ノブナガの推理~こいつがためらう時はろくなことがない~
「マサムネ、今回の事件の一番簡単なやり方って何やと思う?」
迷い迷い、ためらいためらいノブナガはここから話を始めることにしたようだった。
「あ? フツーにハッキングして……」
「そう考えるんはマサムネがSEやからや」
VRゲームハッキングするんは大変やろ? とノブナガは言う。
確かに、VRゲームは非VRゲームに比べてけた違いのハッキング対策をしなければならないことが法律で決まっている。
「その防壁ーーそれを突破できんとしたら? なにが最適解や?」
「諦める」
きっぱり。
てか、諦めろや。
「コントロールルームそのものを『物理的に』制圧する。それしかないやろと思うんよ」
「は?」
俺の発言をガンスルーしたノブナガは眉を寄せる。
「VRでやる以上大型のコンピュータと動かす人員を集めたコントロールルームは必須やろ。そこを物理的に――暴力でもって制圧する」
「ちょ、ちょっと待てよ」
物理的に?
暴力でもって?
それじゃあまるで――
「事件みたいじゃないか!?」
「いや、事件やからな!?」
「……言われてみれば!?」
ノブナガため息である。
いや、四人でゲームするのが楽しすぎたんだよといいわけしておこう。
「とにかくこの事件、警察がかなり大規模に動いてるんは間違いないと思う。エスケープボタン押して回ってるんは多分警察や」
「は? いくら何でもそれはねえだろうよ。警察だって個人がやってるゲームタイトルまで把握できる訳がねえだろ」
オンラインのVRゲームの場合、最初にユーザーデータの登録と身分証の確認が必要になってくるが、それで登録されるのは氏名と生年月日だけのはずだ。住所は任意登録のはず。それもダイレクトメールとかがくるのを嫌って登録しない人は多い。
運営元ですら、ユーザーがどこに住んでいるかまでは把握していない、はずなのだ。
しかし、ノブナガはゆるゆると首を振る。
「マサムネ、すろらの課金どうやってしてる?」
「は? そりゃクレカで………………………ああっ!!」
こくりとノブナガは頷いた。
「クレジットカード会社になら住所データあるやろ。すろらは月額課金で無課金者はおらん。支払方法は現金振り込みかカード決済のニ択。カード利用率はほぼ100%や」
「……いや、カード会社がそんな簡単にデータ渡すか? 6時間後にはみんなログアウトするんだぞ?」
忘れそうになるがリアルタイムではまだ六時間もたっていないのだ。
カード会社がデータを渡すとすればあまりにも速い判断過ぎる、気がする。
「けど、他に解答があるか? 警察以外に全国に散らばったエスケープボタンを押せる組織はない。一人暮らしの部屋の中にすんなり入り込める手合いもな。とにかく警察が動いてるのは間違いない。それもかなりの緊急性を持って」
ノブナガが標準語で言った。
そういわれると……そうかもしれない。
「そこから考えるに――間違いなく人質がいるんや」
「は?」
どうしてそうな――いや、そうか。
六時間ぐらいで警察がせっぱ詰まる理由なんてそれくらいしかないか。
爆弾とかならユーザーをログアウトさせる必要はないわけだし。
「だからせっぱ詰まってるって考えるのが普通か……」
「案外、犯人側がログアウトさせるように要求したのかもしれん。その辺は分からん」
「とにかくイニシアチブは犯人側がキープしてると……」
って、おい。
じゃあ、あの写真は――
「そう、間違いなく。リョーマ人質になってんで」
名探偵ノブナガは――そう断言した。




