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すろら!!  作者: 的菜何華
二日目
9/72

ノットキラキラネーム~四月生まれの悲哀~

注:この話はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません!!

さて。

今更言うようなものでもないが、マサムネというのは俺の本名ではない。

同様にドーザンの名前もドーザンではないし、ノブナガの名前もノブナガではない。

セイメイも然り。


あまりのブラックさに一人欠け二人欠けしていき最後に残った五人。

その名字が伊達、斉藤、織田、安部、坂本、と揃ったが故の言葉遊びだ。

少しでも話題になるようにとスタッフロール忍ばせた遊び心。


そう。

気付いただろうか。

先に挙げた名前――一人欠けていた事に


「第三中学から来ました坂本龍馬と言います。字は偉人の坂本龍馬です。特技は包帯の早巻き。よろしくお願いします」


俺とリョーマの出会いはその一言から始まる。


* * * 


「第七中学から来ました伊達瞬人(だてしゅんと)です。実は今日が誕生日です。よろしくお願いします」


四月の前半期に生まれるメリットを知ってるか? 

自己紹介がこの一言ですむことだ。

そしてデメリットは一年目は家族以外誰も祝って貰えないこと。

……うん、まあ、慣れたよ。


高校一年になったばかりの俺は既に十年来のつき合いになる自己紹介をすませ席に着いた。

思わず視線をやるのは坂本龍馬と名乗った彼である。

インパクトありすぎる名前だったからな。

クラス中の注目の的でしたよ。


俺たちの高校は都立の中ではそこそこ偏差値の高い学校だ。

地方だと公立の方が偏差値高いらしいが、東京では逆。

東京の私立は頭おかしいんじゃねーの?って偏差値がごろごろしてる。マジで。


それでも、ここに来れたという事はそこそこの頭脳の持ち主なんだろう。

その事の若干ムカついた。


――坂本龍馬と名乗ったその男。

派手さはないが整った顔立ち。

つまりはイケメンだった。


天は二物を与えてんじゃねえって話。

無論、イケメンって言ったってクラスの中ではってレベルなんだが。

逆にそれぐらいの方が世の中渡り易いってのが分からないほど子供じゃないお年頃だったわけで。


(はいはい、イケメンが中二病アピールですか? けっ)


――それが俺の第一印象。


そして、それがアピールでは無いことを知るのにさして時間はかからなかった。


 * * * 


坂本龍馬――業界では坂本リョーマのトレードマークは左手首から左肘まで隙間なく巻かれた真っ白な包帯だろう。

高校時代からそれは変わらなかった。


体育の時間も。

水泳の授業も。

奴は頑なに包帯を取らなかった。


「怪我が治っていませんので」


包帯を取れという指示に対しては常にそう答えて。


ウチの高校は自主自律を重んじるというか、あんまりそういうこと突っ込まない高校だったので――特にそれで問題にならなかった。

東京は結構そういうとこ多い。良くも悪くもドライ――成績さえよければそこそこ見逃してもらえる。


実際髪染めてる奴も化粧してる女子もバイトしてる奴もバイク乗ってる奴もフツーに居たからな。

包帯一つでそこまで目くじらたてたりはしねーよ。

リョーマ成績は良かったしな。


しかし、人付き合いはそうはいかない。

流石にスクールカーストみたいにがっちり決まってる訳ではなかったがそれでもある種のグループはあるわけで。


なんとなく。

あぶれもの同士つるむようになるまで時間はかからなかった。


 * * * 


基本都立高校なんかに行く奴は国立大学なんて目指さない。

東京はお手頃な私立がごろごろしてるからな。地方とは違うのだよ。

俺とリョーマは数少ない例外だった。


進路資料室で赤本の貸し出しが被ったのがはじめだったと思う。

それから資料室で度々顔を合わせるようになって。

一学期半ば――進路が決まったあたりから居残り仲間になった。


「球の体積」

「4πr³/3」


「ハイリンヒ四世、グレゴリウス七世、一〇七七年」

「カノッサの屈辱」


「判別式D」

「b²ー4ac」


「カスティリア、アラゴン、グラナダ、一四九二年」

「レコンキスタの完成」


……居残りっても別に残らされてたわけじゃねえぞ。

あくまでも自主的な学習だ。


……国立狙いのくせに都立に来たことで分かるかもしれないが。

俺とリョーマの家は金銭的に恵まれてない。

具体的にはバイトはしなくて済んだが塾や予備校に通えないぐらいに。


そのための居残りであり、先生方も理解してくれて最終下校時刻ぎりぎりまで残るのが俺たちの日常だった。


「またお前昼パンかよ?」

「まあね」

「……ほらよ」

「え、まさか瞬人俺のこと……」

「んなわけあるか!! オカンが持ってけっつったんだよ!!」

「……ツンデレ、いやチュンデレ?」

「チュンデレってなんだよ!?」

「チュンチュンデレデレ?」

「何で疑問系!?」

「スズメがチュンチュンと鳴きデレデレとデレるさま。要はスズメがデレっぱなしであるさま?」

「意味わかんねーし!!」


リョーマの家庭は母子家庭でその上母親が長期入院中だった。

祖父母から仕送りがあって学費や生活はなんとかなっていたが、曲がりなりにも二親そろっていた伊達家よりも生活が厳しかった。

オカンは成績優秀な友達を歓迎してなにかと世話を焼いた。


――そんな日々が三年続いて、俺とリョーマは別々の大学に進学した。


 * * * 


「……なんで俺は鍛冶スキルなんて取ってしまったのか」

「みゅう……」


攻略を決意して――まずやったのは採掘と鍛冶である。

掃除人になるといける最終鉱山は炭坑じゃない。

なんとミスリル鉱山なのである。


ここでミスリルをゲットして武器に加工、フォースボスへというのが定番の流れであるらしい。

フォースボスはミスリル武器でないとダメージが通らないのだそうで。


で、役割分担。

セイメイは龍人ヶ原に戻って木の実集め。

ノブナガは商人スキルを駆使してアイテム集め。

ドーザンは採掘スキルで鉱山アタック。

そして、俺は鍛冶スキルで三人分の武器を作る。


これがまたメンドいのだ。

ただ、剣の形に成形するだけでも難しいというのに――そこに機構回路を組み込まなくてはならない。


「みゅ~」


正直、ツクモだけが癒しである。


「俺は別に生産職じゃねえんだが……」


ぶつぶつ言いつつ、トンカントンカンやる。

ミスリル鋼の特性はその硬さにある。

つまり、加工が難しい。

正直鍛冶初心者の俺に手に負えるモンじゃないんだが……。


「あー、またしくった……」


気ばかり焦ってちっとも上達しない。

六日間でのラスボス攻略――本当に出来るのか?

ただ強くなれば良いってモンじゃない。

ラスボスにたどり着くための幾多の関門それをくぐり抜ける。

そうしてやっと刃がラスボスに届く。


今、攻略されているのはフィフスボスまでだ。

そこから先は――ノーデータ。


「マジで詰んでるわ……」

「みゅぅ……」


無理ゲーにも程があるってんだ。

元々俺は戦闘員(ファイター)じゃねえし。


「――マサムネ」


唐突な呼びかけにそっちを向く。

鉱山に居るはずのドーザンがいた。


「ノブナガから伝言だ。――武器揃ったそうだ」

「はあっ!?」

「みゃあっ!?」


そうだ。ノブナガはこういう奴だ、と頭の片隅でそう思って――


「了解!」

「みゃ!」


ドーザンの差し出した拳に拳を合わせた。

坂本竜馬さん。実在しているらしいですが無関係です。

この物語はフィクションです!!

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