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ミネ☆ぷり  作者: 千豆
第六章「学祭で××ハプニング」
34/52

‐27


「タカキ、どこ行く?」


ナイトのお手伝い効果もあって、琥珀糖含め、甘味サークルのお菓子は全て午前中までに完売してしまった。


「ナイト、ミスターコンは?」

「14時くらいから、そっちに引っ張られるけど、それまで空いてる。明日もミスターコン以外は、空ける予定だったんだけど、実行委員に聞いたら、コンテスト以外の時間は、取材でいっぱいらしい」

「じゃあ、今日、回れるだけ回ろう」

「そうだな、初めての参加だし。結構、どこ見ても新鮮だ」

「去年は、家の用事で参加できなかったからな」

「そう! だから、今年こそ、タカキと学祭を回れるのが、嬉しくて!」

「うん、俺も。ナイトは、屋台で何か食べるの、抵抗ある?」

「ない! タカキと一緒なら、何でも食べたい!」


嬉しそうに笑うナイトを見て、後ろで流れ弾に当たった女の子たちが、バタバタと倒れていった。

いつぞやの投げキッスの威力のようだと、タカキは考える。

だが、あの時と違い、今は無意識にやっているから、恐ろしい。


「タカキ、行こう」

「うん。そう言えば、あれからセブキ会長は、大丈夫だったか?」

「あー……なんか、様子がおかしくてさ。俺も、説教あるかなーって戻ったんだけど、何故か夕飯は、俺の好物ばかりだったし、何か、父さんがチラチラこっち見てるんだよ。ナイト、欲しいものはないか? とか、ナイト、テストはあったのか? なんて聞いてくるから……不思議で仕方ない」

「うーん。気持ちはわかるな」

「え?! わかる?! 俺、全然わからない」

「その内、答えがわかるよ。ナイト、何が食べたい?」


二人で、学祭のパンフレットを見ながら、屋台を巡って行く。

意外と、本格派な店が多かった。

スープや、変わり種の焼き鳥、各国の民族料理、田舎のB級グルメなどを巡りながら、行く先々で、ナイトが声をかけられる。


「あ、ミスターコンのイケメン御曹司じゃん! 頑張れよ!」


「キャー、恰好いい! 写真で見るよりも、イケメン!」


「見て見て! あの人、エントリーしてる人じゃない?」


「キャァア! 手を振ってくれた!」


まるで、芸能人のようだとタカキは思った。

だが、あながち間違ってはいない。

この後も、雑誌の取材が入ってる上に、明日もテレビ取材や、イベントに出演する予定なのだから。


「そう言えば、明日、ミキも来るとか言ってたな」

「ミキちゃん? 仕事? それとも、大学の下見?」

「生意気なことに、下見も含めているんだと。いつの間に、そんなに勉強してたんだか」

「努力家なんだね」

「タカキは、明日の予定は?」

「今日と同じで、販売する予定。ナイトの応援にも行くよ」

「タカキが来てくれたら、百人力だ!」

「俺のは、一票にしかならないよ」

「でも、俺に投票してくれるんだろ?」

「もう、投票したよ」

「タカキ……!」


タカキのVサインのピースを見て、ナイトは、両頬をおさえる。

ナイトにとって、タカキからの票が一番大事なのだ。


だが、しばらく学祭を回って、楽しんでいたところ。

ナイトのスマフォに、連絡が入る。


「あー……ごめん、タカキ。呼び出されちゃった」

「うん、いってらっしゃい。頑張って」

「うん! この後は、ずっと捕まるだろうから、また明日な」

「また、明日」


タカキは、ひらひらと手を振ってナイトを見送った。

すると、後ろから、聞きなれた顔がする。


「オイ! この焼き鳥うっまいなー!」

「お! お兄さん、味がわかる人ですね!」

「凄いな、学生の屋台のレベルを超えてるよ、な!」

「……美味しい、」


もぐもぐと焼き鳥を食べている、クラゲとクロノス嬢のところに、タカキがひょっこり顔を出した。


「クラゲさん?」

「「ぎくっ」」

「……と、お嬢さん?」


タカキは、二人の姿を見て、どんな関係なのかと不思議に思う。


「よ、よぉ、タカキ! 元気か!」

「学祭、遊びに来たの?」

「えっと、まぁな! つい、楽しみ過ぎちゃって、目的忘れそうになってたけど、お前に会いに来たんだぜ?」

「そうだったんだ」


タカキは、屈んで、お嬢さんと目線を合わせた。

膝をついて、手を差し出す。


「こんにちは、タカキです。初めまして」

「はじめまして……」

「お名前を聞いても、よろしいですか?」


丁寧な紳士的な態度で接するが、クロノスは自分の名前を言うわけにはいかない。

そのまま、困って、オロオロしていると、クラゲが助け舟を出した。


「あだ名は、クロちゃんってんだ、な!」

「……クロちゃんって、俺が呼んでもいい?」


クロノスは、コクンと頷いた。

タカキは、ニコリを笑みを見せる。


「さっきまで、俺もお菓子売ってたんだけど、今日の分は売り切れちゃった。明日も来る?」

「あぁ、来る予定だよ」

「なら、明日は、クラゲさんたちの分取っておくね」

「おー、あんまり気を使うなよ! それよりも、タカキは出ないのか? あれ」


クラゲが指差したミスターコンのパネルを見て、タカキは首を横に振る。


「出ないよ」

「勿体ないなぁ、綺麗な顔してんのに」

「若い頃のクラゲさんは、こういうイベント好きそう」

「あー、まぁ、選ばれることはなかっただろうがな。俺、ヤンチャしてたから」

「納得」

「コラ、コラ!」


すると、そんなやり取りを見ていたクロノスが、クスリを笑った。

それを見て、タカキも笑顔になる。


「パンフレットの、ここと、ここのお店、美味しかったよ。後は、ここ、オススメ」

「タカキは、これからどうするんだ?」

「知り合いの子が、劇に出るから観てくる」

「ほほう、観劇か」

「この間の、あの子だよ。店にいた、ウエイトレスの」

「あぁぁぁ! あの可愛い子な! なんだ、付き合ってるのか?」


クラゲの質問に、タカキは再び首を横に振る。


「付き合ってないよ」

「なんだ、そうなのか」

「クラゲさん、俺の近くにいる人、全員にそれ言いそうだね」

「おっさんになると、何でも口にしちゃうのよ! それより、その劇って、俺らも見れるの?」

「もちろん、案内するよ」


タカキに連れられ、クロノスとクラゲは、コナカの劇を見に行くことに。


コナカには、ミネラル戦士のマリンがついている。

アンクレットがマリンの媒体だ。

コナカは、マリンと相性が良く、実はFSの一部のエリアで、マリンと密かにトレーニングを重ねていた。

その事実を、クロノスだけは知っている。

タカキとは、違うエリアのFSなので、タカキもライトも、このことを知らない。


コナカとマリンは、いざと言う時に、タカキとライトのサポートができるようにと、また同盟を組んだのだ。

二人にとっては、今度こそ、お互いに協力し合える関係となった。


ライトにもコナカにも、変身している時に会わなければ、クロノスの存在がバレることはない。


だが、いつ変身してもおかしくはない状況だった。

実は、クラゲとクロノスは、遊びに来ていたわけではない。この学祭に、またミネアンビーが現れる予兆があったのだ。

なので、パトロールもかねてきているのだが、予想以上に人が多く、二人は、学祭で怪我人が出ないか、冷や冷やしていた。


ミネラリアンとビーが混ざった、ミネアンビー。

普通人間にとり憑くことはないが、ミネラル戦士を纏った人間の心に入り込むことができ、さらには、操ることができる。

万が一、ここに新たなミネラル戦士がいたとしたら、戦いは免れないだろう。

今まで、マリンもウパラも救出はできたが、実際に今後も救えるとは、限らない。

タカキたちは、もちろんのこと。

クラゲたちも、そこは、慎重に動くようにしていた。


そして、この学祭に出ることまでは、掴めたものの。

学祭のどこに出るのかは、わからない。

クロノスは、アンテナを伸ばしながら、学祭の隅々を観察していた。


「チケットは、これ。席は自由だよ」


タカキが手に入れてきたチケットを手に、クラゲとクロノスは、タカキの隣へと座った。

開演のためのブザーが鳴り、会場が暗くなると、タカキは、劇に集中する。


間もなくして、始まった劇に、クラゲもクロノスも、普通に感動してしまった。

コナカは、活き活きと演技している。

タカキは、そんなコナカを見て、優しい笑みを浮かべた。

素晴らしい演技に、会場からは、拍手が湧く。


「すっげぇな……」

「うん、」


ボソリと呟いたクラゲの言葉に頷く。

舞台の中で、くるくる変わるセットも面白い。

そして、人物の動きがダイナミックで、見ごたえがある。

指先まで、しっかりと演技している姿は、圧巻だった。


終わった後に、全力で拍手をする。

クロノスもクラゲも、目をキラキラさせていた。


「すげぇ!!」

「凄い…!」


タカキは、内心で、この人たち、何だか似ているな。と思っていた。



「はぁー! 楽しかった!」

「素晴らしい舞台だったわ」

「俺も初めて見た時は、感動が凄かったな」

「普段は、別のところでやっているのか?」

「うん、そうだよ」

「いいな、そっちも観に行きたいわ!」

「また、誘うよ。クロちゃんも」

「えぇ。ありがとう」


クロノスが御礼を言う。

すると、クラゲがいきなりタカキの肩に腕をまわした。

そして、コソコソ話をするように耳元で話す。


「オイ、聞かないのか?」

「何を」

「クロ……ちゃんのこと」

「話していいことなら、自分から言ってくれるでしょ。言わないってことは、聞いて欲しくないことなのかと思って」

「……相変わらず、大人だなぁ」

「違った?」

「違わない。だけど、悪いことはしてないぜ?」

「疑ってないよ。大丈夫」


タカキの言葉を聞いて、クラゲは、唇を尖らせながら、拗ねた顔をした。


「クラゲ、何をしているの?」

「拗ねた顔」

「何故?」

「タカキってな、時々、俺より大人なんだよ」

「あら、貴方が子供なだけじゃない?」

「えぇ、俺って、そんなに子供?」


クラゲとクロノスのやり取りに、今度はタカキが笑う。


「さっきも思ったんだけど」

「ん?」

「クラゲさんと、クロちゃんって、ちょっと似てる」

「え?!マジで?!」

「……そう?」


二人は、顔を見合わせながら、不思議そうに首を傾げた。



その時。


「タカキさん……!」

「あ、コナカちゃん。お疲れ様。観てたよ。凄く楽しかった」


コナカは、顔を真っ赤にして、頬を抑える。

タカキに褒められて、幸せで溶けてしまいそうだった。


「う、嬉しいです!タカキさん!ありがとうございます!」

「この間、お店に行った時の友達も一緒に観に行ったんだ」

「へ?」

「こっちの……あれ?」


タカキが振り返ると、そこにはクラゲの姿もクロノスの姿もなかった。


「タカキさん?」

「……何でもない。友達も凄く感動してたよ」

「ご友人の方まで、本当にありがとうございます!」

「うん、コナカちゃんはもう帰るの?」

「その、予定だったんですが、みんなが、俺たちは先に帰るけど、えっと、タカキさんに挨拶しておいでって言ってくださったので、」


コナカが照れながら、言うと、タカキはニコッと笑い返した。


「時間あるなら、一緒に学祭まわる? まだ、お店色々見れるよ」

「へ?!い、いいんですか?!」

「もちろん。エスコートが俺でいいのなら」


コナカは、顔が取れそうなくらいに頷いた。

こんな機会(チャンス)は滅多にない。

コナカは内心、初デートじゃないかと、ドキドキしていた。


「じゃあ、行こうか」


タカキはパンフレットを広げながら、コナカを案内する。

屋台で、甘いものを買ったり、展示物を見たりしながら、学祭を楽しんだ。

コナカにとって、大学すら初めてだったので、貴重な体験だった。

小さいコナカと小さいタカキは、高校生によく間違われる。

コナカとタカキは、最後に手作りアクセサリーを売っている場所に来た。


「わぁ、凄く細かい〜!」

「よかったら、鏡で合わせて見てくださいね」

「はい!ありがとうございます!」


販売している学生に、ハキハキと答えている姿を見て、タカキは思わず微笑んだ。

その笑顔を見て、コナカは首をかしげる。


「どうかしましたか?タカキさん」

「いや、出逢った頃より、人見知りが随分と消えたなって、」

「あ、あの頃のことは……忘れてくださいぃ〜〜…」

「自信が持てるようになったからかな?前より人前で堂々としてる」

「ま、まだまだですが……へへ」

「凄いね。前から素敵だったけど、コナカちゃんはどんどん、魅力的になっていく。時が経てば経つほど、美しくなるなんて、まるで、桜の花みたいだ」

「ふぇ?!」


ボンっと爆発したように真っ赤になったコナカは、手をプルプルと震わせた。

すると、タカキは、1つの髪飾りを見つける。


「これは?」

「あ、髪飾りです! こっちのピンとこっちのピンが繋がっていて、こんな風になります」

「コナカちゃん、髪に少し触っても平気?」

「へ?!あっ、何でも!!平気です!」

「ありがとう、ちょっとジッとしててね」


説明を受けたタカキは、それをコナカの髪に合わせた。

コナカは、ピクリとも動かずもはや、固まっている。

ドキドキと心臓を跳ねさせながら、コナカはタカキが自分の髪に髪飾りをつけ終わるのを待った。


「こんな感じ?」

「そうです!わぁ、可愛い!お客様、とてもお似合いです!」

「よかったね。じゃあ、これ下さい」

「はい!」

「えっ、待ってください、タカキさん!」


コナカが財布を出す前に、タカキはサッと払ってしまった。

手早くお姉さんが、コナカの髪飾りの値段だけ外していく。


「それ、コナカちゃんに、凄く似合ってるから、俺からプレゼントしたいんだ」

「お、お金払います!」

「勝手な贈り物だから、気にしないで。気に入らなかったら、外してもいいよ」

「気に入らないなんて…あるわけないじゃないですか、もぉ……」


コナカは、幸せが過ぎて、どうしようかと思っていた。

こんな幸せでいいのかと。

タカキは、笑顔でコナカを見つめる。

そんなタカキの笑顔が眩しくて、コナカはタカキのことが直視できなくなってしまっていた。


「はぁ……タカキさん、」

「ん?」

「ありがとうござい、ますぅ……」

「どういたしまして。妖精さん」

「ヒィンっ!」


こうして、タカキの学祭1日目は、無事に幕を降ろしたのだった。


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