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 予想外の魔女との出会いがあった物の、無事に宿屋に戻って来れたアリス。

 今すぐにでも眠りたいほど疲れていたけど、その前にすべき事があった。

 森を駆け回ったのだから、汚れを落とさないと気持ち良く眠れない。

 アリスはちゃんとお風呂に入った後で、ベッドに潜り込んだ。

 深い眠りにアリスは落ちて、起きたのは既に日が高く昇った頃だった。


「あー。もう昼か……」


 アリスは半眼で時計を見た。

 昨日に続いて今日までも遅い起床だ。

 今はゲームの中だから良いけど、現実に戻った時の影響を考えると、このまま怠け癖が付くのは不味い。

 二度寝をしたい欲求に駆られながら、アリスは這って動く。

 下着姿のままベッドの上に立ち上がり、アリスはソファに飛び移った。

 そこで崩れる様に座り込む。

 堪えきれない大欠伸を手で隠して、出てきた涙を指で拭った。


「ねむいぞ」


 呂律が怪しい呟きを零しながら、アリスは目を擦った。

 胡座をかきながら、のんびりと手をピンと天に向け背を伸ばす。

 今日の予定は特にない。

 最近は働き詰めだったし、良い機会だから休養に当てるとしよう。

 アリスはそう決めて、だらし無くソファに寝そべった。

 うつらうつらとして、何度も意識が途切れかけた。

 しかし今は掛け布団もないから、下着が丸出しになっている。

 それは流石に駄目だと思った。

 悲痛な呻き声を上げながらアリスは体を起こして、純白のボディスーツと靴を取り出して装備する。

 乱れた髪を手櫛で解いて、アリスは立ち上がった。

 眠気は未だにあるが、それよりもお腹が空いたので、酒場に下りる事にする。

 マントを羽織りつつ階段を下って行く。酒場の前に着くと、アリスは不意に首を傾げる。

 話し声が聞こえた。

 ラドの声と、後2人。

 知らない人の声だった。


(珍しい事もあるんだな)


 あんまりにも客が来なくて、すっかり宿が貸切の様になっていたから。

 自分以外にも宿泊客が増えるのだろうかと思うと、途端に気になって来る。

 アリスは扉を開けて酒場に入った。


「んん?」


 酒場に居た人たちは、アリスの予想とは違っていた。

 マントが付いた全身鎧を身に纏う2人の男が、ラドと何かを話し合っていた。

 女神教のシンボルでるハートと翼が刻印されているマントを見るに、彼らは女神教の騎士らしい。

 ラドと騎士たちの視線がアリスに集中する。

 見知らぬ者を含めた複数人からの注目にアリスは体を震わせた。

 騎士たちの視線がなぜか物々しい。


「獣人か」

「ああ。普通の人族だ。違うな」


 騎士たちは互いに言葉を交わす。

 小さな声だったけど、アリスの耳には距離があっても聞こえた。

 何事かとラドを向けば、彼は辟易した様に肩を竦めた。

 どうやらアリスがここに来る前から行われていたであろう騎士達との問答に疲れたらしい。

 アリスはそれに同情したが、自分が巻き込まれるては堪らないので、3人から離れた席に座った。

 ラドはまだ騎士たちに拘束されそうだと思って、アリスは何をして時間を潰すか考え始めようとする。

 ラドがご飯を作ってくれるまでアリスは暇なのだ。

 インベントリにある食料に手を付ければ良いのだが、折角酒場にいるのだし、それは野暮だろう。

 それに街の外では何が起こるか分からないので、食料はあまり減らしたくないと言う考えもあった。


「長い時間に及ぶ協力、感謝する」

「我々はこれで失礼する」


 騎士たちの言葉がアリスの耳に届く。

 暇潰しを考えようとしていたのだが、それは不要だったらしい。

 騎士たちは宿の扉を開けて出て行った。

 ラドの方を向けば、老け込んだ顔で長く息を吐き出している。

 やっぱり疲れているらしい。


(この上で料理を頼むのは酷だろうか)


 アリスは少し不安になりながら、席を立ちラドの元へ向かった。

 近寄るとラドはやはり疲れた声で挨拶をくれた。

 アリスは挨拶を返した上で、大丈夫かと聞いた。


「ああ。心当たりはなかったが、何か女神教に睨まれる事をしたのかと思って肝を冷やしたぜ」


 その心配はいらないだろうとアリスは思った。

 ラドは限りなくお人好しである。

 これだけ善良な人物を女神教が敵視するとは思えなかった。

 話で聞く限りだと、女神教は頭はすごく狂っているけど、敵対しない限りは優しいらしいから。


「どんな話だったの?」

「よく分からん。有名な賞金首の目撃情報が出たらしいって話だったが、詳しくは分からねぇなあ」

「へえ。賞金首か」


 そんなのが居るのかとアリスは思った。

 言われてみれば冒険者協会の掲示板にそんなのがあった気がする。

 余りに依頼書が多かったから、良くは見れていないけど。


「どんな賞金首なんだろうね」

「さてね。あの騎士たちは汚い言葉で罵ってたけどな」


 女神教が動く賞金首がどんな奴なのか気になって、アリスは聞いた。

 ラドの答えは曖昧だ。

 そんな言い方だと賞金首の詳細がよく分からない。


「ふぅん。何て?」

「あー。聞くか?」

「当たり前でしょう」


 より踏み込んで聞くと、ラドはそんな風に聞き返してきた。

 何を躊躇っているのか。

 アリスは不思議そうにラドを見上げる。


「うーむ。そうだなあ。柔らかく表現するなら、腐れ阿婆擦れって感じだ」

「あはは。酷いね」


 ラドは考え抜いた末にそう答える。

 あまりの暴言にアリスは噴き出した。

 凄まじい悪口である。

 その賞金首は、よっぽど女神教に嫌われているらしい。

 一体何をしたんだろう。

 とても興味深く思った。


「さて。今から飯を作るから、もう少しだけ待っていてくれ。そう時間はかからないからさ」

「はい」


 ラドが話を切り上げて、アリスも逆らわずに頷いた。

 再び席に着くと、ラドは言葉通りにすぐ食事を持って来た。

 ラドの作る料理は相変わらず美味しい。

 疲れていても流石の腕だ。

 アリスは皿を空にし、お腹を満たした。


(この後は女神像の所に向かおうかな)


 レベルが上がっていたから、新しいスキルを習得出来る。

 朝から変なイベントもあったし、死に戻りをする可能性も考えて、すぐに祈りを捧げた方が良さそうだ。

 アリスはラドに出掛ける事を伝えて、席を立った。

 スキルを手に入れた後はどうするかと考えながら、アリスは狭い道を進んだ。


「……げっ」


 路地から大通りに出る。

 するとそこには騎士の姿が多くあった。

 そのほぼ全員が女神教の騎士だ。

 アリスは顔を引き攣らせる。

 重装備の者たちが大勢で街を巡回している様はとても物々しい。

 疲れ果てたラドの姿を思い出し、アリスは変に目立たない様に隅の方を歩いて行く事にした。


「よし」


 女神像の元へ無事に辿り着いたアリスは、すぐさま祈りを捧げる事にした。

 道中ですれ違う騎士たちが殺気立っていて怖すぎである。

 女神像に近寄っただけでも警戒を向けてくるのだ。

 刺激したら斬りかかって来そうな騎士の様子に、アリスは不安に駆られた。

 まあ祈ろうと膝を着いた辺りで、殺気は霧散し雰囲気は柔らかくなったけど。

 彼らが信徒に優しいと言うのは事実である様だ。

 アリスは緊張を解いて、安堵の息を吐き出した。

 ここで捕まってしまっては、慎重に来た意味が失われるし、無駄な時間を過ごす事になっていただろう。

 計り知れない大きな力を身に受けて、目に見えぬ存在を前にアリスは自ずと頭を垂らした。

 力が湧き上がる。

 アリスは目を開いた。 


「今度のスキルは何かな」


 弾んだ声で独り言を呟いた。

 ステータスを見ると、アリスは目を丸くして、首を斜めに傾ける。

 新しいスキルは<昏命の法>と言う。

 これまでのスキルとは雰囲気の違う名前にアリスは戸惑いを隠せない。

 スキルの説明を見る。

 効果は、相手に直接ダメージを与えただけ自分を回復させるらしい。

 つまりライフドレイン的な効果なのだろう。

 すごく便利そうだ。

 珍しそうなスキルと、密かな悩みであった回復手段。

 その両方が同時に手に入った事をアリスは大いに喜んだ。

名前:アリス

種族:獣人/兎/女

レベル:4

<格闘術><怪力>

<浸透勁><昏命の法>

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