なんだか響きのいい言葉
「なあ、『墾田永年私財法』ってすごいいい響きだよな」
と、俺は、授業の間の休み時間に、友人に言った。
「ああ、そうだね」
「何か他にないか?そういう、なんか響きのいい言葉」
「そうだな……禁中並公家諸法度」
「おお、いいねいいね」
「王政復古の大号令」
「いいね、いいね!」
「日米修好通商条約」
「やべぇ!たまらねぇ!」
「男女共同参画社会」
「うっひょおおおおおおおおおお!!もうたまらねぇえええ!!!」
俺はそう叫んで立ち上がると、駆けだした。教室を抜け出し、学校を抜け出し、町を走りながら、俺は上着を脱ぎ捨て、上半身裸になって、叫びながら走り続けた。
「ルールを投げ捨てろ!いい加減な話を投げ捨てろ!
ただ生きているだけなのにはうんざりだ!!
放っておいてくれ!多くは求めない!
俺はただ支配されたくないだけなんだ!!
ドーー○えもーーーーん!!ドーーー○えもーーーーーん!!!」
そうやって俺が走り続けていると、警察がすごい勢いで追いかけてきて、俺にタックルしてきて、俺を押し倒して言った。
「動くな貴様!内乱予備罪で逮捕する!!」
こうして、俺は刑務所に入れられることになった。檻の中にぶち込まれると、中にはすでに先客がいた。
それは青い囚人服を着た阿○さんで、俺を見るなり言った。
「ウホッ、いい男!」
そして服を脱ぎだして言った。
「よかったのかい、ホイホイブタ箱にぶち込まれて。俺は同房の仲間だって、かまわず喰っちまうような人間なんだぜ」
「うわあああああああああああ!!」
俺は檻にしがみついて言った。
「看守!看守助けてくれ!!ここから出してくれ!!」
看守は言った。
「あ?そんなの俺の知ったことか。そんなところにぶち込まれるようなことをしたお前が悪い。まあ、それも刑務所生活の一部だと思って諦めるんだな」
阿○さんは、後ろから俺の腕をガッシリつかまえて言った。
「とことん喜ばせてやるからな」
「うわあああああああ!!うわあああああああああ!!!」
「おい、山本!」
「ハッ!?」
俺は目が覚めた。歴史教師の坂本が、俺を見て言った。
「授業中に寝るとはいい度胸だな……おい山本、答えてみろ。743年に聖武天皇が制定した、自分が開墾した土地はずっと自分の土地にしていいという法律はなんだ?」
「こ……墾田永年私財法、です……。」
「ん?なんだ聞いてたのか。てっきり居眠りしてるのかと思ったぞ」
「は、ははは……」
「よし、それじゃご褒美をあげようか」
「え?」
坂本は、俺の方に歩み寄ると、顔の皮をベリィ!とはがした。そうすると、下から阿○さんの顔が現れた。
「よかったのかい、ホイホイ授業なんか受けて。俺は教師だって、かまわず喰っちまうような人間なんだぜ」
「うわあああああああああああああああ!!」
俺は跳び上がって、逃げ出した。
逃げて逃げて、逃げ続けていると、どうやら追っ手はまいたようだが、旅館の中で迷子になってしまった。
「あれ、部屋はどこだっけ……」
部屋を探し回っていると、チャラい感じの若者たちが話しかけてきた。
「あれ、君どうしたの、迷子?」
「へー、かわいいじゃん」
「今から俺らと遊ばなーい?」
「ひっ……」
そこへ、叔父さんがやってきて言った。
「どこに行ってたんだ?探したぞ。さあ、部屋に戻ろう」
「チッ、なんだ家族連れかよ……」
そう言うと、チャラい若者たちは去って行った。
私は叔父さんに抱きついて言った。
「ありがとう!怖かった……。叔父さん大好き!ゆっきー大好き!!」
「ハハハ、ゆっきーはやめなさいって言ってるだろ。
……それに、私は叔父さんじゃないんだからね」
「え?」
叔父さんは顔の皮をベリィ!とはがした。すると下から阿○さんの顔が現れた。
「よかったのかい、ホイホイ抱きついてきて。俺は叔父さんだって、かまわず喰っちまうような人間なんだぜ」
「うわあああああああああああああああああ!!!」
「おい、山本!!」
「ハッ!?」
俺は再び目が覚めた。歴史教師の坂本が、俺を見て言った。
「授業中に寝るとはいい度胸だな……。おい山本、言ってみろ。743年に聖武天皇が制定した、自分が開墾した土地はずっと自分の土地にしていいという法律はなんだ?」
「こ……こ……、墾田永年私財法、です……」
「ん?なんだ聞いてたのか。てっきり居眠りしてるのかと思ったぞ」
「い、いやー、ははは……」
「よし、それじゃご褒美をあげようかな……」
「eh?」
坂本は、顔の皮をベリィ!とはがした。その下から、阿○さんの顔が現れた。
「よかったのかい、ホイホイ開墾なんかして。俺は他人の土地だって、かまわず開墾しちまうような人間なんだぜ」
「うわあああああああああああ!!」
俺は跳ね上がって、逃げ出した。逃げて逃げて、逃げ続けていると、蕎麦屋があった。俺はその蕎麦屋に駆け込むと、店主に言った。
「店主!助けてくれ!!」
店主は、後ろを向いたまま言った。
「どうしたんですか?お客さん。そんなに慌てて」
「出たんだ……ヤツが出たんだよ!」
「へえー、何が出たって言うんですか?お客さん……ひょっとしてあなたが見たのは……、こんなものじゃありませんか?」
そう言って店主が振り返ると、その顔は阿○さんだった。
「よかったのかい、ホイホイ蕎麦屋に入って。俺は蕎麦だって、かまわず喰っちまうような人間なんだぜ」
「うわあああああああああああああ!!」
「おい、山本!!!」
「ハッ!?」
「授業中に寝るとはいい度胸だな……。おい山本、言ってみろ。743年に聖武天皇が制定した、自分が開墾した土地はずっと自分の土地にしていいという法律はなんだ?」
「こ、こ、こ……」
「ん?どうした?早く言え」
「こんなのは!冒涜です!!聖武天皇に対する冒涜です!!
墾田永年私財法は、こんなことのために定められたんじゃない!国分寺や国分尼寺は、こんなことのために定められたんじゃないんだ!!うわあああああああ!!」
俺は椅子を蹴って立ち上がり、駆けだした。そのまま教室を抜け出し、学校を抜け出し、町の中を走りながら、俺はどんどん加速していった。加速しながら、俺は心の中で叫んだ。
不純だ。不純なんだよ。お前らは全て不純なんだよ。スピードだ。スピードがありさえすればいい。そのほかのものは、みな不純物だ。俺が浄化してやる。
加速するにつれて、全てが後ろに遠のいていった。
墾田永年私財法も、禁中並公家諸法度も、王政復古の大号令も、日米修好通商条約も、男女共同参画社会も、坂本も山本も、阿○さんも叔父さんも、蕎麦屋も学校も遠のいて、一条の光となって消え去った。
そして、俺は風になった。




