは、見えません。ダストは、姫に近づきこう言った。


「私は、ただの花の精霊。ソナタは?」

「あたしは、ビオラ」

「ビオラ。どうして、目隠しをしてるの?」

「多分あたしが目が見えないのに人間なのに奇跡を起こすからだよ」


 奇跡。その言葉を聞いて、ダストは、ニッコリ微笑んだ。


「ど言う奇跡なの?」

「あたしの目を見るとなんでも1つだけ願いが叶うらしいの。あたしの願いは、叶わないのに、ね」


 ダストは、考えた。そして、何か思いついたのか、不気味に微笑みビオラの近くへと座った。


「ソナタの願いは何?」

「私の願いは、世界を見たいかな?この目で、いろんな処へ行って、いろんな人と触れ合って、いろんな物を見て、聞いて、知って…あたしの目に光があったらなんでも見えるって思うよ。君は?」

「私は…」


 この美しい世界を守りたい。そんなことを言えず少しだけ考え


「名前が欲しい」



 バルキニーとして生きてきた。しかし、彼女は、女神に名前を奪わられダストど言う名になった。しかし彼女は、気に入ってない。だから、少しでも早くバルキニーの素質を持っている人物を探して、ヘルを殺せば世界を守れる方が出来る。そして、名をダストから変われる。


「そうだ。良いことを思いついた。私は、ソナタの願いを叶える。ソナタは、私の願いを叶えるって言うのは、どう?」

「あたしが君の名前を?」

「そう。まず私からな」


 そう言えば、彼女は、必ず名前を付けてくれる。そして、続く言葉にも聞いてくれると考えたダストは、彼女に魔法をかけた。すると不思議そうにビオラは、目隠しを外してあたりを見た。


「凄い!ありがとう」

「じゃあソナタのばんだよ」

「じゃあ…君の名前はーーー






 




 カガリ」

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