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ミネ☆ぷり  作者: 千豆
第一章「ミネラル戦士 ミネラル・ライト」
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プロローグ

地球から、遠く離れた星。

ミネラル星。


ここでは、地球人とほぼ同じような姿をした鉱物たちが、平和に暮らしていた。

ミネラル星には、女性型しか存在しない。

彼女たちは、それぞれの鉱物の性質などを活かして、生活していた。

ある者は、炎を操り、また、ある者は電気を操る。

個々の体質に合った服を着用し、武器を備え持つ者もいた。


武器を持つ戦闘型の鉱物を、星では「ミネラル戦士」と呼んだ。


かつて、他の惑星と戦争が起きた時。

彼女たちは、その強大な力で、ミネラル星を守った。

銀河系最強とも名高い彼女たちの力を恐れ、ミネラル星を襲う者は自然と消えていった。


その為、戦士と呼ばれる彼女たちも、今では、普通の鉱物たちと変わらない毎日を送っている。

だが、平和に満ちていた彼女たちの日常が、突如として壊された。




ある日、ミネラル星に爆音が響き渡った。


「今の音は、一体……っ」

「ライトお姉さま、あの光はなんでしょう」

「何だろう……、行ってみましょう!」


ミネラル戦士たちは、爆音のした方へと向かった。

爆音の原因は、大きな宇宙船だった。


見たことも無い形をした宇宙船からは、何やら怪しい光が放たれている。

慎重に近づいて行くと、光の中から不思議な魔物が、次々に現れた。

辺りは、叫び声に包まれ、ミネラル星の住民たちは恐怖に震えた。


「見て! 誰かいる……っ!」


その時、怪しい人影が現れた。

仮面を被り、小さくふくよかなフォルムをした男は、ミネラル星の住人たちに向かって、高らかに叫んだ。


「我が名はドローン! この星を、占拠しにきた! ミネラルクイーンの持つ、イリコ・マギアを渡してもらおう!」


イリコ・マギア、またの名をイリコ・エレボスとも呼ばれている。

ドローンの言葉に、ミネラル戦士たちは、目を見開いた。

イリコ・マギアとは、ミネラル星のクイーンに受け継がれているミネラル星の秘宝のことだ。


目には見えない、魔法の物質。

それは、宇宙における質量の大半を占めていると言われているが、その物質の力を操ることは、誰にもできないと言われている。


存在するとわかっていても、利用できないが為に、今まで諦められてきた力だった。

だが、ミネラルクイーンの持つ宝石は、特殊な鉱物の力によって、イリコ・マギアの一部を、その石の中に封じ込めている。


イリコ・マギアの恐ろしさは、そのエネルギーの大きさにあった。

たった一部のイリコ・マギアの力で、簡単に惑星一つを破壊できてしまうほどのエネルギーを持っている。


その為、ミネラル星のクイーンは、その力を使用することを禁じた。


使ってしまえば、ミネラル星だけでなく、他の惑星をも壊してしまうかもしれない。

宇宙を破壊する可能性さえも持つイリコ・マギアは、長い間、クイーンによって守られてきた。

イリコ・マギアがあれば、文字通り、この宇宙の物質を好きに操ることが出来るだろう。

物質世界の星にとっては、これ以上ない伝説の武器だった。


しかし、イリコ・マギアは、戦いの為に存在するものではない。


ミネラル星のクイーンたちは、宝石を護ることが使命であり、その力を使うことはなかった。

けれども、どこから情報を嗅ぎつけたのか、ドローンと名乗る男は、その宝を奪いにやってきたのだ。


ドローンの企みは、わからない。

だが、奪われてしまえば、宇宙の平和が壊されてしまう。


ミネラル・ライト率いる七人のミネラル戦士たちは、武器を持って立ちあがった。


「イリコ・マギアは、絶対に渡さない! ミネラル星は、私たちが守る!」


魔物たちを次々に倒して行くミネラル戦士たちだったが、ドローンがある砲弾を空に向かって放つと、立場は逆転した。


ドローンが放ったのは、「悪魔の煙」だった。

その煙を吸い込んだミネラル星の鉱物たちが、次々に、ただの鉱物に戻り始めたのだ。


「な、なに、この煙!」

「みんな、吸い込まないように息を止めるのよ!」


だが、ミネラル戦士ではない普通の鉱物たちが、早々長く息を止めていられるはずもない。

ミネラル星の住民たちは、あっと言う間に、全て、ただの鉱物に変わってしまった。


そして、鉱物になったミネラルたちを回収したドローンは、彼女たちの力を使って、魔物たちを進化させてしまった。


「ヒャヒャヒャ! ただの鉱物でこれだけの力を得られるとは! これがミネラル戦士だったならば、最強の魔物が生まれるに違いない……っ!」

「なっ! お前の目的は、イリコ・マギアじゃなかったのか?!」

「イリコ・マギアも、手に入れるのだ! その為には、ミネラル星の奴らの力を封じねばならない。ただの鉱物となったミネラルたちを魔物と合体させるなんて発想は、この天才錬金術師、ドローン様にしか思いつくまい!」


ミネラル戦士たちの目には、絶望が映し出されていた。


「何故、鉱物と魔物が合体できるのよ……っ! そんなこと、できるはずないのに、」


鉱物と他の物質が融合し、鉱物の持つ性質を取り込むことはできる。

だが、それには、ある条件が必要なのだ。


「一体、どんな手を使って……っ」

「最強の魔物たちと、イリコ・マギアを手に入れれば、全宇宙は思うがままだ!」


ドローンの言う通り。

このままでは、全宇宙はドローンの好きにされてしまう。

ミネラル・ライトは、屈辱に耐える顔で叫んだ。


「みんな! クリスタル城に走って!」

「でも……っ!」

「ここで、みんな捕まったら、それこそ奴の思う壺よ!」

「……っ!」


ミネラル戦士は、誇り高き戦士だった。

逃げるなんて真似は、したことがない。


だが、星を守るために仕方なく、その場を後にした。



◇◇◇



「ゴッデス様、大変です! ミネラル星のミネラルたちが、敵の力によって、ただの鉱物にされてしまいました……っ」

「ふぇぇん、魔物たちに、みんな取り込まれちゃったよぉ……っ!」

「私たちは、普通のミネラルと違ったから、まだ形を保っていられますが……」

「このままでは、私たちも」

「ただの鉱物、されてしまうのも時間の問題ですわ」

「そうしたら、あいつの思うままじゃんっ!」

「ゴッデス様――……」


ミネラル星のクイーンゴッデスは、気品のある鉱物だった。

女王の地位に相応しい貫禄とオーラを放っている。

紫色の美しい髪は、地面に着く程長く、瞳は、まさに宝石の様だった。


ミネラル戦士たちの言葉に、ゴッデスは、静かに目を開く。


「……――私の力で、貴方たちの身体を、クリスタルの中に封印します」

「な、なんですって!」

「でも、そんなことをしたら、この星が!」

「聞きなさい。貴方たちの魂の一部だけ、この星の外部へと飛ばします。時空移動石クロノス、彼女の力を使うのです」


そう言われ、ゴッデスの後ろから現れたのは、真っ白な服を着た美少女だった。


「クロノス様……!」


クロノスと呼ばれた少女は、宙に向かって手を伸ばした。

すると、ミネラル戦士たちの身に付けていた指輪やネックレスが、次々に彼女の元へと集まっていく。


「……これに、貴方達の魂を込める」


クロノスが呪文を唱えると、たちまち指輪たちが一つ一つの鉱物の形へと変わった。

そして彼女たちの身体から放たれた光が一粒の欠片になって、鉱物に吸い込まれていく。


「ここに、私たちの、魂が……?」

「欠片だけだが、これで十分だ」


ゴッデスの目を見て、クロノスは頷く。

外見だけだと違って見えるが、クロノスとゴッデスは、同じ時を過ごしてきた同士だった。


「外部に行くなんて、嫌だ! ここに残って戦う!!」


その時、一人のミネラル戦士が叫んだ。

彼女は、怒りに震えていた。


「今の貴方達が戦っても、ドローンには適わないのが現状です」

「そんなところへ行かなくても、イリコ・マギアの力を使えば倒せるじゃん!!」

「イリコ・マギアは、どんなことがあろうと使いません」

「なんでだよ……っ! ミネラル星が滅んじゃうかもしれないのに!」

「ミネラル星を滅ぼさないためにも、貴方達の力が必要なのです」


ミネラルクイーンの言葉に、彼女はそれでも食らいついた。


「だけど、二度もあいつらから逃げるなんて、私にはできない……!!」

「ミネラル戦士たち……貴方達を外部へと、飛ばすことは、決して逃げではありません。貴方達は、未だ〝未完成″な戦士たちなのです。ミネラル戦士の持つ本当の力を引き出すことができれば、ドローンにも必ず勝てることでしょう」

「私たちが……未完成?」

「完全なるミネラル戦士になる為には、送り出すしかありません」


そう言って、ゴッデスは立ち上がった。


「貴方達を、ある星へと飛ばします」

「ある星って、一体どこに……、」

「地球です」


ゴッデスの言葉に、ミネラル戦士たちは、皆一同に目を見開いた。


「地球?! あの星に生きている生物たちが、一体、何の役に立つと言うのです!」

「そうよ! 人間って、私たちより、ずっと弱い生き物のことでしょう?!」

「彼らに、何を学べと言うのです……っゴッデス様!」


ミネラル戦士たちの言葉に、ゴッデスは首を横に振った。


「貴方達から見れば、人間という生き物は鉱物に比べ、確かに弱いように見えるでしょう。ですが、それは、人間たちの本当の力を知らないからです。彼らは、物質の星「地球」で生まれました。私たちよりも、遥かに物質の力を操って生きています。そして、彼らは〝形にはできない力″を持っているのです」

「形には、できない力……」

「それが、今の貴方達には、必要なのです」


ゴッデスは大きく手を広げ、自らの能力で、クリスタルの波を巻き寄せた。


「クロノス、その子たちを地球へ」

「任せて。……ゴッデス、死なないで」

「私を誰だと思っているのです。ここにいる者たち誰ひとり、死なせはしません」


クロノスは、光の塊となって、星から脱出した。

そして、残されたミネラル戦士たちの身体は、ゴッデスの能力によって、クリスタル城の中に封印されたのだった。


ミネラル戦士たちの魂だけが、宇宙を駆け抜けていく。



地球に行くのです。

そして、人間たちの持つ力の意味を知るのです。

それが、ミネラル星を救う、唯一の希望となります。




ゴッデスは、クリスタルの中で、静かに目を閉じた。




こうして、時空移動石クロノスと七つの鉱物たちは、地球へと飛ばされて行った。


――ミネラル星を救うために。







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