桃太郎
犬、キジ、猿をきびだんごで仲間にした桃太郎は、鬼が島へ向かうために船に乗り込む最中であった。
「桃太郎さん。鬼ヶ島にはどれぐらいで付くワン?」
「そうだあぁ、多分すぐに付くだろう。心配するな」
そっかあ、と納得する犬。
「桃太郎さん。食べ物は持ったッキー?」
「おじいさんとおばあさんからもらったきびだんごがある。心配するな」
それは安心ッキーと猿
「桃太郎さん。もう行きましょう」
出発を促すキジ。
そんなこんなで桃太郎一行は、鬼ヶ島へと船を漕ぎ出した。
一日目
「桃太郎さん。また付かないワン?」
「もうすぐ付く。心配するな」
二日目
「桃太郎さん。まだ付かないッキー?」
「もうすぐ付くと思うから大丈夫だ。きびだんごをあげるから食べていなさい」
嬉しそうにもらったきびだんごを頬張る猿
三日目
「桃太郎さん。まだつかないんですか?」
「うーん。もしかしたら、もう少しかかるかもしれないなあ。みんなできびだんごを食べていなさい」
その言葉に無邪気に喜ぶ三匹。口いっぱいにきびだんごを頬張りご満悦の様子。だが、確実に残りのきびだんごは減っている。
十日目
きびだんごは尽き、いまだ見えぬ鬼ヶ島に、ますます絶望に顔を染める一行。
飢えのためか、一行の瞳はギラギラと怪しく光り、その顔にはうっすらと死相が見えていた。このままでは、餓死してしまうであろうことは明らかであった。
十五日目
飢えに飢えた一行はある苦渋の決断をした。それはこの中のだれか一人、または一匹を食べようというものであった。そして多数決の結果、キジが最初の食料となった。皆鶏肉が食べたかったのであろう。
十七日目
そしてまた行われる多数決。今度は犬が選ばれた。
十九日目
その日の夜、猿が寝ている間に、桃太郎は猿を襲い食ってしまった。
桃太郎が寝ていると何やら物音が聞こえてきた。その音で目覚めた桃太郎は何事かと、音の発生源を探した。その音は三匹の骨が入った容器の中から聞こえていた。桃太郎が容器に近づくとその中から犬と猿とキジの骸骨がはいだしてきた。
カタカタと音をたてて桃太郎に近づく骸骨たち。恐らく最後に生き残った桃太郎への恨みで動いているのだろう。
恐怖のあまり、ずりずりと後ずさる桃太郎。すると苦し紛れの言い訳を始めた
「これは鬼が悪いのだ。そもそも、鬼が悪さをするから、私たちが退治しなければいけないようになったのだろう! もともとの原因は鬼だ!」
無茶苦茶ないいわけだが、骸骨たちの頭は、生前と比べて酷く残念になっている。その言葉に簡単に納得してしまうのだった。
その後、犬、猿、キジの骸骨を従えた桃太郎は無事鬼が島につき、鬼たちを絶望のそこへと叩き落としましたとさ。
めでたしめでたし