不壊城~ヌバ族ってのはスーダンの少数民族~
「……しっかし、適合ミュミュ高いな」
「タカイ! タカイ!」
「コウキュウ! コウキュウ!」
「ブルジョワ! ブルジョワ!」
そんなコーヴァスどもの鳴き声をバックにひたすらに路地裏を歩く。
手元の手配書に目を落とせば――十億の文字。
とても払えない――ので、がんばって自分で見つけるしかないのだが。
「まあ、ツクモ強いしな……」
「ツヨイ! ツヨイ!」
「サイキョウ! サイキョウ!」
「コワイ! コワイ!」
「……少なくともお前らよりは強いよな」
ツクモは強い。特に人数外が強い。
なにせそれなりの戦闘力を持ったユニットを文字通りどこにでも連れていけるのだ。
その特性はフィールドメインの龍人ヶ原よりもセキュリティの厳しいノヴァーリアのほうが役に立つ。
それを思えば――この法外な懸賞金にも納得がいく。
「プンプン! プンプン!」
「ゲキオコ! ゲキオコ!」
「テッカイ! テッカイ!」
「……焼き鳥にするぞ」
「「「ギャー!」」」
そんな感じでーー俺らは路地裏を行く。
見上げた空は鈍色の曇天だった。
* * *
さて、なんで俺がてこてこ歩き回っているのかというと。
真相看破なるスキルの為である。
つまりは妨害スキルを見破るスキル。
そこそこのレベルでとってるから多分見破れるはず。
俺はこういう戦闘以外のスキルには強いのだ
難点は効果範囲が狭いこと――よって。
俺はコーヴァス引き連れて歩き回っているのである。
「オネガイ! オネガイ!」
「ナマエ! ナマエ!」
「ホシイ! ホシイ!」
「……あー」
スキルを連続で使い続けていれば当然MPが枯渇する。
なので、ちょいちょい休憩を挟みながらの探索になるのだが――このコーヴァスどもそのたびに名前を付けろとうるさい。
付けてやってもいいんだが……こういうのセンスが出るからなあ。
ツクモの時は……「黒」→「ひっくり返して白」→「白=百-一」→「九十九」→「ツクモ」だったような。
……別にハイセンスってわけじゃねえな。
マシロちゃんと並ぶとセットみたいでかわいいが。
しかし、こいつらにツクモ並の名前を付けるのは抵抗がある……。
ツクモは相棒なのだ。別格なのだ。
「……じゃあ、『ぬ』『ば』『たま』で」
「リコール! リコール!」
「テヌキ! テヌキ!」
「ザツ! ザツ!」
「うるせえ……」
といったものの。
冷静に考えれば――「ぬ」一字って呼びづらいわ。
「ぬ。偵察してこい」……名前呼んだんだか、うなったんだか。
「……じゃあ、『ぬば』『たま』『くろ』で」
「シブシブ! シブシブ!」
「マアマア! マアマア!」
「ユルス! ユルス!」
……ホントに焼き鳥にしてやろうか。
* * *
「……いた」
コーヴァスどもの「ぬば」の押しつけあいを背景に路地裏を歩いていた足を止める。
……まあ、俺だって「ぬば」はイヤだわ。
なんだよ「ぬば」って。
なんかどっかの奥地にいる原住民みたいじゃねーか。
「オレ! クロ!」
「オレ! タマ!」
「オレ……ヌバ……」
「ぬばだけ露骨に元気ねえな」
そんな突っ込みを入れつつ――俺は眼前にそびえる建物を見上げる。
カジノ「不壊城」。
ノヴァーリア最大の不夜城がそこにあった。
* * *
結局ツクモは捕まってしまったらしい。
引く手数多のお姫様の行方を決めるのは――ギャンブル。
この世界でベット以上に絶対なものはない。
ベットに比べれば物理法則などちり紙以下だ。
ならば、恨みっこ無しで物事を決めようとするなら。
この方法しかない――ということだ。
「問題はチップが一枚しか貰えなかったことなんだが」
手の中の白い小さなチップを弾き上げてため息をつく。
ぶっちゃけ最低額である。全財産つぎ込んでこれである。泣きたい。
コーヴァス三人組は受付で取り上げられてしまった。
戦闘用モンスターである奴らは人数外持ってないのである。
ツクモの姿はない。
お姫様が出てくるのは――三時間後。
それまでにこの白チップを一万倍にしなければならない。
「ま、ボチボチやりますか」
そう言って俺は――受付に向かった。




