満員御礼~動画民的禁断症状~
まあ、ユニークスキルを見せると言ったところで相手の性能が完全ランダムで決まる以上相性のいい相手に出会わない以上はどうしようもない――と思ったのだが。
「奥義――満員御礼!!」
結果から言ってしまえば実に見事な一刀両断だった。
大天使、真っ二つである。
「ドーザン、それボス戦まで使用禁止な」
相性勝負すら余裕で凌駕する圧倒的火力。
当然のようにノブナガが使用禁止を出した。
さもありなん。
この技――一回使いきりである。
* * *
すろらでもっとも有名なユニークスキル――それが満員御礼である。
かつて運営が閑古鳥保護区と化した「映画館」を救うために作ったスキル。
その修得条件は「映画館における自分の全提供コンテンツの総視聴者数がのべ100万人に達する」。
……いや、だから閑古鳥鳴いてるんだってば。
ログアウトすればいくらでも動画投稿サイトがあるこのご時世にそれはきつすぎる。
歴戦の動画職人ですらほぼ不可能と白旗を揚げた。
適当に撮った画像をギルド員に見せて数を稼ごうとしたギルドもあったらしいのだが――まあ、結果はお察しの通り。
例えギルドメンバーが100人いたところでくっそつまんねえ動画を一万回は見なければならないわけで。
一本三分として三万分……500時間。
21日程度ならできそうと思ったか? 残念、モブ狩り規制の一環で寝たら強制退出なのだよ。
6日間一睡もせずノンストップで動画見続けられるか? しかもつまらない同じ動画をエンドレスで。
挙げ句、映画館の仕様上入館したら動画を見る以外の行動が一切とれないときてる。
最早拷問だろう。
そして、ここまで苦労して手に入れた満員御礼は非常に強力だが――基本使い切りである。
一回使ったらまた100万回動画を見ないといけないわけで。
結果としてこんなのやってられないと全大手ギルドが白旗である。
というか、なんでゲームやりに来て動画見ないといけないのかという疑問が全ユーザーの頭を過ぎりまくりである。
テコ入れにしては厳しすぎるその条件にユーザーからのブーイングが相次ぎ――とっくの昔に消えたと思っていたのだが。
「まだ生き残っとったのか……」
「案外、削除し忘れのバグ技かもしんねーっすよ? アプデはいったら消える系の」
「問題ない。アプデなど入るまえに殺す」
――ゼヘクで宇宙船を買うために動画を放映した後。
ドーザンはちょこちょこと動画を撮っては映画館にかけていたらしい。
マシロのにゃんこ動画から華麗にコンボ技を決めるアクション動画。
ただ風光明媚な風景を撮ったものにNPCのショートコントまで。
ノブナガの広域商人でフィルムを各エリアに送り、視聴料を大幅に下げて人を集めた。
その結果。
ついに修得不可能と言われた超スキル「満員御礼」に開眼したらしい。
「どうやら、映画館にこもりきりのユーザーが一定数ーーおそらく1万人以上いるらしい」
「うわあ……」
そう、このログアウト不能時は例外中の例外。
禁断症状を起こした動画民が大挙して映画館に集まっているらしい。
「感覚的には再取得までのチャージタイムは5、6時間という感じだからな。多分常時一万人はいる」
「300分で100万人か……そりゃやべえな」
「ゼヘクで五千人集めた後がくっと客足が落ちてな……。なんか悔しかったのでコンテンツちまちま増やしていったのがじわじわきて四日目入って輝き出した感じだ」
「悔しかったのかよ……」
ドーザン、意外に負けず嫌いである。
「いや、でも……これいけるんとちゃう?」
「さすがにシネパラぶっ放してノーダメージって事はねーと思うっす」
「ダメージ増加技としては間違いなく最強だからな」
そう。
満員御礼という技の壊れ性能には定評がある。
俺の幸運の星よりも、アーサーの逆転の英雄よりも攻撃力をあげると言う面では優れているのだ。
一回使い切りは伊達ではない。
これならば、あるいは。
ラスボスを一刀両断することも――不可能ではないかもしれない。
「あとはこの力の鎖の使い方が分かればいいんやけど……」
「効果詳細まだ未解放すっからね……」
「あ、俺アイテムⅢ鑑定持ってるよ」
ぎろり、と。
三対の眼球が俺を見た。
「「「それを先に言え!!」」」
かくしてマサムネ、再びの木の実地獄であった。




