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『乗っ取られたって、どういうこと?!』
ライトが、タカキの心の中で叫んだ。
「イリコ・マギアの欠片の力で、ミネラル星で進化した化け物の能力を、地球にいる鉱物たちに送り込めると、鬼紅石が言っていた」
鬼紅石とは、タカキが最初に戦った敵のことだ。
ただの隕石だったはずの鉱物が、見る見る内に、化け物と化していった。
「力が送り込めるという事は、何らかのキッカケがあれば、地球に送りこまれたミネラル戦士にだって、化け物の力を送り込むことが出来るはずだ」
『ミネラル戦士に、力を送り込むですって?!』
「ミネラル戦士は、まだ本来の力を取り戻せたわけじゃない。慣れない地球で弱っているところに、強い化け物の力が襲いかかってくれば、その精神を乗っ取られてもおかしくはないだろう」
タカキの言葉に、ライトはゴクリと息を飲み込んだ。
「鬼紅石の目的は、ミネラル戦士を倒すことではなく、捕まえることだった。という事は、おそらくミネラル戦士の力を、ドローンは狙っている。生きて捕らえたいと考えているのなら、力で抑え付けるよりも、中から操ってしまった方が簡単なはずだ」
『そんな……』
タカキの冷静な分析を聞いて、ライトは怯えた。
『じゃあ、今のあの子は……』
「ミネラル戦士の力で人間と連結したけれども、化け物に精神を支配されている……ドローンの手下だ」
ミキは、オパールの鉱物、ミネラル・ウパラの力によって、ミネラル戦士に変身した。
青と緑とオレンジ色の宝石が、ミキの身体を纏う。
顔は、化粧が施されたミキの顔になった。
髪の毛は伸び、グラデーションに光る髪は、青緑とオレンジに輝いている。
「ミネラル星に選ばれし、戦いの鉱物 透き通る水の戦士、ミネラル・ウパラ!」
『ウパラ……!』
目の前にいるのは、間違いなく、ウパラだった。
けれども、ライトの知っているウパラとは、雰囲気が全く違う。
そのオーラは禍々しく、暗黒のエネルギーを放っていた。
「私は、あんたを、許さない……!」
「……ッ!」
彼女は迷いなく、攻撃を仕掛けてきた。
そのことが悲しくて、一瞬、ライトの瞳が揺れる。
だが、落ち込んでいる暇はない。
ライトは、タカキに向かって叫んだ。
『タカキ! 変身してっ!』
「わかった」
タカキは、指輪にキスをした。
輝く光が、タカキを包み込んでいく。
髪が伸び、骨格が変わった。
宝石が宙を舞い、次々に、タカキの身体に装着される。
タカキは、あっという間に、ミネラル戦士に変身した。
「ミネラル星に選ばれし、戦いの鉱物! きらめく光の戦士、ミネラル・ライト!」
戦闘モードに入ったはいいが、仲間相手に戦うのは躊躇される。
牙を向けてくるとは言えども、相手は、ライトの大切な仲間なのだ。
『タカキ! 少しだけ声帯を貸して!』
「いいよ」
ライトは、タカキの声を借りて、言葉を発した。
「ミネラル、ライト……ッ」
「ウパラ! 一体、何が起きたの?! 目を覚まして!」
「うるさい!」
彼女の叫び声と共に、窓ガラスが割れる。
タカキは、頬に傷を負った。
「ミネラル星は終わりだ、私たちの力では、絶対に勝てない……!」
「だからって、ドローンの仲間になるつもり?!」
「黙れ! どっちにしても、結果は同じだ! 私たちは負けたんだ!」
「そんな事ない! 強くなって帰れば、きっと……っ!」
ライトの言葉に、ミキは声を震わせた。
だが、それは、ミキの心じゃない。
ウパラの叫びだった。
「あんたは、いつもそうよ……!!」
「え……?」
「ライトは、昔からなんでも出来た! 才能だってあった!! ミネラル戦士に選ばれる為に、私がどれだけ頑張ってたか、知らないでしょ! 血の滲むような努力をしてた、でも、それでも、あんたには敵わなかった!!」
「ウパラ……!」
誰から見ても、ウパラは、努力家だった。
彼女が言うように、血の滲むような努力をしていたのは、間違いない。
だが、ウパラは、その努力が苦だったことを、表に出したことがなかった。
「結局、努力なんて意味ないのよ……! 才能ある人間には、叶わない、元から綺麗な奴には勝てない、いくら努力しても、無駄なんだから! 結局は、意味なんてない!!」
「そんな事ない!」
「アンタに、何がわかるのよ!!」
ウパラの心と、ミキの心がリンクする。
ミキの攻撃により、タカキの身体は、ベランダの外へと吹き飛ばされた。
13階から、放り投げられた身体が地面へと落ちていく。
スローモーションのように鮮やかに広がる青空を見ながら、タカキの脳に、ライトの記憶が入って来た。
「――……!」
それは、ミネラル星にいた時の、ウパラとの記憶だった。
彼女は、いつも頑張っていた。
雨の日も。風の日も。
どんな時でも、弱音を吐かずに、いつも前向きに生きていた。
その頑張りを、誰もが認めていた。
だけど、口に出して、それを伝えた事はあっただろうか。
思っているだけでは、伝わらないのに。
どうして、言葉に出してあげなかったんだろう。
ライトのごめんね、と言う声が、タカキの脳に響いた。
地面との距離が、どんどん近づいていく。
ライトは、タカキの中で、目をカッと開いた。
『タカキ、クレモス…!!』
ライトの言葉に、タカキは直ぐに反応した。
空中で身体を回転させ、地面に向かって、クレモスの盾を発動させる。
「クレモス!」
すると、それがクッションの代わりとなり、何とか地面に叩きつけられるのを回避できた。
下には報道陣が沢山いたが、窓ガラスの破片が落ちてきたことにより、少し離れたところに退避していた。
だが、どんなに危険な状況だろうと、マスコミはマスコミ。
タカキに向かって、慌ててカメラを向けている。
「なんだ、あれは! 撮影か?!」
「あの部屋は、ミキチーの部屋だよな! あそこから飛び出してきたぞ?」
「うひぃー! 特ダネだ!」
今は、カメラを気にしている場合ではなかった。
けれども、報道陣たちを野放しにしておくわけにはいかない。
「ライト、あれを何とかすることはできる?」
『多分できるわ! ライト・スプラッシュと叫びながら、彼らに向かって右手の掌を向けてみて!』
タカキは言われた通りに、彼らに向かって手を突き出した。
「ライト・スプラッシュ!」
すると、瞬く間にフラッシュのような光がタカキの手のひらから放たれ、バタバタと報道陣たちが倒れていった。
「気を失ったのか?」
『大体の生き物なら、あれくらいの発光エネルギーを受ければ意識くらいは飛ばせるはずよ。これで、何とか誤魔化せるでしょ。電子機器も、今のでデータが吹き飛んだはず』
「なら、よかった」
『今は、それよりも目の前の相手を意識して! 今度の相手は、一筋縄ではいかないわ』
窓ガラスから、同じように飛び降りてきたミキを見て、タカキはグッと拳を握った。
「おかしいな。精神を乗っ取られたはずなら、ウパラの意識も奪われているはず。けど、彼女はちゃんと、ライトと会話をしていた」
『……戦っているのは、ウパラ自身だってこと?』
「いや、それなら、ライトが感じた敵のエネルギーの説明ができない。きっと、まだ何か気づいてないことがあるんだ」
タカキは、回転の速い頭で、様々な可能性を考えるが、今は、悩んでいる暇がなかった。
『タカキ、集中して。でないと、死んでしまうわ』
「わかった。とりあえずは、全部避ける。攻撃を仕掛けるわけにはいかないからな」
『でも……負けるわけにも、いかないでしょ、』
ライトの言葉に、タカキは少しだけ、眉を寄せた。
それは、ライトの望んでいる言葉ではないとわかっていたからだ。
「少し、離れよう。ここじゃ戦えない」
『えぇ、そうしましょう』
タカキは、ミキを誘導するように攻撃を交わしながら、ある場所へと連れて行った。
『ここは?』
「大学のグラウンド。今日は人もいないし、好きなだけ戦える」
グラウンドには、タカキとミキの二人だけだった。
宝石を身に纏った美少女二人が睨み合う。
タカキは、武術の構えをとった。
『武器は?!』
「相手がどこまで強いのか、まずは確かめないと」
『だけど……!』
タカキの武術の構えを見て、ミキは静かに笑みを浮かべた。
「ミネラル・レコード」
ミキの手に現れたのは、チャクラムという武器だった。
中央に穴の空いた金属製の円盤の外側には、鋭い刃が付けられており、殺傷能力は抜群だ。
手裏剣の何倍も大きいチャクラムには、いくつものオパールが埋め込まれていた。
「ミネラル・ライト……、アンタを倒す!」
ミキが投げたチャクラムを、タカキは何とか避ける。
だが、避けたはずの刃が、再びタカキに向かってきた。
「……ッ」
それを、間一髪で避けるが、今度は、腕と足を掠めてしまった。
切り口から、血が溢れる。
「成る程。一筋縄ではいかない、か」
『もう! 何してるの! 早く武器をとって!』
「武器は、相手を倒すときに使うものだ」
『そうよ! だから……!』
「倒すべき相手は、ミキちゃんでも、ミネラル・ウパラでもない。ドローンの手下だ」
タカキの言葉に、ライトは、目を滲ませた。
攻撃したくない。
大切な仲間を傷つけたくない。
そう思っていたライトの気持ちを、タカキはわかっていたのだ。
「敵の力と、彼女を何とか引き剥がせれば、」
タカキがそう言っている間に、ミキは、次の攻撃を仕掛けてきた。
「こんな世界消えちゃえばいい……こんな不平等な世界は、いらないのよ」
その言葉を聞いて、タカキはピクリと眉を動かした。
「何故、そう思う」
「何もしなくても恵まれている奴は、幸せそうに笑っているわ。どんなに努力しても泣いてる奴がいる中で、どうしたら、平等だなんて思えるのよ」
「人の幸せは、同じじゃない。だからこそ、人は平等に幸せになれる権利が与えられている」
「こんな状況で、どうやったら、幸せだと思えるのよ!」
ミキの攻撃を避けながら、タカキは、徐々に距離をつめていく。
「自由がある。一人に一つ与えられた心がある。これは、自分だけのものだ。自分に与えられた、唯一無二の自由だ」
「黙れ! 自由なら、どうして苦しまないといけない?! どうして、思うようにいかない!」
彼女の力が、どんどん膨らんでいく。
負のエネルギーが高まり、大地が揺れた。
「私に自由なんて無い! ブスには、生きる権利なんて与えられてないのよ! すっぴんで、外に出ることも許されないんだから!」
ミキの意識と、ウパラの意識が重なる。
すると、チャクラムが、大きく回転した。
それによって、雲が渦巻き、雨雲を引き寄せていく。
「ネイト・フラッド!!」
彼女が叫ぶと同時に、空が暗くなり、雨と風が吹き荒れた。
まるで、洪水のように、水が溢れてくる。
彼女の怒りに反応するかのように鳴り響く雷の音を聞きながら、タカキも静かに怒っていた。
「ありのままが綺麗じゃないと認められないのよ、所詮は作り物だって、バカにされるんだから……! 心も身体も顔も……全部生まれ持った美しさには、敵わないのよ」
「馬鹿なことを言うな」
タカキは、真顔で言った。
「そんな勝手な基準値で測って決められた条件の中で成り立つような常識なんかに振り回される意味なんて無い」
「何ですって、」
「作り物の美しさがダメなら、世界にある宝石は全て人間が手を加えたものだ。自然界に転がっている鉱物の外見の殆どは、ただの石ころで、ものによっては、みすぼらしい石にも見えるだろう。だけど、それを綺麗だと心から思う奴も存在する。磨かれた宝石を美しいと言って、大事にする奴だっている。どちらも間違っているとは思わない」
「……!」
「ありのままって言うのは、何もしていない状態を言うんじゃない。そのものが、一番自分に合った姿で輝いている状態のことを言うんだ」
タカキは、ミキとウパラを指差していった。
「君たちは、輝いている」
「え、」
「二人とも、凄く綺麗だよ」
タカキの言葉を聞いて、ミキの中のウパラが、ミキの心とシンクロして、ポロリと涙を溢した。
「嘘、こんな汚い心が、こんな醜い顔が、綺麗なはずない、」
「何度でも言ってやる。君は、綺麗だ」
「……っ」
「だから、頑張っている自分を否定しないで」
そう言った瞬間に、ミキの身体が水の飛沫に覆われた。
ミキの身体から、ドローンの手下の鉱物のエネルギーが放たれていく。
「分裂した……!」
『見て! ドローンの手下のエネルギーが!』
ドローンの手下の力は、無理矢理ウパラとミキの身体から追い出され、慌てて近くにあった鉱物を、エネルギーの力で引き寄せた。
「グラウンドの砂が……」
『何をするつもり?!』
「まさか……!」
竜巻のように、砂が舞う。
タカキの予想通り、ドローンの手下は、新たな鉱物と合体し、今度こそ化け物となった。
「我が名は、石英。暫し、計画が狂ったが問題はない」
「やっぱりか」
『どういうこと?!』
「石英は、砂利や砂埃の中から出てくる、珪素という物質から出来ている鉱物のことだ。地球には、ありとあらゆるところに鉱物が存在している。ドローンの手下が乗り移る媒体は、いくらでも見つかるというわけだ」
『じゃあ、あの化け物は……砂利の中の鉱物から生まれたってこと?』
「たった一粒の石英だけじゃ、大した力にはならないだろうが、これだけ広いグラウンドの石英を集めたんだ。化け物に成長する程度には、なっただろうな」
『なんで、そんなに落ち着いているのよ! もう!』
冷静に判断するタカキに、ライトは言った。
だが、タカキにとっては、好都合だったのだ。
これで、ようやく本気が出せる。
その時、石英が攻撃を仕掛けてきた。
ガラスのように鋭い刃が、タカキに向かって飛び掛かってくる。
だが、ガラスの刃片がタカキにぶつかる前に、それは砕け散った。
何故ならば、チャクラムが守ってくれたからだ。
「ミキちゃん……?」
「ウパラよ。ミキは、今、中で眠っているわ」
「そっか。無事なら、よかった」
「あの、ライト……、私」
ウパラがライトに近寄り、謝ろうとした、その時。
タカキは、彼女の顔の前に手のひらを立てて見せた。
「ストップ。ライトに代わる」
「へ?」
「よし! ウパラ! 行くわよ!」
「え、ちょっ、ちょっと待って! どういうことなの?!」
「説明は今度ね! 今は、あいつを倒すのが先よ!」
石英を前にして、ライトはニコリと笑みを浮かべた。
「貴女の力が必要なの! 私は一人じゃ戦えない」
「……!」
「ごめんね。ちゃんと言葉に出さなくて。強がってばかりで、私は大切なことを忘れていたわ」
「ライト、」
「支え合うこと。その為には、お互いに弱いところも見せなくちゃね」
その言葉を聞いて、ウパラは口を開けた。
ライトがこんな言葉をかけてくれるなんて、思ってもいなかったからだ。
「私、この地球で強くなるって決めたの!」
最初は、不安だったけど。
タカキと出会って、ライトは変わった。
絶対に諦めないと、誓ったのだ。
「協力してくれるでしょ、ウパラ!」
「……っ勿論よ! ライト!」
そして、二人は言葉を合わせて、叫んだ。
「「ミネラル・レコード」」
ライトの右手に、ミネラルソードが現れる。
それと同時に、ライトは、すかさず石英を攻撃した。
もちろん、石英も黙っちゃいない。
だが、どんな反撃を受けても、ライトは、素早い動きで石英の攻撃を避けていく。
ついには、ミネラル・ソードで、相手の動きを封じた。
「今よ! ウパラ!」
ライトが敵をひきつけている間に、ウパラが自分の武器に力を込める。
チャクラムの宝石のオパールが、青色に光り、エネルギーを爆発させた。
「エレフ・セリヤ!!」
ウパラの叫び声と共に、チャクラムが回転したまま、石英の身体を真っ二つに引き裂いた。
散り散りになった、石英が、ただの砂利に戻って行く。
「勝った……」
「ライト、この子をお願い。私は力を使いすぎて、もう……」
「ウパラ!」
ウパラの力が消えると、ミネラル戦士の姿からミキの姿へと戻った。
その瞬間、タカキの意識が前に出て、ミキの身体を受け止める。
「ミキちゃん……気を失ってる」
『ウパラの力が途切れたからよ。ウパラも、暫くは眠ったままだと思うわ』
「あの時のライトと同じか」
『完全なる力の使い過ぎね。でも、彼女は大丈夫。ウパラとは、完全に融合したわけじゃないから、おそらくウパラの記憶が残ることはないわ』
「そうなのか」
『ひとまず、彼女をこのままにしておくわけにはいかないわね』
ライトの言葉に、タカキは頷いた。
「ライト、俺のスマフォって出せる? 着ていた服のポケットに入れておいたんだけど」
『待ってね。えーっと、右腕を出して、ブレスレットに、ポンッ! とタッチしてみて』
「ん、」
すると、右手のブレスレットからスマフォがポンッと現れた。
それを、片手でキャッチする。
履歴の一番上にある番号に電話をかけた。
「……あ、ごめん、キョウカさん。もう一件頼める?」
タカキは、キョウカさんにミキの家のことを頼むと、彼女を姫抱きにして持ち上げた。
「多分これで、大丈夫。窓ガラスは、ミキちゃんのお母さんが帰ってくる前に直してくれるって言ってたし、ナイトのことも何とかしてくれるって。ここからだと、俺の家の方が近いから、ひとまず、ミキちゃんを連れて行こう」
『あのさ、私も気になってたんだけど……キョウカさんって、何者なの?』
「隣人のお姉さんだよ?」
『はぁ……タカキの交友関係が恐ろしいわ』
あっけらかんと答えるタカキの姿に、ライトは色々と諦めた。
深く知らない方が良いこともある。
『あ、タカキ、念のため、変身は解かないからね。いつ、彼女が暴走するか、わからないから』
「でも、それだと、また倒れるよ?」
『大丈夫よ、今回は、まだ余力残してるから』
「本当に?」
『本当よ! それに、言ったでしょ。タカキを危険な目には合わせられないの。お願いだから、もう少し、このままでいさせて?』
ライトからのお願いを、タカキは断れなかった。
仕方なく頷く。
「わかった、でも、苦しいと思ったら、すぐに変身を解いて」
『了解よ! あ、そうだ! タカキ、言葉遣いに気をつけてね』
「言葉遣い?」
『そこにいるのは、ただのミキちゃんなんだから! 彼女が目が醒めた時に、俺とか言ったら怪しまれるでしょ! タカキは、今、女の子の身体なんだし、タカキがタカキだってバレたら、困るじゃないの!』
「あ、そっか」
タカキは、あっさりと納得した。
だが、言葉遣いに気をつけろと言われたところで、気を付けようがない。
だって、タカキは生まれてから、ずっと、男の言葉以外使ったことがないのだから。
「僕?」
『私』
「わたくし?」
『かしこまりすぎ。わ、た、し』
「……私、」
『そうよ! 頑張って! タカキなら出来るわ!』
タカキは、ライトの言葉に、困ったような声で返事をした。
「私、自信ないな」
『完璧!』




